犬の外耳炎は危ない病気?症状を見逃さないコツ

愛犬が耳をしきりにかいたり、頭を振ったり、耳から嫌なニオイがして「もしかして病気?」と不安になる飼い主は少なくありません。犬に多い外耳炎は、初期症状を見逃さなければ多くがしっかり治療できる一方、放置すると中耳炎・内耳炎など重い病気につながることもあります。本記事では、犬の外耳炎でよく見られる症状や原因、受診の目安、治療法と予防ケアまで、飼い主が知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。

犬の外耳炎はどんな病気かを理解する

犬の外耳炎はどんな病気かを理解する
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犬の外耳炎は、耳の入り口から鼓膜までの「外耳道」に炎症が起こる病気です。耳の中で細菌やカビ、耳ダニなどが増えたり、アレルギー体質や耳の構造の影響を受けて発症します。かゆみ・赤み・ニオイ・耳垢の増加などが主な症状で、多くの犬にみられる身近な耳の病気です。

外耳炎は放置すると中耳炎や内耳炎に進行し、痛みが強くなったり、平衡感覚の異常や聴力低下につながるおそれがあります。適切な治療を行えば改善しやすい病気ですが、慢性化しやすく再発も多いため、早期発見と継続したケアが重要です。まずは外耳炎が「命に関わる前に気づきたい、早めの対処が大切な病気」であると理解しておくことが大切です。

耳の構造と外耳炎が起こる場所

犬の外耳は、耳の穴から鼓膜までの「耳の入り口〜通路」の部分を指します。さらに奥には中耳、もっと奥には内耳があり、音を脳に伝える重要な役割を担っています。外耳炎は、この耳の穴から鼓膜までの通路(外耳道)の皮膚に炎症が起きる病気です。

犬の外耳道はL字型に曲がっていて、人よりも長く深い構造です。外から見ると少しの赤みや汚れに見えても、見えない奥の方まで炎症が広がっていることが少なくありません。炎症が悪化すると、鼓膜の近くまで腫れや分泌物が及び、中耳炎や内耳炎に進行する危険もあります。

耳の入り口周辺の赤みや、耳の中からのニオイ・耳垢の増加は、外耳道で炎症が起きているサインの一つです。耳のどの部分でトラブルが起きているかを知ると、症状の重さや放置したときのリスクも理解しやすくなります。

なぜ犬は外耳炎になりやすいのか

犬は人と比べて耳の穴がL字型に曲がり、耳道も長く狭いため、湿気や汚れがたまりやすい構造になっています。さらに、垂れ耳の犬種や耳の中に毛が多い犬種では、耳の中の通気性が悪く、熱と湿気がこもることで細菌やカビが増えやすい環境になります。

また、犬は人よりも耳垢の分泌が多く、体質によってはベタベタした耳垢が出る犬もいます。ベタついた耳垢は汚れや細菌が付着しやすく、外耳炎のきっかけになりやすい要因です。アレルギー体質の犬では、皮膚全体のバリア機能が弱くなり、耳の皮膚も炎症を起こしやすくなります。

このように、耳の構造・耳道内の環境・体質が重なり、犬はもともと外耳炎を起こしやすい動物だと理解しておくことが大切です。

犬の外耳炎でよく見られる主な症状

犬の外耳炎でよく見られる主な症状
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犬の外耳炎で見られる症状は、初期から重度まで幅広くありますが、多くは耳まわりの「かゆみ」「痛み」「異常なニオイ」「耳垢の変化」として表れます。犬が頻繁に耳をかいたり、頭を振る回数が増えた場合は、外耳炎を疑った方が安全です。

代表的な症状としては、次のようなものが挙げられます。

見られやすい症状 具体的な様子の例
かゆみ・違和感 耳をよくかく、頭を振る、耳を床や家具にこすりつける
見た目の変化 耳の中が赤い、腫れている、熱っぽい
耳垢・ニオイ 耳垢の量が増える、色が黒・茶色・黄緑っぽくなる、強い悪臭がする
痛み 耳を触ると嫌がる、鳴く、怒りっぽくなる

片側の耳だけに症状が出ることも多いため、左右の耳を比べて異変を確認することが大切です。少しでもおかしいと感じた場合は、悪化する前に獣医師の診察を受けることが望まれます。

初期に気づきやすい耳のかゆみや違和感

初期に見られやすいしぐさ・サイン

犬の外耳炎の初期では、強い痛みが出る前に「かゆみ」や「違和感」が目立ちます。代表的なサインは次のようなものです。

  • 耳のあたりを前足で頻繁にかく
  • 後ろ足で耳の後ろをかきむしる
  • 頭をよく振る、片側だけを振る
  • 耳を床やソファ、飼い主の足などにこすりつける
  • 片方の耳だけを気にして触られるのを嫌がる

「前より耳をかく回数が増えた」「頭を振る動きが目につく」などの小さな変化が、外耳炎の初期サインであることが多く見られます。 かゆみだけの段階で気づいて受診すると、治療期間が短く済み、愛犬の負担も軽くなります。日頃から耳周りの行動の変化を意識して観察することが大切です。

進行したときの痛み・臭い・耳垢の変化

外耳炎が進行すると、耳の中の炎症が強くなり、強い痛み・悪臭・耳垢の大きな変化が現れます。耳を少し触れただけでキャンと鳴く、頭を振り続ける、首をかしげたまま動かない場合は、かなり痛みが出ている可能性があります。

