
大切な赤ちゃんと、家族同然の愛犬。どちらにも安全で穏やかな毎日を送ってほしい一方で、「もし噛んだらどうしよう」「本当に一緒に暮らして大丈夫?」と不安を抱く方は少なくありません。実際、家庭内での犬による赤ちゃんの咬傷事故は、ちょっとした油断や環境づくりの不足がきっかけになることが多いとされています。本記事では、犬が赤ちゃんを噛むリスクや原因を整理しながら、今すぐ家庭で実践できる5つの安全策と、事故を防ぐための具体的なポイントをわかりやすく解説します。
犬が赤ちゃんを噛むリスクと事故が起きやすい場面

赤ちゃんと犬が同じ空間で暮らす場合、最大のリスクは「不意の咬傷事故」です。犬は普段どれほど穏やかでも、驚きや恐怖、痛みを感じると本能的に噛んでしまうことがあります。特に赤ちゃんは身体が小さく皮膚も薄いため、軽い一噛みでも大きなケガや命に関わる事故につながる危険があります。
事故が起きやすい場面としては、授乳や抱っこ中に犬が割り込んでくるとき、床で寝ている赤ちゃんの近くを犬が通るとき、おもちゃや食べ物をめぐって距離が近づいたときなどが挙げられます。また、大人が台所やトイレに行き、赤ちゃんと犬だけが一時的に同じ空間に残される状況は特に危険です。安全に共生するためには、「噛む可能性はゼロではない」という前提で、日常のシーンごとにリスクを意識することが重要です。
家庭内で起きた赤ちゃん咬傷事故の事例と特徴
過去の報道や医療機関のまとめから、家庭内での赤ちゃん咬傷事故にはいくつか共通点が見られます。多くは「普段はおとなしい家庭犬」が関わっており、外で飼われている見知らぬ犬よりも、室内で一緒に暮らしている犬による事故が目立ちます。
特に多いパターンは、次のようなケースです。
| 事例パターン | よくある状況 | 特徴 |
|---|---|---|
| 抱っこ中に噛まれた | 保護者が赤ちゃんを抱っこ・授乳中に、犬が飛びつく・嫉妬する | 顔や頭部の重傷になりやすい |
| 大人が目を離した数分間 | キッチンやトイレに行っている短時間 | 「すぐ戻るつもり」の油断で事故が起きる |
| 寝ている犬に近づいて噛まれた | 赤ちゃんや幼児がハイハイで接近 | 犬が驚いて反射的に噛む |
致命的な事故は大型犬×乳児(特に生後~1歳未満)の組み合わせで起こりやすく、噛まれた部位は顔・頭・首が多いと報告されています。多くの飼い主は「まさか自分の犬が」と感じており、事故前に明らかな攻撃行動がなかったケースもあります。家庭内で起きた実例を知ることで、日常のどの場面に危険が潜んでいるかを具体的にイメージしやすくなります。
どんな犬でも噛む可能性があると考えるべき理由
赤ちゃんの咬傷事故を防ぐためには、「うちの子は大丈夫」と思わず、どんな犬にも噛む可能性があると理解することが出発点になります。噛みやすい犬・噛みにくい犬の傾向はありますが、「絶対に噛まない犬」は存在しません。
犬が噛むかどうかは、犬種だけでなく、性格、これまでの経験、体調、周囲の環境、赤ちゃんとの距離感など、複数の要素がからみ合って決まります。普段は穏やかな犬でも、痛みや疲れ、ストレス、突然の驚きによって「防衛本能」が一気に高まり、反射的に口が出てしまうことがあります。
さらに、犬は言葉で「やめて」「嫌だ」と伝えられないため、うなり声や体を硬くするなどのサインが見逃されると、最後の手段として噛む行動に出ることがあります。「小型犬だから安心」「家族には絶対噛まない」は危険な思い込みと考え、常に安全な距離と見守りを意識することが重要です。
犬が赤ちゃんを噛みやすいシチュエーション
犬が赤ちゃんを噛みやすいのは、特定の場面や環境が重なったときです。「いつ危ないのか」を理解しておくことが最大の予防策になります。代表的なシチュエーションは次のようなものです。
| シチュエーション | 赤ちゃん側の行動・状況 | 犬側の状態・気持ち |
|---|---|---|
| ハイハイで近づく | 予測不能な動きで急に接近する | 驚き・恐怖・警戒心が高まる |
| おもちゃやごはんの近く | 皿やおもちゃを触る・取ろうとする | 物を守ろうとして攻撃的になる |
| 犬が休んでいるとき | 寝ているところに触る・乗る | 驚いて反射的に噛む |
| 大人が赤ちゃんに集中 | 抱っこや授乳に夢中で犬を見ていない | やきもち・不安・興奮が高まる |
| 赤ちゃんが大きな声を出す | 泣き声や奇声が続く | 音にストレスを感じ、逃げ場がない |
赤ちゃんが犬に近づくとき、犬が休んでいるとき、大人の目が十分に届いていないときは特に危険度が高くなります。 こうした場面では、物理的に距離をとる工夫や、必ず大人が間に入る体制を意識しておくことが重要です。
犬が赤ちゃんを噛む主な原因と犬の心理

赤ちゃんを噛む行動には、必ず犬側の理由と心理状態があります。「性格が悪い」「突然キレた」というより、縄張り意識・恐怖・ストレス・体調不良などの要因が重なった結果として噛みつきが起こると考えると理解しやすくなります。
代表的な原因は、次のようなものです。
- 新しい家族(赤ちゃん)への警戒・不安
- 自分のテリトリーや飼い主を守ろうとする防衛本能
- 赤ちゃんの予測できない動きや大きな声への恐怖やストレス
- 飼い主の気を引きたい・やきもちからくる行動
- 遊びや甘噛みのコントロールができていない
- 痛みや病気によるイライラや過敏さ
犬は言葉で訴えられないため、「やめてほしい」「怖い」「近づかないでほしい」というサインが無視され続けると、最終手段として噛む行動に出ることがあります。犬の行動の背景にある感情を理解し、「叱る」よりも「噛ませない環境づくり」と「不安やストレスの軽減」を優先することが重要です。
縄張り意識や警戒心からくる攻撃行動
犬は本能として縄張り(テリトリー)を守ろうとする動物です。自分の寝床、飼い主との距離、ソファやベッド、フードボウル周りなどを「自分の場所」と感じている場合、そこに赤ちゃんが近づくと、追い払うために唸り声や噛みつき行動が出ることがあります。特に、飼い主とのスキンシップ中に赤ちゃんが近づくと「飼い主を取られる」と感じて攻撃的になることもあります。