耳からは、すっぱく腐ったようなニオイや、ツンとした刺激臭がすることが多くなります。耳垢は量が増え、色や質感が変わります。

症状の変化 代表的な状態
耳垢の色 黄〜黄褐色、こげ茶〜黒色などに濃くなる
耳垢の状態 ベタベタした油っぽいもの、ドロっとした膿状になる
耳の見た目 赤く腫れて熱をもち、触ると強く嫌がる

悪臭のあるベタベタした耳垢や、触れないほど痛がる場合は、自宅での様子見は避け、早めの受診が必要です。放置すると中耳炎・内耳炎に進行する危険が高まります。

慢性化した外耳炎で見られる症状の特徴

慢性化した外耳炎では、炎症が長期間続くことで耳の構造そのものに変化が起こります。耳介(耳たぶ)や耳道の皮膚が分厚くなり、触ると硬くゴツゴツした感触になることが多く、常に赤みや黒ずみが見られます。耳垢はべっとりとした茶色〜黒色で量が多く、イヤな臭いが続くのも特徴です。

かゆみや痛みは一時的に治まってもぶり返しやすく、頭を振る・耳をかく行動を繰り返します。炎症が長く続くと耳道が狭くなり、聞こえづらそうに反応が鈍くなる、呼んでも振り向きにくいといった聴力低下のサインが出ることもあります。治りが悪い、同じ症状を何度も繰り返す場合は、慢性化している可能性が高いため、動物病院で原因の精査と長期的な治療計画が必要です。

外耳炎を引き起こす主な原因と背景

外耳炎を引き起こす主な原因と背景
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犬の外耳炎は、耳の中が「湿って汚れがたまりやすい」「刺激を受けやすい」状態になることで発症しやすくなります。原因そのもの(細菌・カビ・寄生虫・アレルギーなど)と、それを後押しする体質や生活環境が重なったときに起こりやすくなる病気です。

代表的な原因は、耳の中で増えた細菌やカビ(マラセチア)、耳ダニなどの寄生虫、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎などのアレルギー体質です。さらに、過度な耳掃除での傷、高温多湿の季節、シャンプーや水遊びで入った水分、耳道が狭い・垂れ耳などの体の特徴も、外耳炎を繰り返す大きな要因になります。

そのため、外耳炎を予防・再発予防するためには、「何が主な原因なのか」「どのような体質や生活環境が影響しているのか」を動物病院で見極めることが重要になります。

細菌やカビ(真菌)の感染によるもの

外耳炎の原因として最も多いのが、耳の中での細菌やカビ(マラセチアなど真菌)の増殖です。耳道の中が「湿ってあたたかい状態」が続くと、もともと少数いた常在菌が一気に増え、炎症やかゆみを起こします。

細菌が主な場合は、赤く腫れて熱を持ち、痛みが強く出ることが多く、黄色~緑色のベタベタした耳垢や膿が見られることがあります。一方、カビ(真菌)が関係すると、黒っぽくベタベタした耳垢や、独特の酸っぱいような臭いが目立つことが多いです。

耳の中の環境が悪化するきっかけには、過剰な耳掃除や水の入り込み、アレルギー体質、垂れ耳や狭い耳道などが関係します。原因となる菌の種類によって治療薬が変わるため、自己判断で市販薬を使わず、動物病院で耳垢検査を受けてから適切な治療を行うことが大切です。

耳ダニなど寄生虫が関わるケース

耳ダニ(耳疥癬/みみかいせん)は、外耳道の中にすみつく寄生虫で、強いかゆみを引き起こします。黒くポロポロした耳垢が急に増え、激しく耳をかく・頭を振る場合は耳ダニを疑う必要があります。

耳ダニがいると、耳の中にコーヒーかすのような黒い耳垢が大量にたまり、独特のにおいが出ることがあります。強いかゆみのため、前足で耳をひっかいたり、床に頭をこすりつけたりする行動が目立ちます。子犬や多頭飼育、外でほかの犬と触れ合う機会が多い犬で起こりやすい傾向があります。

治療は、耳の洗浄と専用の駆虫薬での治療が基本です。耳ダニは他の犬や猫にうつるため、自己判断で市販薬を使う前に、早めに動物病院で検査と治療を受けることが大切です。 同居動物がいる場合は、まとめて治療することも多くあります。

アレルギー体質が原因になる場合

アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなど、アレルギー体質の犬では外耳炎がとても起こりやすく、しかも慢性化しやすいという特徴があります。耳の中の皮膚も全身の皮膚と同じようにアレルギー反応を起こすため、赤みや強いかゆみが続き、そこへ細菌やカビが二次的に感染して外耳炎になります。

アレルギーが関与する外耳炎では、

  • 季節によって悪化・軽快をくり返す
  • 皮膚のかゆみ(足先・顔・わき・お腹など)も同時にみられる
  • 両耳に症状が出ることが多い

といった特徴がよくみられます。たびたび外耳炎をくり返す犬では、耳だけでなく全身のアレルギー評価や、原因となるアレルゲンの特定を獣医師に相談することが重要です。外耳炎の治療と並行してアレルギー疾患のコントロールを行うことで、再発を減らし、耳の状態を安定させやすくなります。

耳掃除のやり方や生活環境の影響

耳掃除の方法や頻度が合わないと、外耳炎を悪化させる原因になります。強くこすったり、綿棒を奥まで入れたり、アルコールやオイルを自己判断で使うことは避ける必要があります。耳道の皮膚が傷つくと、細菌やカビが増えやすくなり、かゆみや赤み、悪臭につながります。

基本的には、動物病院で耳の状態を診てもらい、勧められた専用イヤークリーナーを使用してケアを行います。皮膚が弱い犬やアレルギー体質の犬では、市販のクリーナーでも刺激が強すぎる場合があります。

生活環境も大きく影響します。高温多湿な室内、耳がなかなか乾かないシャンプー後、水遊びが多い生活は外耳炎を招きやすくなります。室内の湿度管理、シャンプー後に耳周りをやさしく乾かすこと、長時間の耳の蒸れを避けることが予防につながります。また、ハウスやベッドを清潔に保つことも細菌・カビの増殖を抑えるうえで重要です。

腫瘍やほかの病気が隠れていることも

犬の外耳炎だと思っていた症状の裏に、耳の腫瘍や別の病気が隠れていることもあります。長期間治療を続けても良くならない外耳炎や、片耳だけに繰り返し起こる外耳炎は特に注意が必要です。

耳の中にできる「ポリープ」「腫瘍(良性・悪性)」がある場合、耳垢が増えたり悪臭がしたりするほか、耳道が狭くなって薬が届きにくくなるため、治療しても改善しにくくなります。また、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、ホルモンの病気(甲状腺機能低下症など)が原因で、耳だけでなく体のあちこちの皮膚炎として外耳炎が出ることもあります。

「同じ薬を何度も使っているのに外耳炎を繰り返す」「耳の中にしこりのようなものが触れる」「耳の周りだけでなく体全体にかゆみがある」場合は、腫瘍や全身疾患が隠れていないか、早めに動物病院で詳しい検査を受けることが大切です。

外耳炎になりやすい犬種と体質の特徴

外耳炎になりやすい犬種と体質の特徴
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外耳炎はどの犬にも起こり得ますが、耳の形や体質によって特にかかりやすいタイプがあります。愛犬が当てはまる場合は、よりこまめな観察とケアが重要です。

代表的な「なりやすいタイプ」は次の通りです。

特徴 代表的な犬種の例 外耳炎になりやすい理由
垂れ耳 ミニチュア・ダックス、コッカー・スパニエル、ビーグルなど 耳の中が蒸れやすく、細菌やカビが増えやすい
毛量が多い耳 プードル、シュナウザー、マルチーズなど 耳道の通気が悪く、耳垢もたまりやすい
短頭種 フレンチブルドッグ、パグ、シーズーなど 耳道が狭く曲がっていて、汚れや炎症が起こりやすい
アレルギー体質 犬種を問わず(柴犬、シーズー、ラブラドールなどに多い) 皮膚炎の一部として耳だけが強く炎症を起こすことが多い

「耳が垂れている」「耳の中に毛が多い」「皮膚トラブルが多い」犬は、外耳炎リスクが高いグループと考え、日常的なチェックと定期的な動物病院での診察を意識すると安心です。

垂れ耳や耳道が狭い犬が注意したい点

垂れ耳の犬や耳道が狭い犬は、構造的に耳の中が蒸れやすく汚れもたまりやすいため、外耳炎のリスクが高くなります。特にコッカー・スパニエル、ダックスフンド、プードル、シーズー、ゴールデン・レトリーバーなどは注意が必要です。耳の通気が悪いと湿度と温度が上がり、細菌やカビが増えやすい環境になることが最大の問題点です。 さらに耳道が狭い犬では、少しの炎症や耳垢でもすぐに通りがふさがり、悪化しやすくなります。

垂れ耳や耳道が狭いタイプの犬では、週に数回は耳の入り口をめくって赤みやニオイ、耳垢の量を確認し、必要に応じて動物病院で適切な耳掃除方法を指導してもらうことが大切です。自宅ケアでやり過ぎると逆効果になるため、「こまめな観察+獣医師の指示に沿ったケア」を心がけると安心です。

アレルギー体質や脂っぽい皮膚の犬

アレルギー体質の犬は、皮膚全体のバリア機能が弱く、耳の中の皮膚も炎症を起こしやすいため、外耳炎をくり返しやすい体質といえます。アトピー性皮膚炎や食物アレルギーがある犬では、季節の変わり目やフード変更後に耳の赤み・かゆみが出ることが多く、全身症状の一部として外耳炎が現れます。

また、脂っぽい皮膚(脂漏症)の犬は、耳の中もベタついた皮脂が多くなりやすく、細菌やマラセチア(カビ)が増えやすい環境になります。特に、シーズー、コッカー・スパニエル、柴犬などは脂漏を伴う皮膚トラブルが多く、外耳炎も慢性化しやすい犬種です。

アレルギー体質や脂漏が疑われる犬では、耳だけでなく皮膚全体の管理が重要です。専用シャンプーやアレルギー治療、食事管理とあわせて、動物病院の指導のもとで耳のケア計画を立てることで、外耳炎の再発リスクを大きく減らせます。