また、警戒心が強い犬は、見慣れない動きや音を出す赤ちゃんを「何か分からない怖い存在」と感じやすくなります。逃げられない状況で不安や恐怖が高まると、防衛のために噛みつきに発展しやすくなります。犬が安心して逃げられる場所を確保し、赤ちゃんに犬のテリトリーへ勝手に入らせないことが重要な予防策になります。
赤ちゃんの動きや声がストレスになる場合
赤ちゃんの高い声や突然の大きな泣き声、予測しづらい動きは、多くの犬にとって強い刺激になります。特に、耳が敏感な犬や神経質な犬は、「びっくりした」「怖い」「落ち着けない」というストレスが積み重なることで、吠えや唸り、噛みつきなどの攻撃行動につながる危険があります。
赤ちゃんはまだ力加減が分からず、犬の耳やしっぽをつかんだり、急に抱きついたりすることもあります。このような行動は、犬から見ると「逃げられない、やめてほしいのに止まらない」という追い詰められた状況になりやすく、防衛として噛むことがあります。
赤ちゃんの声や動きで犬がストレスを感じているサインとしては、あくびが増える、身体をブルブル振る、落ち着きがなくウロウロする、隅に隠れようとする、赤ちゃんから目をそらす、などが挙げられます。これらの様子が見られる場合は、距離をとる・静かな場所に避難させるなど、早めに犬を休ませることが重要です。
遊びや甘噛みがエスカレートする危険
犬が赤ちゃんを噛んでしまう原因として多いのが、遊びの延長や甘噛みがエスカレートするケースです。犬は口を使ってじゃれたり、相手の反応を見たりする習性があり、特に子犬や若い犬は加減が分かりません。大人には「少し痛い」程度でも、皮膚が薄い赤ちゃんには十分な怪我につながります。
また、赤ちゃんの手足が動いたり、泣き声がしたりすると、おもちゃだと勘違いして口で触ろうとすることがあります。最初は軽い甘噛みでも、興奮してくると噛む力が強まり、一瞬で深い傷になる危険性があります。甘噛みを「かわいいから」と許さず、日頃から人の肌に歯を当てないルールを徹底し、犬と赤ちゃんが直接触れ合う遊びはさせないことが重要です。
病気や痛みなど身体的な不調が原因のこともある
犬が急に赤ちゃんを噛んだ場合、病気や痛みなどの身体的な不調がきっかけになっていることも少なくありません。
例えば、関節炎やヘルニア、耳の炎症、皮膚炎、歯周病などで強い痛みがあると、触られた瞬間に「防衛反応」として噛んでしまうことがあります。特に、赤ちゃんが無意識に痛い部分をつかんだり、よじ登ったりすると、犬が驚いて反射的に口が出やすくなります。
また、内臓疾患やホルモン異常、シニア期の認知機能低下などで、いつもよりイライラしやすくなったり、些細な刺激にも過敏になるケースもあります。普段穏やかな犬が急に怒りっぽくなった場合は、「性格の問題」と決めつけず、まず動物病院で健康チェックを受けることが大切です。
痛みを抱えた犬に無理に触れさせないためにも、赤ちゃんが近づくと嫌がる体勢や場所(ソファの下、ケージの奥など)を家族全員で共有し、赤ちゃんを近づけない工夫をしておきましょう。
特に注意したい犬側と赤ちゃん側の条件

赤ちゃんと犬の事故リスクは、単に「犬種」だけで決まるわけではありません。犬側と赤ちゃん側の条件が重なったときに危険が高くなると考えることが重要です。
まず犬側の条件としては、年齢(思春期〜若い成犬)、過去に人や犬を噛んだ経験がある、怖がり・警戒心が強い性格、社会化不足(子どもに慣れていない)、運動不足やストレス過多、体調不良などが挙げられます。去勢・避妊の有無や、日頃のしつけ状況も影響します。
赤ちゃん側の条件としては、月齢が上がり、自分で動けるようになる時期ほど危険が増します。ハイハイやつかまり立ちが始まると、赤ちゃんが犬に近づき、毛をつかむ・上に乗ろうとする・大きな声を出すなど、犬が苦手とする行動が増えます。さらに、大人の目が行き届きにくい時間帯(家事で忙しい夕方など)はリスクが高まります。
「大人しい犬だから大丈夫」「赤ちゃんはまだ小さいから平気」と思わず、犬と赤ちゃん双方の条件を組み合わせて危険度を判断することが予防の第一歩になります。
大型犬やオス犬などリスクが高まりやすい要因
赤ちゃんを噛むリスクは、犬種よりも「体格」や「性別」「年齢」などの条件で高まりやすいとされています。特に大型犬・中型犬の成犬オスは、咬傷事故の統計でも関与が多いと報告されています。
代表的なリスク要因をまとめると、次のようになります。
| リスクを高める犬側の条件 | 理由の一例 |
|---|---|
| 大型犬・中型犬 | 噛む力が強く、1回の咬傷でも致命傷になりやすい |
| 未去勢のオス犬 | ホルモンの影響で攻撃性や縄張り意識が強まりやすい |
| 成犬・壮年期 | 体力があり、本気で抵抗した時に制御しにくい |
| 以前に噛みつき行動があった犬 | 噛むことで状況が変わった成功経験が学習されている |
ただし、小型犬やメス犬でも赤ちゃんを噛む危険はあるため、「小さい犬だから安心」と考えるのは危険です。あくまで「より重症化しやすい条件」として意識し、日頃から接触管理や環境づくり、しつけをより慎重に行うことが重要です。
闘犬気質や警戒心が強い犬種の場合の注意点
闘犬として改良されてきた犬種や、警戒心が非常に強い犬種は、「追い払う・攻撃して守る」反応が出やすい傾向があると理解しておくことが大切です。アメリカンピットブルテリア、土佐犬、ブルテリア系、シェパード系、柴犬・紀州犬など日本犬の一部は、個体差はあるものの、興奮すると噛む力が強く、いったんスイッチが入ると止まりにくい場合があります。
赤ちゃんがいる家庭では、
- 常にリードやゲートで距離をコントロールする
- 赤ちゃんと同じ空間でフリーにしない
- 来客や物音など、犬が興奮しやすい状況を事前に避ける
- 専門家によるしつけ・トレーニングを早めに受ける