自宅でできる外耳炎チェックと観察ポイント

自宅でできる外耳炎チェックと観察ポイント
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自宅では、毎日のちょっとした観察で外耳炎の早期発見につなげることができます。ポイントは「見た目」「ニオイ」「触ったときの反応」「しぐさ」の4つをセットで見ることです。

まず、明るい場所で耳を軽くめくり、皮膚の色や耳垢の量・色を確認します。あわせて、耳に鼻を近づけてニオイをチェックし、いつもとの違いを覚えておきます。軽く耳の付け根をなでたときに、痛がる、嫌がる、頭を振る場合は要注意です。

日常の行動も重要なサインになります。頭を頻繁に振る、耳ばかり掻く、床やソファに耳をこすりつける、呼びかけに反応しづらいといった変化が続く場合は、外耳炎の初期症状の可能性があります。「何となくいつもと違う」と感じた段階でメモや写真を残しておくと、受診時に状態を伝えやすくなります。

耳の見た目とニオイを毎日確認する

耳の入り口周辺と耳の中を、毎日短時間でかまわないので観察すると変化に気づきやすくなります。ポイントは「色・腫れ・耳垢・ニオイ」です。

チェックポイント 正常の目安 外耳炎が疑われる状態
耳の色 薄いピンク色 濃い赤色、まだらな赤み
腫れ 左右差がない 片方だけ腫れて分厚い
耳垢の量・色 少量で薄茶〜クリーム色 黒っぽい・黄色い・ベタベタ・大量
ニオイ ほとんど無臭 酸っぱい、湿ったような強いニオイ

耳の中を確認するときは、スマホのライトなどで入り口付近だけを明るくして、指で耳を優しくめくる程度にとどめます。黒いカサカサの耳垢が急に増えた、どろっとした耳垢が出る、強い悪臭がする場合は外耳炎の可能性が高いため、早めの受診が望まれます。

毎日のスキンシップの延長で「昨日と比べてどうか」を意識すると、少しの違和感にも気づきやすくなります。

仕草や行動から異変を見つけるコツ

仕草や行動の変化は、耳の中が見えにくい犬でも異変に気づく大きな手がかりになります。耳のトラブルがある犬に多い行動パターンを知っておくことが、早期発見の近道です。

代表的なサインは次のようなものです。

行動・仕草 考えられる耳の異常のサイン
後ろ足で耳を頻繁にかく 強いかゆみや違和感がある
頭をよく振る、片側だけ振る 耳の中に液体や耳垢がたまっている、痛みがあることが多い
片側の耳だけを床や壁にこすりつける 片耳のかゆみや痛み、違和感がある
耳に触ると嫌がる・怒る 触られるほど痛みが強い、炎症が進行している可能性がある
ぼんやりしている・元気がない 痛みや不快感でストレスがたまっている

普段から遊ぶときやなでるときに耳にも触れ、いつもと違う反応がないかを確認することが大切です。「最近よく耳をかく」「片側ばかり気にする」と感じた段階で、早めに動物病院への相談を検討しましょう。

この症状が出たら受診したいタイミング

この症状が出たら受診したいタイミング
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外耳炎はゆっくり悪化することが多く、「そのうち治るかも」と受診が遅れがちな病気です。数日~1週間以上、耳のかゆみや頭を振る様子が続く場合は、一度動物病院で診てもらうことが望ましい状態と考えられます。

とくに次のような状況では、早めの受診が勧められます。

  • 耳の赤みや軽いニオイが出始めて2~3日たっても改善しない
  • 耳を気にする様子と、耳垢の色の変化(茶色・黒っぽい・ベタベタ)が同時に見られる
  • 季節の変わり目やシャンプー後から、耳を気にするしぐさが増えた

「少し気になる」段階で受診すると、治療期間が短く、ワンちゃんの負担も軽く済む傾向があります。逆に、痛みや悪臭が出るまで待つと、治療が長引いたり再発しやすくなります。耳の変化が数日続く場合は、早めに相談すると安心です。

様子見できるケースと早めに受診すべき症状

外耳炎のような症状があっても、すぐに命に関わるわけではないケースと、早めの受診が望ましいケースがあります。

状態 様子見できる目安 受診を検討すべき目安
耳のかゆみ・軽い赤み 片耳だけを時々かく程度、赤みがごく軽い、悪臭がない 1〜2日以上かゆみが続く、毎日のように耳を気にする
耳垢の増加 少し茶色い耳垢が増えた程度で、臭いがほとんどない 耳垢がベタベタ・黒っぽい・量が急に増えた
行動の変化 元気・食欲・遊ぶ様子が普段通り 元気がない、触ると嫌がる、散歩を嫌がる

「少し気になる程度でも数日続く場合」や「症状がじわじわ悪化している場合」は、早めの受診が推奨されます。外耳炎は放置すると悪化しやすいため、迷ったときは一度動物病院で相談すると安心です。

すぐ病院に行くべき危険なサイン

※次のような症状がある場合は、自宅で様子を見ず、できるだけ早く動物病院を受診することが重要です。

危険なサインの例 状態の目安
頻繁に激しく頭を振る、耳を強く掻きむしる 落ち着かず、睡眠や食事が妨げられている
耳がパンパンに腫れて熱を持っている 耳介血腫や強い炎症の疑い
耳から血や膿のような分泌物が出る 細菌感染が強く進行している可能性
立てない、ふらつく、頭をかしげたまま歩く 中耳炎・内耳炎、神経症状の可能性
触ると激しく痛がり、鳴き叫ぶ 強い痛みや重度炎症のサイン
食欲が極端に落ちる、元気がない、発熱がある 全身状態への影響が出ている

「歩き方がおかしい」「まっすぐ歩けない」「眼が揺れている(眼振)」などの神経症状が耳の異常と同時に見られる場合は、緊急度が高いため夜間でも受診を検討する必要があります。

自宅での処置や市販薬の使用は症状を悪化させることがあるため、危険なサインが見られた場合は耳の中をいじらず、そのまま病院へ連れて行くことが望ましいとされています。

動物病院で行う検査の内容

動物病院で行う検査の内容
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動物病院では、まず問診で症状が出始めた時期や、かゆみ・痛みの程度、過去の外耳炎歴やアレルギー歴などを確認します。そのうえで耳の中と周囲を観察し、耳介(耳たぶ部分)の赤みや腫れ、耳垢の量や色、においをチェックします。

外耳炎の原因を特定し、重症度を見極めることが検査の目的です。 原因が細菌なのかカビ(マラセチア)なのか、耳ダニなどの寄生虫か、あるいはポリープ・腫瘍などが隠れていないかを調べていきます。

多くの病院では、耳の中を拡大して見る耳鏡検査と、採取した耳垢を顕微鏡で確認する耳垢検査を行います。必要に応じて、レントゲンや耳道カメラ、血液検査などを追加し、中耳炎・内耳炎への進行や、アレルギー・ホルモン異常など全身疾患の有無まで評価します。

耳鏡検査と耳垢検査でわかること

耳の中をのぞく「耳鏡検査」と、耳垢を顕微鏡などで調べる「耳垢検査」は、外耳炎の診断で最も基本となる検査です。

耳鏡検査では、耳道の赤み・腫れ・傷・腫瘍の有無、耳垢や膿の量、鼓膜の状態などがわかります。 これにより、炎症の強さや広がり方、異物が入っていないかなどを確認します。

耳垢検査では、採取した耳垢を顕微鏡で観察し、細菌・カビ(マラセチア)・耳ダニなどの有無や種類を調べます。 どの原因がメインかを特定することで、使用する点耳薬や内服薬の選択が大きく変わります。

目で見た印象だけでは原因を正確に判断できないため、耳鏡検査と耳垢検査は、適切な治療方針を決めるうえでとても重要なステップになります。

レントゲンや耳道カメラ、血液検査など

レントゲンや耳道カメラ、血液検査は、耳鏡や耳垢検査だけでは原因がはっきりしない場合や、重症・慢性化が疑われる場合に行われます。すべての犬に必ず行う検査ではなく、必要に応じて追加される精密検査と考えると分かりやすいです。

検査の種類 目的・分かること
レントゲン検査 鼓室(中耳)が炎症で白くなっていないか、骨が溶けていないかなどを確認し、中耳炎や腫瘍の有無を推測する
耳道カメラ(ビデオオトスコープ等) 耳の奥の状態を拡大して確認し、ポリープ・腫瘍・異物の有無を詳しく見る。奥の耳垢除去や処置にも利用される
CT/MRI レントゲンより詳しく中耳・内耳、頭蓋内の状態を調べる。重度の中耳炎・内耳炎や腫瘍が疑われる場合に実施
血液検査 アレルギー体質、ホルモン異常(甲状腺機能低下症など)、全身の炎症や感染の程度を確認し、外耳炎の背景にある病気を探る

耳のトラブルが長引いている、痛みが強い、神経症状がある、片側だけ繰り返す場合などでは、中耳炎・内耳炎や腫瘍の発見のために高度な画像検査が勧められることがあります。 検査内容や費用、麻酔の必要性については、事前に獣医師とよく相談すると安心です。

犬の外耳炎の主な治療法と流れ

犬の外耳炎の主な治療法と流れ
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犬の外耳炎の治療は、検査結果にもとづいて原因を特定し、耳の中をきれいにしたうえで薬で炎症を抑える、という流れで進みます。自己流で耳掃除や市販薬を使う前に、動物病院で原因を見極めることが何より重要です。

一般的な流れは次のようになります。

段階 治療内容の目安
1. 診断 耳鏡検査・耳垢検査・必要に応じて画像検査などで原因を特定する
2. 耳の処置 耳垢や膿を取り除き、専用洗浄液で耳道を清浄にする
3. 薬による治療 点耳薬(抗生物質・抗真菌薬・ステロイドなど)や内服薬で炎症や感染を抑える
4. 原因対策 アレルギーや基礎疾患、生活環境など根本原因のコントロールを行う
5. 再診・経過チェック 数日〜数週間おきに耳の状態を確認し、薬の調整や治療方針の見直しを行う

重度で薬が効かない場合には、耳道を広げる手術など外科的治療が選択されることもあります。治療は症状が軽くなってもすぐに中止せず、獣医師の指示どおり通院と投薬を続けることが再発防止のコツです。