といった対策が重要です。「うちの子は大丈夫」と思い込みをせず、最悪の事態を想定した上で、物理的な隔離とルールづくりを徹底することが、赤ちゃんと犬の両方を守ることにつながります。
ハイハイ期から1歳半ごろの赤ちゃんが危ない理由
ハイハイ期から1歳半ごろの赤ちゃんは、犬の咬傷事故が特に多い時期と言われています。理由のひとつは、自力で移動できるようになる一方で、危険を理解したり距離を取ったりする判断力がまだほとんどないことです。予測不能な動きで犬に近づいたり、しっぽや耳をつかんだり、急にしがみついたりすることがあり、犬が驚いて噛んでしまうきっかけになります。
また、この時期の赤ちゃんは大きな声を出したり、甲高い奇声をあげたりすることが多く、敏感な犬にとって強いストレスになります。赤ちゃんが犬の寝床やごはんの近くにハイハイで入り込むことで、縄張りを侵されたと感じた犬が防衛的に攻撃する場合もあります。赤ちゃん側は「遊びたい」「触りたい」だけでも、犬には「恐怖」や「不快」と受け取られやすい点が事故を増やす大きな要因です。
安全策1:空間を分けるための環境づくり

赤ちゃんを犬から守るための最も基本的な対策は、物理的に距離を取り、同じ空間に自由にさせないことです。どれだけ穏やかな性格の犬でも、予想外の刺激が重なれば思わぬ行動に出る可能性があります。特にハイハイ期以降の赤ちゃんは自分から犬に近づきやすくなるため、環境づくりが重要になります。
安全な環境づくりのポイントは、
- 赤ちゃん専用エリアと犬専用エリアをはっきり分ける
- 仕切りやゲートなど、目で見て分かる「境界」を作る
- 大人がいない状態で赤ちゃんと犬が接触できないレイアウトにする
という3点です。「仲良くさせる前に、まずは安全な距離を保証する」という考え方で、家の間取りに合わせてベビーベッド、プレイサークル、犬用サークル、ベビーゲートなどを組み合わせていくことが、事故防止につながります。
ベビーベッドやプレイサークルで赤ちゃんを守る
ベビーベッドやプレイサークルは、「赤ちゃんの安全ゾーン」をつくるための必須アイテムです。高さのある柵に囲まれたスペースを確保することで、犬が近づける範囲を物理的に制限できます。
特に、ハイハイ期やつかまり立ちの時期は、赤ちゃん自身が犬に向かっていってしまうことが多くなります。ベビーベッドやプレイサークルを使用すると、赤ちゃんが突然犬に触れたり、しっぽをつかんだりする行動を防ぎ、犬が驚いて噛んでしまうリスクを下げられます。
選ぶ際は、以下の点を確認すると安心です。
- 柵の高さが十分にあり、犬が飛び越えられないこと
- 柵の隙間が狭く、赤ちゃんの手足や頭が挟まりにくい構造であること
- 安定性が高く、赤ちゃんがつかまっても倒れにくいこと
「赤ちゃんを囲う」発想だけでなく、「犬から安全な距離を取るバリアをつくる」意識でレイアウトを考えることが重要です。
犬用ゲートやサークルで接触範囲をコントロール
犬用ゲートやサークルは、「赤ちゃんと犬が同じ空間にいても、直接は触れ合えない状態をつくるための道具」と考えることが大切です。玄関やキッチン、階段前、赤ちゃんのプレイスペースとの境目など、接触を避けたい場所に設置し、赤ちゃんゾーンと犬ゾーンをはっきり分けます。
ポイントは、犬をただ閉じ込めるのではなく、ゲートやサークルの内側を「安心できる自分の部屋」にすることです。ベッドやお気に入りのおもちゃ、水を用意し、静かに休める環境を整えます。また、赤ちゃんが動き回る時間帯にはゲートで距離をとり、赤ちゃんが寝ている時間帯に大人の見守り付きでふれあうなど、時間帯で接触範囲をコントロールすると安全性が高まります。
留守番時や目を離す時の安全なレイアウト例
留守番や目を離す時間帯は、「赤ちゃんのエリア」と「犬のエリア」を物理的に完全に分けるレイアウトが基本です。例えば、リビングをベビーゲートで区切り、赤ちゃんはベビーベッドやプレイサークル内、犬はサークルやクレート内で過ごさせるなど、必ずどちらかが囲われた状態にします。
安全なレイアウト例としては、
- 赤ちゃん:リビングの一角にプレイサークル+ベビーベッド
- 犬:別の部屋、またはリビング内のサークル・クレート
- キッチンや玄関:犬用ゲートで侵入防止
が挙げられます。特に留守番時は、「同じ空間でフリーにしない」ことが絶対条件です。短時間であっても、大人の目が届かない状況で赤ちゃんと犬が直接触れ合えるレイアウトは避けてください。
安全策2:犬にとって安心できる居場所を用意する

犬が赤ちゃんを噛んでしまう大きな要因のひとつが、ストレスや不安です。そのため、「赤ちゃんから離れて安心して休める自分だけの場所」を用意することが重要な安全策になります。リビングの隅や静かな部屋に、クレートやベッドを置き、毛布やお気に入りのおもちゃを入れて「ここにいれば安心」と感じられる環境を整えましょう。
犬が自分からその場所に入ったときは、声をかけすぎず静かにさせておき、子どもや大人も無理に触らないルールを家族で共有します。安心できる避難先があることで、赤ちゃんの泣き声や動きに疲れたときでも、犬は自分で距離を取ることができ、結果として咬傷事故の予防につながります。
犬専用スペースを作ってストレスを減らす
犬にとって安心できる居場所があるかどうかは、ストレスの大きさに直結します。赤ちゃんと同じ空間にずっといる状況を前提にせず、「ここにいれば安心」という犬専用スペースを必ず用意することが大切です。
犬専用スペースのポイントは、
- 家族の気配は感じられるが、赤ちゃんからある程度離れている場所(リビングの一角など)
- ケージやクレート、ベッドを置き、いつでも落ち着いて横になれる
- ごはん皿や水飲み場、おもちゃも近くにまとめて配置
- 掃除がしやすく、騒音や直射日光が少ない
といった環境です。
日常的に「休んでいいよ」「ハウス」などの合図で犬を専用スペースに誘導し、そこで静かに過ごせたらおやつや声かけで褒めます。犬が自分から戻りたくなる場所にしておくことで、赤ちゃんの泣き声や動きに疲れたときにも、自主的に距離をとってクールダウンできるようになります。
赤ちゃんの物に近づけない収納と片付けの工夫
赤ちゃんのおもちゃやガラガラ、スタイなどには、赤ちゃんのにおいが強く付きます。犬が赤ちゃんグッズを「自分の物」と勘違いして口に入れないよう、日常的な収納ルールを決めることが安全対策になります。
まず、赤ちゃんの物は「犬が入れないゾーン」にまとめて保管します。リビングにベビー用品を置く場合は、フタ付きの収納ボックスや、扉付き棚の上段を活用し、床に直置きしないことが基本です。使用中以外のぬいぐるみ・おしゃぶり・哺乳瓶などは、必ずボックスに戻す習慣を家族全員で共有します。
オムツ用ゴミ箱や使用済みスタイなど、においが強い物も犬を引き寄せます。フタ付きゴミ箱を赤ちゃんの部屋やトイレ内に設置し、犬が倒せない位置に置きましょう。ベビーサークルの内側に「一時置き用カゴ」を用意し、遊び終わったおもちゃをすぐに集められるようにすると、散らかり防止と誤飲防止の両方に役立ちます。
来客時やイベント時の一時的な避難場所の確保
来客時や誕生日会など、人が集まるタイミングは、犬にとって大きなストレスになりやすく、赤ちゃんへの誤った接近や咬傷事故のリスクも高まります。来客がある日は「犬をどこに避難させるか」を事前に決めておくことが重要です。
避難場所として適しているのは、静かで落ち着ける部屋や、クレート・サークルを置いた個室です。普段からそのスペースでおやつを与えたり、ベッドを置いたりして「安心できる場所」として慣らしておきます。来客中は、見通しのよい位置にサークルを置くのか、まったく別室に移動させるのか、赤ちゃんと犬の距離が十分に取れる配置を選びます。
玄関の出入りが多い日は、飛び出し防止も兼ねて室内用ゲートを使用すると安全性が高まります。来客に対しては、赤ちゃんと犬に近づきすぎないこと、勝手に触らないことをあらかじめ伝えておくと安心です。
安全策3:赤ちゃんと犬を絶対に二人きりにしない

赤ちゃんと犬を安全に共存させるうえで、「赤ちゃんと犬だけの時間を作らない」ことは、最重要レベルのルールです。多くの咬傷事故は、ほんの数分、保護者が目を離したすきに起こっています。「いつもは優しいから大丈夫」「少しの間だけなら平気」という油断が、大きな事故につながります。
授乳中や家事の最中など、保護者の注意が赤ちゃんから離れる場面では、必ずベビーベッドやプレイサークル、犬用サークルやゲートを活用し、物理的に接触できない状態を作ることが基本です。トイレや洗面などで部屋を離れる場合も、数十秒であっても同じ対応を徹底します。
犬と赤ちゃんを同じ空間に置くのは、大人の目と手がすぐ届き、犬や赤ちゃんの動きにすぐ対応できるときだけに限定すると安心です。
大人がそばにいることが何よりの安全対策になる
赤ちゃんと犬を安全に共存させるうえで、大人が必ずそばで見守ることが最も重要な安全対策です。どれだけおとなしい犬でも、赤ちゃんの予測できない動きや声に反応して、急に興奮したり噛んでしまう可能性があります。
大人が近くにいれば、犬が赤ちゃんに乗りかかる、顔をなめ続ける、体を押すなどの危険な行動を始めた瞬間に止められます。また、赤ちゃん側が耳やしっぽを強く引っ張るなど、犬を刺激する行動をした場合も、すぐに制止して双方を守れます。
「ほんの数分なら大丈夫」「いつも仲良くしているから安心」と考えず、赤ちゃんと犬が同じ空間にいるときは、大人が必ず一人はそばで様子を見ていることを家庭内のルールにすることが大切です。
抱っこや授乳中に犬を近づけないための工夫
抱っこや授乳中は、赤ちゃんも保護者も身動きが取りづらく、万が一犬が飛びついたときにとっさにかばえない状態になります。できる限り物理的に距離を取り、接触を防ぐ工夫が重要です。
- 授乳・抱っこの定位置を決め、犬用ゲートやサークルで仕切る
- ソファやベッドで授乳する場合は、犬は別室かクレートに入れておく
- 抱っこ紐で歩くときは、事前に犬をハウスさせてから立ち上がる
- 授乳タイムは「犬のおやつ・知育トイの時間」と決め、離れた場所で集中させる
家族がいる場合は、授乳や寝かしつけの間は必ず誰かが犬を担当するという役割分担をしておくと安全です。ルールを家族全員で共有し、「少しだけなら大丈夫」という例外を作らないことが事故防止につながります。
きょうだいや祖父母に見守りを頼むときの注意点
きょうだいや祖父母に赤ちゃんと犬の見守りを頼む場合は、「犬と赤ちゃんを二人きりにしない」「接触は必ず大人が管理する」ことを事前に具体的に共有することが重要です。「大丈夫そうなら自由にさせていい」などの曖昧な伝え方は避けます。
伝えておきたいポイントの例をまとめます。
| 共有したい内容 | 具体的な伝え方の例 |
|---|---|
| 監視のルール | 「赤ちゃんと犬が同じ空間にいるときは、必ず大人が1人そばにいてください」 |
| 近づけ方 | 「抱っこ中・授乳中は犬をサークルに入れてください」 |
| NG行動 | 「赤ちゃんの近くでおやつをあげない」「犬に赤ちゃんのおもちゃを触らせない」 |
| 困ったとき | 「少しでも怖いと思ったら、すぐ犬を別室かサークルに移動してください」 |
加えて、普段の犬の性格や苦手なこと、うなり声・固まるなどの危険サインも共有しておくと安心です。口頭だけでなく、メモやLINEなどで簡単な「見守りルール表」を渡すと、情報の抜け漏れを防げます。
安全策4:噛ませないためのしつけとトレーニング

赤ちゃんの安全を守るうえで、「噛ませない行動パターンを身につけさせる」ことがしつけとトレーニングの目的です。厳しく叱りつけるよりも、「噛んだら楽しいことが終わる」「落ち着いたら褒められる」という経験を積み重ねる方が効果的です。
まず、家族全員で「人の手や服に歯を当てさせない」「赤ちゃんのおもちゃで犬と遊ばない」などのルールを統一します。そのうえで、基本コマンドやおもちゃ遊びを通じて、噛む代わりにできる行動を教えます。