耳の洗浄と耳垢除去の治療

外耳炎の治療では、まず耳の中をきれいにすることが重要です。耳の洗浄と耳垢除去は、薬を効かせるための土台となる治療であり、多くの場合、動物病院で行われます。

一般的には、専用のイヤークリーナーを耳道内に入れ、耳の付け根を揉んで汚れを浮かせてから、犬が頭を振って中身を出します。その後、獣医師や看護師が目で確認しながら、鉗子や綿球などを使って耳垢をていねいに拭き取ります。鼓膜を傷つけないよう、奥まで器具を入れないことが大切です。

耳垢が多い・固くこびりついている・痛みが強いなどの場合は、鎮静や麻酔をかけてから洗浄することもあります。自己判断で強くこすったり、綿棒を奥まで入れてかき出そうとすると、外耳炎の悪化や鼓膜損傷につながるため、自宅での耳掃除は獣医師の指示に沿った範囲にとどめることが安全です。

点耳薬や内服薬による治療

耳の洗浄で耳垢や汚れを取り除いたあと、多くの場合は点耳薬(耳に入れる薬)と内服薬(飲み薬)を組み合わせて治療します。原因となる細菌やカビ、炎症の程度によって処方内容が変わります。

主な点耳薬には、抗生物質(細菌を抑える)、抗真菌薬(マラセチアなどカビを抑える)、ステロイド(強い炎症やかゆみを抑える)が配合されています。獣医師が耳の状態を確認したうえで、適切な種類と量を指示します。自己判断で市販薬を入れることは、症状悪化につながるため避ける必要があります。

内服薬は、痛みや炎症が強い場合の消炎鎮痛薬、アレルギーが背景にある場合のアレルギー薬、重度や広範囲な感染で使われる抗生物質などです。どちらの薬も、見た目がよくなっても獣医師の指示どおりの回数・日数を守ることが再発防止のポイントになります。飲み忘れや、勝手な中断があると、慢性化しやすくなるため注意が必要です。

外科手術が必要になるケース

外耳炎の多くは点耳薬や内服薬で改善しますが、重度・慢性化した外耳炎では外科手術が必要になる場合があります。

代表的なのは、耳道の皮膚が厚く硬くなり、完全またはほぼ完全に塞がってしまったケースです。この状態では薬が耳の奥まで届かず、痛みや悪臭、膿が何度も再発します。また、腫瘍(ポリープや腫瘍性のしこり)が耳道を塞いでいる場合も、切除手術が検討されます。

中耳炎や内耳炎を何度も繰り返している場合、耳道ごと取り除く「耳道切除術」などの大きな手術が選択されることもあります。手術は負担も大きい一方で、長年続く強い痛みやかゆみから解放される可能性が高い治療です。

どの程度進行しているか、どの手術法が適切かは、レントゲンやCTなどの検査を含め、動物病院で詳しく相談することが大切です。

治療期間と通院回数の目安

外耳炎の治療期間や通院回数は、原因や重症度、犬の体質によって大きく変わります。軽い外耳炎であれば、1〜2週間ほどの点耳薬治療と1〜2回の受診で落ち着くことが多いとされています。一方、細菌やカビの増殖が強い場合や、アレルギー体質が関わっている場合は、少なくとも3〜4週間以上の治療と、1〜2週間ごとの通院が必要になることも珍しくありません。

慢性化して耳道が分厚くなっているケースでは、数か月単位での治療継続や、定期的なメンテナンス通院が必要になる場合もあります。動物病院では、耳の状態を見ながら「何週間ごとに受診が必要か」「薬はどれくらい続けるか」を説明してもらえるため、最初の診察時におおよその期間と通院ペースを確認しておくと安心です。自己判断で通院や投薬を途中でやめると再発や悪化につながるため、獣医師の指示に沿った治療完遂が重要です。

治療費の目安とペット保険の活用

外耳炎の治療費は、症状の重さや治療内容によって大きく変わりますが、軽度であれば1回あたり数千円、重度で通院が長引くと合計で数万円になることもあります。

代表的な目安は次のとおりです。

症状・治療内容 回数・期間の目安 費用の目安(税込のおおよそ)
初診料+耳鏡・耳垢検査+点耳薬 1回 5,000〜10,000円前後
通院での耳洗浄+再診+薬の追加 週1回を数週間 1回あたり3,000〜8,000円
慢性・重度での長期治療 数か月〜半年以上 合計で数万円〜10万円以上
外耳炎が悪化し手術が必要なケース 入院・全身麻酔を伴う手術 10万〜30万円以上

外耳炎は再発しやすく、慢性化するとトータル費用がかさみます。ペット保険に加入している場合、診察料や検査料、薬代などが50〜70%程度補償されるプランが多く、耳の病気を繰り返しやすい犬には大きな助けになります。

ただし、保険によっては「慢性疾患」や「耳の病気」に特約や条件があることもあります。加入前や更新時には、

  • 耳の病気が補償対象か
  • 通院治療がどこまでカバーされるか
  • 1日・1年あたりの支払い限度額

などを必ず確認すると安心です。

自宅でのケアと外耳炎の予防方法

自宅でのケアと外耳炎の予防方法
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外耳炎は一度よくなっても、日常のケアが不十分だと何度も再発しやすい耳の病気です。ポイントは「耳の中をいじりすぎないこと」と「耳まわりを清潔・乾燥気味に保つこと」です。