赤ちゃんと犬を一緒に過ごさせる時間は、必ず大人がそばでコントロールし、嫌がるサインが出る前に距離を取ることが重要です。不安や興奮から噛みやすくなるため、十分な運動やスキンシップも並行して行い、心身ともに落ち着いた状態を保てるようにしましょう。
甘噛みを許さない一貫したルールづくり
甘噛みを「子犬だから仕方ない」と許していると、赤ちゃんにも歯を当てることへのハードルが下がり、重大な事故につながる危険があります。家族全員が同じルールで「人の肌に歯を当てさせない」ことを徹底することが重要です。
具体的には、犬が人の手や足、服を噛んだ瞬間に、遊びを中断して無言で立ち去る、または落ち着いた声で「ダメ」「ノー」と伝え、すぐにかみ心地の良いおもちゃに誘導します。怒鳴ったりたたいたりすると、恐怖や攻撃性を高めるだけなので避けます。
家族で以下を紙に書き出して共有すると、一貫性が保ちやすくなります。
| ルール項目 | 家族で統一したいポイント |
|---|---|
| 噛んだときの対応 | 無言で遊びを終わらせ、おもちゃに切り替える |
| OKなもの/NGなもの | おもちゃはOK、人の手足や服・赤ちゃんの物はNG |
| 子どもへの伝え方 | 「ワンちゃんを触るときは優しく・短く」を教える |
「誰か一人だけが甘くする」をなくし、全員が同じ対応をすることが、噛み癖をつけない最も有効なしつけになります。
「待て」「おいで」など基本のコマンドを教える
基本コマンドは「赤ちゃんから犬を離す」「犬を落ち着かせる」ための安全装置になります。特に「待て」「おいで」「ハウス」は、赤ちゃんがいる家庭では必須と考えましょう。
- 「待て」:赤ちゃんに近づこうとしたときに動きを止める合図になります。短い距離・短い時間から少しずつ練習し、できたらすぐにおやつや声かけでほめます。
- 「おいで」:赤ちゃんのそばから犬を安全な位置に呼び戻すために使います。必ず良いこと(おやつ・遊び)が起こる合図にしておくと、興奮時にも反応しやすくなります。
- 「ハウス」:サークルやベッドに入って落ち着く合図です。赤ちゃんが泣き出したときや来客時に、犬を一時的に離すのに役立ちます。
どのコマンドも、静かな環境で短時間の練習を毎日続けることが習得の近道です。うまくできない場合や攻撃的な様子が見られる場合は、早めにトレーナーや動物病院に相談しましょう。
おもちゃを使った正しい遊び方と発散のさせ方
おもちゃ遊びは、噛みたい欲求やエネルギーを安全に発散させる大切な時間です。人の手・足ではなく「おもちゃだけを噛ませる」ことを一貫したルールにすることが、安全対策として非常に重要です。
まずは、ロープ、ボール、ぬいぐるみタイプなど、犬のサイズや噛む力に合ったおもちゃを複数用意します。赤ちゃんのおもちゃと混ざらないよう、色や置き場所を分けると混同を防ぎやすくなります。
遊ぶときは、手をおもちゃの近くに出しっぱなしにせず、引っ張りっこや持ってこい遊びなど「距離のある遊び」を中心に行います。興奮しすぎた場合は、遊びを一度中断し、落ち着いたら再開することで「興奮しすぎると遊びが終わる」と学習させます。
噛む力が強くなりすぎたときは、低い声で短く「痛い」「ダメ」などと伝え、すぐに背を向けて数秒無視します。反対に、落ち着いておもちゃを噛めているときは、言葉と撫でること、時々おやつでしっかり褒めると、「おもちゃを噛むのが正解」と理解しやすくなります。
プロのドッグトレーナーに相談すべきサイン
犬の噛みつきリスクを家庭だけでコントロールできない場合は、早めに専門家の手を借りることが大切です。次のようなサインが複数当てはまる場合は、プロのドッグトレーナーや行動診療科の受診を検討しましょう。
- 赤ちゃんや子どもを見たときに、うなり声・威嚇・歯を見せる行動が増えている
- 抱っこや授乳中の大人に対して、赤ちゃんを守ろうとするように吠える・噛もうとする
- 叱ると逆上して本気で噛みつこうとする、口が当たる力が強くなってきた
- フードボウルやおもちゃ、寝場所に近づく赤ちゃんや大人に対して唸る・噛みつく
- 一度でも流血するほど噛んだ、あるいは噛もうとして空振りしたことがある
- 飼い主の声かけや制止がほとんど効かない、興奮がなかなか収まらない
「まだ大丈夫」と様子を見る期間が長くなるほど、噛み行動は習慣化しやすくなります。少しでも不安を感じた段階で、かかりつけ動物病院や信頼できるトレーナーに相談すると、赤ちゃんと犬の両方を守る行動計画を立てやすくなります。
安全策5:日常の健康管理とストレスケアを徹底する

犬が赤ちゃんを噛むリスクを減らすためには、しつけだけでなく、日常の健康管理とストレスケアを徹底することが土台になります。体に痛みや不調がある、運動不足でエネルギーが余っている、構ってもらえず不安がたまっている犬は、些細な刺激に対しても攻撃的になりやすくなります。
具体的には、定期的な健康診断やワクチン接種、口や耳、皮膚のチェックを行い、少しでも違和感があれば早めに動物病院を受診します。同時に、年齢や犬種に合った運動量を確保し、散歩や遊びで適度に発散させることも重要です。さらに、家族とのスキンシップや「落ち着ける場所」の確保により、精神的な安心感を高めると、赤ちゃんの泣き声や動きにも余裕を持って対応しやすくなります。
健康面と心のケアを整えることで、犬の「噛みやすい状態」を日頃から減らしていくことが、安全な共生への近道になります。
体調不良や痛みがあると噛みやすくなる理由
犬は体調が悪いときや体のどこかに痛みがあるとき、普段よりもイライラしやすくなり、防御行動として噛むことがあります。病院や注射を嫌がるのと同じように、「これ以上触られたくない」「そばに来ないでほしい」というサインが噛みつきとして表れる場合があります。
特に注意したいのは、関節や腰の痛み、耳や歯のトラブル、皮膚炎など、触れられると痛みが強くなる不調です。赤ちゃんが偶然その部位をつかんだり、よじ登ったりすると、驚きと痛みから反射的に噛んでしまう危険があります。また、発熱や下痢などで全身状態が悪いときも、些細な刺激に敏感になりやすくなります。
そのため、「最近少し元気がない」「触ると嫌がる場所がある」と感じたら、早めに動物病院を受診し、赤ちゃんとは距離を取る配置にすることが重要です。 日常的な健康チェックは、噛みつき事故の予防にもつながります。
運動量とスキンシップで不満や不安を減らす
犬は十分に運動してエネルギーを発散できると落ち着きやすく、ストレスや不満も減少します。反対に、運動不足の犬はイライラしやすく、赤ちゃんの動きや泣き声などの小さな刺激にも過敏に反応し、吠えや噛み行動につながりやすくなります。
散歩は毎日時間と距離を確保し、ボール遊びや引っ張りっこなど、頭も使う遊びを組み合わせると満足度が高まります。赤ちゃんが寝ている時間帯や、もう一人の大人が赤ちゃんを見ている時間を「犬との運動タイム」として習慣化すると安全です。
スキンシップも重要です。なでる、ブラッシングをする、声をかけるなどの穏やかな触れ合いは、犬に安心感を与え、飼い主への信頼を深めます。「赤ちゃんが来ても、自分は大切にされている」と犬に感じさせることが、嫉妬や不安からの噛みつきを防ぐポイントです。短時間でも毎日、犬だけに向き合う時間を意識して作るとよいでしょう。
去勢避妊手術が行動に与える影響と検討ポイント
犬の去勢・避妊手術は、ホルモンバランスを変えることで攻撃性やマーキング、発情期特有のイライラをやわらげる効果が期待でき、赤ちゃんへの事故リスクを下げる一助になる場合があります。特に、オスのマウンティングやメスの発情期の不安定さが強い場合には検討する価値があります。
一方で、去勢・避妊は「絶対に噛まなくなる魔法の方法」ではありません。噛みつきには、しつけ不足・社会化不足・恐怖・縄張り意識・痛みなど、さまざまな要因が関わります。そのため、手術を行うかどうかは、
- 犬の年齢・健康状態
- 問題行動の種類と強さ
- 獣医師やトレーナーからの評価
を踏まえて判断することが重要です。また、術後は太りやすくなるため、食事量と運動量の調整も欠かせません。安全性の向上を期待しつつも、環境づくりとしつけ・ストレスケアとセットで考えることが、赤ちゃんと犬の共生には不可欠です。
赤ちゃんと犬を徐々に慣らすためのステップ

赤ちゃんと犬が安全に共存するためには、いきなり一緒にさせず、段階を踏んで慣らすことが重要です。「見る・聞く」段階から始め、「近づく」「一緒に過ごす」へと少しずつステップアップしていきます。
慣らしの基本ステップの一例は次の通りです。
| ステップ | 目的 | やることの例 |
|---|---|---|
| 1. 気配に慣れる | 犬の興奮を抑え、赤ちゃんの存在を当たり前にする | 赤ちゃんの泣き声の録音を小さい音で流す、赤ちゃん用品のにおいをかがせる |
| 2. 離れた場所での対面 | 興奮や不安がないか確認 | ベビーゲート越しに、赤ちゃんを抱いた大人と犬が短時間対面する |
| 3. 近距離での同室 | 同じ空間にいることに慣らす | 大人が間に入り、リードを付けた状態で同じ部屋で過ごす |
| 4. 短時間の近接 | 匂いをかぐなど軽い接触 | 犬が落ち着いているときだけ、赤ちゃんの足先などを静かに匂わせる |
どの段階でも「少しずつ・短時間・必ず大人が管理する」ことが大前提です。犬が興奮したり怖がったりしたら、すぐ一段階前に戻し、無理をさせずに進めていきます。
妊娠中からできる犬への準備と練習
妊娠がわかった段階から、犬に少しずつ「赤ちゃんのいる生活」に慣れてもらう準備を始めることが大切です。出産直前に一気に環境が変わると、犬のストレスや赤ちゃんへの警戒心が高まりやすくなります。
具体的には、次のような練習がおすすめです。
| 準備・練習内容 | ポイント |
|---|---|
| 生活リズムの変更 | 散歩やごはん、遊ぶ時間を、出産後に近いスケジュールへ少しずつ移行する |
| 赤ちゃん用品に慣らす | ベビーベッドやバウンサー、ベビーカーを早めに設置し、「見ても気にしない」状態を作る |
| 赤ちゃんの音に慣らす | 赤ちゃんの泣き声の音源を小さな音量から流し、落ち着いていられたらほめてごほうびを与える |
| 基本トレーニングの強化 | 「ハウス」「待て」「おいで」など、赤ちゃんの安全確保に役立つコマンドを毎日練習する |
| 甘噛み・飛びつきの見直し | 妊婦や赤ちゃんに危険な行動は、この時期にルールを明確にしてやめさせる |
また、妊娠中の飼い主の体調変化で散歩や遊び時間が減る場合は、家族で役割分担を決めておきます。「犬のケア担当が急に変わる」「かまってもらえる時間が激減する」状況をできるだけ作らないことが、赤ちゃんへの嫉妬や不安を防ぐポイントです。
退院後すぐの初対面を安全に行う手順
退院直後の初対面では、「距離を保ったまま匂いを知ってもらう」ことが最優先です。いきなり近づけるのではなく、次のような手順でゆっくり慣らしていきます。
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まずは赤ちゃんの匂いだけを経験させる
退院前後のタイミングで、使用済みのおくるみやスタイなどを犬に嗅がせます。落ち着いている時に、無理に顔の近くには持って行かず、犬が自分から近づいて匂いを確認できるようにします。 -
赤ちゃんは大人がしっかり抱いたまま、距離を取って対面
初回は、犬にリードを付けた状態で、大人2人以上で対応すると安心です。赤ちゃんはしっかり抱き、犬から1〜2メートルほど離れた位置で短時間だけ顔を見せます。犬が興奮するようなら、すぐに距離を広げて落ち着かせます。 -
落ち着いた行動をほめて、良い印象を作る
静かに座る、飼い主の方を見るなど、穏やかな反応を見せたらおやつや声かけでたくさんほめます。「赤ちゃんがいると良いことがある」という経験を重ねることが、後々の安全につながります。 -
顔を近づけたり、においを直接かがせたりしない
初対面の日は、犬が赤ちゃんに接近する段階までは進めないことが重要です。様子を見ながら、数日〜数週間かけて少しずつ距離を縮めていく方が安全です。
成長に合わせた距離の縮め方と注意点