自宅での基本ケアとして大切なのは、耳の状態をこまめに観察し、異常がある場合は早めに動物病院を受診することです。耳の入り口がベタついていたり、赤くなっていたり、耳から悪臭やいつもと違う耳垢が出ている場合は、自己流で触らず獣医師の診察を受ける方が安全です。

予防の観点では、シャンプーや雨の日の散歩後に耳の入り口周りをタオルで優しく拭いて水分を残さないようにし、通気性を確保します。耳の中まで綿棒を入れたり、独断で洗浄液を使うケアは逆効果になることが多いため避けることが重要です。日常的な耳掃除の具体的な頻度や方法は、犬種や耳の状態によって変わるため、かかりつけの獣医師に一度相談しておくと安心です。

正しい耳掃除の頻度とやり方

犬の耳掃除は「やりすぎないこと」が最大のポイントです。健康な耳なら、2〜4週に1回程度が目安で、耳垢がほとんど出ない犬では、もっと間隔を空けても問題ありません。毎日や週に何度も行うと、耳の中を傷つけたり、必要な油分を取りすぎて外耳炎の原因になります。

基本の手順は次の通りです。

手順 やり方のポイント
1. 準備 犬用のイヤークリーナーとコットンやガーゼを用意する。綿棒や人間用アルコール消毒液は使わない。
2. クリーナーを入れる 耳の入口から適量を入れ、耳の付け根をやさしく30秒ほどもむ。
3. 振らせる 犬が頭を振って、耳の奥の汚れを自分で出させる。
4. 拭き取る 出てきた液体や汚れを、コットンやガーゼで耳の入口〜見える範囲だけやさしく拭く。

奥までゴシゴシこすらないこと、痛がる・嫌がる様子が強い場合は無理に続けないことが重要です。外耳炎の治療中は、動物病院の指示された頻度と方法を必ず守るようにしましょう。

生活環境とシャンプー時の注意点

外耳炎予防のためには、耳だけでなく生活環境やシャンプーの仕方を整えることが重要です。

まず生活環境では、湿気と汚れをためないことがポイントです。室内はカビが生えにくい程度の換気と温度・湿度管理を行い、ベッドや毛布は定期的に洗濯・天日干しをして清潔に保ちます。ハウス周りにホコリがたまるとダニやカビが増えやすいため、こまめな掃除も有効です。

シャンプー時は、耳の中に水やシャンプー液を入れないようにすることが大切です。耳の入り口を軽くふさぐ、顔を洗うときはシャワーを直接かけず濡らしたタオルで拭くなどの工夫を行います。シャンプー後は、タオルで耳の入り口を優しく押さえ、水分をよく拭き取りましょう。ドライヤーの温風を耳の奥に当てすぎると乾燥ややけどの原因になるため、距離を保ち短時間で済ませることが望ましいです。

海や川、プールなどで遊んだ後は、耳の中に水が残りやすく外耳炎のリスクが高まるため、普段より念入りに耳の周りを乾かし、数日間は耳のにおいやかゆみがないかを注意して観察してください。

日常的な耳のスキンシップで早期発見

日ごろから耳にそっと触れるスキンシップを習慣にすると、外耳炎の早期発見につながります。ポイントは、「見て・触って・嗅いで」いつもの状態を覚えておくことです。

  • 見る:耳の入口や耳介の内側の色を確認し、赤み・腫れ・傷・黒っぽい汚れが増えていないかチェックします。
  • 触る:耳を軽くつまんだり、付け根をなでて、熱っぽさや痛がる様子がないかを確認します。普段との温度差や、硬く厚くなっていないかも目安になります。
  • 嗅ぐ:耳に鼻を近づけ、酸っぱい臭い・腐ったような臭い・湿ったような独特のニオイがしないかを確認します。

スキンシップのタイミングは、撫でているときやブラッシングのついでが理想的です。嫌がる様子があれば無理をせず、少しずつ慣らしていきます。いつもの耳の状態を理解しておくことで、わずかな変化にも気づきやすくなり、重症化を防ぎやすくなります。

外耳炎を放置したときのリスクと合併症

外耳炎を放置したときのリスクと合併症
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犬の外耳炎は「命に直結しないから」と油断されがちですが、長期間放置すると、耳だけの問題では済まない場合があります。放置すると、中耳炎・内耳炎へ進行して神経症状や平衡感覚の異常を起こしたり、慢性的な激しいかゆみや痛みで生活の質が大きく下がる危険があります。

炎症が長く続くと、耳道の皮膚が厚く硬くなり、耳の穴が極端に狭くなります。その結果、薬が届きにくくなり、「治りにくい外耳炎」や再発を繰り返す慢性外耳炎になりやすくなります。最悪の場合は耳道の切除などの外科手術が必要になることもあります。

また、強いかゆみや痛みによるストレスで、犬がイライラしやすくなったり、家族が触ろうとすると怒るなど、性格や行動の変化につながることもあります。耳をかゆがる仕草や悪臭、黒い耳垢などのサインが続く場合は、「そのうち治る」と考えず、早めに動物病院を受診することが重要です。