赤ちゃんの成長に合わせて、犬との距離や関わり方を段階的に変えることが安全への近道です。「赤ちゃんの月齢」「犬の表情やしぐさ」「大人がどこまで介入できるか」の3点を常にセットで考えることが重要です。
| 月齢の目安 | 関わり方の目標 | 距離と大人の関わり方 |
|---|---|---|
| 〜6か月頃 | 匂い・存在に慣れる | 抱っこ中に少し離れた場所から見るだけ。直接触れ合わせない |
| 6〜12か月 | 同じ空間にいる練習 | ベビーサークル越しなど、必ず柵や大人の腕を介して接触。赤ちゃんの動きが激しい時は距離をとる |
| 1〜2歳 | 「優しくなでる」を教える | 大人が手を添えて撫で方を指導。犬に逃げ道を用意し、嫌がる様子があればすぐ中断 |
注意点として、
- 赤ちゃんが犬を追いかけ始めたら、必ず大人が間に入り、追いかけっこにしない
- 「しっぽを引っ張る」「上に乗る」などの行動は、早い段階からはっきり止める
- どれだけ慣れてきても、赤ちゃんと犬だけを同じ空間に残さない
少しでも犬が緊張した表情や、赤ちゃんが興奮しすぎている様子が見られた場合は、距離を一段階戻し、落ち着ける環境に切り替えることが大切です。
噛みそうな前兆サインと危険な行動の見分け方

まず覚えておきたいポイント
犬が赤ちゃんを噛む前には、多くの場合「前兆サイン」や「危険な行動」が見られます。これを早めに察知して距離を取ることが、事故防止の一番の鍵です。
前兆サインには、次のようなものがあります。
- 体を固くしてじっと動かない、または固まったまま赤ちゃんを見つめる
- 口をペロペロ舐める、あくびが増える、体をブルブルと振るなどのストレス行動
- シッポをピンと固く上げる、または足の間に強く巻き込む
- 赤ちゃんの周りをウロウロする、間に入ろうとする
危険度が高い行動の例は次の通りです。
- 赤ちゃんに向かって突進しようとする、飛びつこうとする
- 赤ちゃんのおもちゃや布団を守るようにしてうなる、近づくと固まる
- 赤ちゃんの手足をしつこく舐める・口に含もうとする
「何となく落ち着きがない」「いつもと違う緊張感がある」と感じた時は、すぐに赤ちゃんと犬を離し、大人が間に入ることが重要です。
うなり声や凝視など、すぐに距離を取るべきサイン
犬が赤ちゃんを噛む前には、多くの場合、分かりやすい「警告サイン」が見られます。これらのサインが出たら、すぐに赤ちゃんと犬の距離を離すことが重要です。
代表的なサインを表にまとめます。
| サインの種類 | 具体的な様子 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| うなり声 | 低いうなり、のどを鳴らすような音 | 即座に赤ちゃんを離し、犬を落ち着ける |
| 凝視 | 目を細めず、じっと赤ちゃんを見つめる | 間に大人が入り、接触を中止する |
| 体を固くする | 全身が硬直し、動きが止まる | 刺激をやめて距離を取る |
| 歯を見せる | 上唇を上げて歯を見せる、口を少し開ける | 攻撃直前のことも多く、即座に隔離する |
| 低い吠え | 大きな吠えではなく、低く短く吠える | 近づけず、環境を落ち着かせる |
特に、「うなる」「凝視する」「体が固まる」「歯を見せる」が重なった場合は、噛みつきの直前である可能性が高く危険です。赤ちゃんを抱き上げる、別室に移動するなど、まず赤ちゃんの安全を最優先し、犬には無理に触らず時間をかけて落ち着かせるようにしましょう。
ストレスサインを早く察知するための観察ポイント
犬がいきなり唸ったり噛みついたりする前には、多くの場合「小さなサイン」が現れます。日頃からの観察で変化に気づけるかどうかが、事故防止の鍵になります。
代表的なストレスサインは、次のような行動です。
| サインの種類 | 具体的な様子 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 体の緊張 | 体が固まる、尻尾をピンと立てる・巻き込む | すぐに距離をとる準備をする |
| 顔まわり | 目をそらす、白目が見える(ホエールアイ)、頻繁なまばたき | 赤ちゃんからそっと離す |
| 口の動き | 何度もあくびをする、鼻や口の周りを舐める、口角が引きつる | 無理に触らず、休ませる |
| 行動の変化 | ウロウロ歩き回る、落ち着きがなくなる、隠れようとする | 刺激(音・赤ちゃんの動き)を減らす |
「いつもと違う行動」や「落ち着きのなさ」が見られたら、赤ちゃんとの接触をいったんやめ、大人が間に入ることが重要です。 日記や動画で普段の様子を記録しておくと、小さな変化にも気づきやすくなります。
子どもが大きくなってから教えるべき接し方のマナー
子どもが3~4歳以降になると、犬と直接関わる機会が増えます。この時期までに「どう接したら犬が安心できるか」を具体的に教えることが、咬傷事故の大きな予防策になります。
教えておきたい主なマナーは次の通りです。
- 犬が眠っている時・ごはん中・おもちゃで遊んでいる最中に触らない
- 大きな声を出したり、走って追いかけたりしない
- 顔を近づけない、抱きつかない、上に乗らない
- 尻尾や耳、毛を強く引っ張らない
- おやつやおもちゃは、必ず大人と一緒に静かに渡す
- 嫌がるサイン(離れようとする、うなる、固まる)が出たら、すぐに離れる
「犬も怖いと噛んでしまうことがある」「優しくすると犬も安心する」といった理由もセットで伝えると、子どもが守りやすくなります。保護者は常にそばで見守り、守れた時には子どもと犬の両方をしっかり褒めることが大切です。
もし噛んでしまったら:応急処置と受診の目安

犬が赤ちゃんを噛んでしまった場合、まず行うべきことは「安全確保」と「止血・洗浄」そして「早めの受診判断」です。パニックになりやすい場面ですが、落ち着いて順番に対応することで、傷の悪化や感染リスクを減らせます。
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安全確保と犬を離す
すぐに犬を別室やサークルに移動させ、赤ちゃんから完全に離します。再度噛まれる危険を必ずなくします。 -
出血の確認と止血
清潔なガーゼやタオルで傷口を軽く押さえ、出血の程度を確認します。大量出血・血が止まらない場合は、救急要請を検討します。 -
傷の場所と深さをチェック
顔、首、頭、関節、手指などは特に注意が必要です。深くえぐれた傷、皮膚が裂けている傷、歯形がはっきり付いている傷は重症の可能性があります。 -
受診の基本方針
赤ちゃん・乳幼児が犬に噛まれた場合は、軽そうに見えても基本的に医療機関を受診することが望ましいです。 予防接種や抗生剤の判断、縫合の要否、神経・筋肉の損傷確認など、自己判断が難しいためです。 -
受診先の目安
- 平日・日中:小児科または救急外来
- 夜間・休日:小児救急窓口や#8000(小児救急電話相談)に連絡し、指示に従う
このあとに行う具体的な洗浄方法や、「すぐに病院へ行くべきケース」の判断基準について、次の見出しで詳しく解説します。
傷の洗浄方法とすぐに病院へ行くべきケース
犬に噛まれた傷は見た目が軽くても、必ず流水で5分以上しっかり洗い流すことが最重要です。石けんが使える場合は、泡立てて傷口と周辺をよく洗い、再度流水ですすぎます。その後、清潔なガーゼやタオルで軽く押さえて血を止め、消毒液があれば薄く使用し、ガーゼで覆います。
次のような場合は、できるだけ早く(目安として受傷後2時間以内を意識して)小児科や外科、救急外来を受診してください。
| すぐに病院へ行くべきケース |
|---|
| 顔・頭・首・関節まわりを噛まれた |
| 出血がなかなか止まらない、血が噴き出す |
| 傷が深い・ぱっくり開いている・肉が見える |
| 乳児・新生児が噛まれた(部位に関係なく受診) |
| 噛んだ犬がワクチン未接種・野良犬・不明な犬 |
| 強く振り回された、打ちつけた可能性がある |
| 発熱、ぐったりしている、いつもと様子が違う |
受診時には、噛んだ犬のワクチン歴や健康状態、噛まれてから経過した時間を伝えると診察がスムーズになります。
保健所や自治体への届出が必要な場合
犬が人を噛んだ場合、自治体への届出が義務になるかどうかは、自治体ごとの条例で異なります。特に「人に危害を加えた犬」「咬傷事故」と定義された場合は、届出が必要になるケースが多いです。
一般的には、次のような場合に届出の対象となることが多くみられます。
- 犬が人の皮膚を破るほど噛んだ、または出血を伴うケガをさせた
- 救急受診や医療機関での治療が必要になった
- 過去にも咬傷歴がある犬が再び噛んだ
届出先は、保健所、動物愛護センター、市区町村の生活衛生担当課などです。多くの自治体で、飼い主に「咬傷事故届」などの提出を義務付けており、獣医師や医療機関から保健所へ通報される仕組みがある場合もあります。
届出を行うと、自治体から飼い主への聞き取りや、再発防止指導、場合によっては係留方法の改善指示などが行われます。面倒に感じても、再発防止とトラブル回避のため、居住地域の条例を確認し、必要な手続きは必ず行うようにしてください。
今後の再発防止策と専門家への相談先
噛傷事故が起きた後は、「原因の分析」「環境とルールの見直し」「専門家への相談」の3点を早急に行うことが再発防止の鍵になります。
まず、いつ・どこで・誰が関わり・犬と赤ちゃんが何をしていたかをできる限り具体的に振り返り、危険な組み合わせ(抱っこ中、食事中、寝ている犬を触った時など)を洗い出します。そのうえで、空間の区切り方、見守り体制、遊び方のルールを家族全員で書き出して共有し、守れない状況を作らないようにします。
噛む力が強い、繰り返し唸る・威嚇する、家族でも制御が難しい場合は、自己判断ではなく専門家の評価が必須です。主な相談先の例は次のとおりです。
| 相談先 | 主な役割 |
|---|---|
| かかりつけ動物病院 | 痛み・病気など医学的原因の確認、行動診療科の紹介 |
| 行動診療を行う獣医師 | 攻撃行動の専門的評価、薬物療法を含む治療計画 |
| プロのドッグトレーナー・ドッグビヘイビアリスト | 生活環境の見直し、具体的なトレーニングプラン |
| 自治体・保健所 | 事故後の相談窓口、今後の飼育指導 |
自宅での様子が分かる動画や、事故時の状況メモを持参すると、より適切なアドバイスを受けやすくなります。「もう二度と起こさないために何ができるか」を家族と専門家で一緒に考える姿勢が、赤ちゃんと犬の安全な共生につながります。
赤ちゃんと犬が安心して暮らすために大人が守ること

赤ちゃんと犬が安心して暮らすためには、「大人がすべてを管理する」ことが大前提です。犬も赤ちゃんも悪くなく、環境とルール作りを担うのは周りの大人です。
まず、【絶対に二人きりにしない・放置しない】ことを家族全員の共通ルールにします。短時間の家事やトイレの間も、必ずどちらかをサークルや別室に移動させます。
次に、【犬と子どもの双方に “して良いこと・いけないこと” を一貫して教える】ことが重要です。犬には甘噛みや飛びつきを許さない、子どもには追いかけ回さない・耳やしっぽを引っ張らないなど、具体的な行動で伝えます。
さらに、しつけ・環境・健康管理・見守りを「セット」で考えることもポイントです。しつけだけ、環境だけでは安全は保てません。危険をゼロにはできませんが、大人が主体的にコントロールすることで、事故の可能性を大きく減らし、赤ちゃんと犬の「安心できる同居生活」に近づけます。
赤ちゃんと犬は、正しい知識と準備があれば安心して暮らすことができます。本記事で紹介したように、「どんな犬でも噛む可能性がある」ことを前提に、空間づくり・しつけ・健康管理・見守り体制を整えることが重要です。噛みそうな前兆サインを知り、絶対に二人きりにしない、無理に触れ合わせないといった基本を徹底することで、多くの事故は未然に防げます。不安がある場合は早めに獣医師やドッグトレーナーへ相談し、家族全員が安心して過ごせる環境づくりを心がけましょう。