中耳炎や内耳炎など重症化の可能性

外耳炎が進行して炎症が鼓膜の内側まで広がると、中耳炎や内耳炎を起こすことがあります。中耳炎になると、顔面神経まひや強い痛み、頭を大きく傾けるなどの神経症状が出ることがあり、内耳炎まで進行すると、ふらつきやぐるぐる回るように歩く、眼が震える(眼振)などの重い症状につながります。

中耳炎・内耳炎になると、治療期間が長くなり、完治せず後遺症が残る場合も少なくありません。外耳炎の段階で適切に治療することが、これらの重症化を防ぐ一番の方法です。「ただの耳のかゆみ」と考えて放置せず、痛みが強い、バランスを崩す、目の動きがおかしいと感じた場合は、すぐに動物病院での診察が必要です。

慢性化による聴力低下や再発の問題

外耳炎を長期間くり返すと、耳道の皮膚が慢性的に炎症を起こし、耳道が分厚く腫れて狭くなる、ポリープのようなできものができるなどの変化が生じます。鼓膜までダメージが及ぶと、音が届きにくくなり、聞こえが悪くなることがあります。

聴力低下は、呼びかけへの反応が鈍くなる、近くでしか聞こえない、寝ていると起きにくいなどの形で現れます。炎症が続くと変化が元に戻りにくくなり、治療しても完全には聴力が回復しない場合もあるため、慢性化させないことが重要です。

また、慢性外耳炎は再発しやすいことも大きな問題です。完全に治る前に自己判断で通院や投薬をやめると、残った炎症や菌が増え、短期間で再発しやすくなります。医師の指示どおりの治療と、治療後の定期的な耳チェックで、再発サイクルを断ち切ることが大切です。

外耳炎でやりがちな勘違いと避けたいケア

外耳炎でやりがちな勘違いと避けたいケア
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外耳炎の治療や予防では、良かれと思ってしたケアが悪化の原因になることがあります。自己判断で耳をいじり過ぎたり、独自の「民間療法」を試すことは外耳炎を長引かせる大きな要因です。

よくある勘違いには、次のようなものがあります。

よくある勘違い・行動 実際のリスクや問題点
綿棒で奥までしっかり耳垢を取るべきだと思う 耳道を傷つけたり、耳垢を奥に押し込んで悪化させる
痒そうだから頻繁に耳掃除をする 過度な刺激で炎症が強くなり、慢性化の原因になる
においがするので香り付きシートや消毒液を使う アルコールや香料が粘膜を刺激し、痛みや炎症を悪化させる
以前もらった薬や他の犬の薬を再利用する 現在の原因菌に合わず、症状が悪化したり見逃しにつながる

耳の状態は見た目が似ていても、原因や必要な治療は全く異なる場合があります。「前と同じだから」「ネットで見た方法だから」といった自己判断は避け、異変を感じた段階で早めに動物病院に相談することが、愛犬の耳を守る近道です。

自己判断の市販薬や人間用薬の危険性

市販の人間用の点耳薬や、ドラッグストアで購入できる軟膏・ステロイド薬などを自己判断で犬の耳に使うことは非常に危険です。人と犬では耳道の構造も皮膚の厚さも異なるため、濃度や成分が合わず、かえって炎症を悪化させたり、アレルギー反応を起こすことがあります。

とくに注意が必要なのは、ステロイドや抗生物質を含む薬です。症状だけ一時的に抑えて原因を見えにくくしたり、合わない薬を使うことで耐性菌を増やしてしまうことがあります。また、鼓膜に穴が開いている状態で誤った点耳薬を使用すると、最悪の場合は聴力低下やまひなどの重い後遺症につながるおそれもあります。

市販の「ペット用」と書かれた耳薬やスプレーであっても、犬の状態に合っていなければ逆効果になる場合があります。耳の赤み、悪臭、黒い耳垢、強いかゆみなどがあるときは、市販薬で様子を見る前に動物病院で診察を受けて、原因に合った治療を受けることが大切です。

綿棒やアルコールでの耳掃除のリスク

綿棒は先が硬く、耳道の皮膚や鼓膜を傷つける危険があります。特に犬の耳道は湾曲しているため、綿棒を入れるほど耳垢を奥へ押し込んでしまい、外耳炎を悪化させる原因になりやすいとされています。また、嫌がって頭を振った瞬間に鼓膜を傷つけるリスクもあります。

アルコールや消毒液を耳内に入れる行為も注意が必要です。アルコールは強い刺激があり、炎症を起こしている耳の皮膚をさらに乾燥・損傷させ、痛みやかゆみを増やすことがあります。耳の状態に合わない液体を使うと、薬剤によるやけどのようなダメージを与えることもあります。

犬の耳掃除には、動物病院で相談して選んだ犬用イヤークリーナーと、コットンやガーゼなど柔らかい素材を使うことが安全です。耳の中に物を差し込まないケアを意識することが大切です。

犬の外耳炎は命に直結することは少ないものの、放置すると中耳炎・内耳炎や聴力低下など重いトラブルにつながる病気です。耳をかゆがる、頭を振る、耳が赤い・臭う・耳垢が急に増えたといった症状は、早期発見のための大切なサインになります。日頃から耳の見た目やニオイ、仕草をよく観察し、気になる変化があれば自己判断で市販薬や間違った耳掃除をせず、できるだけ早く動物病院で診てもらうことが、愛犬の耳を守る一番の近道といえるでしょう。

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