
「1匹だけでお留守番させるのがかわいそう」「もう1匹いればもっと楽しくなるかも」。こう感じて多頭飼いを考える飼い主さんは少なくありません。一方で、犬同士の相性やケンカ、先住犬のストレス、費用や手間の増加など、不安も多いテーマです。
この記事では、犬の多頭飼いを始める前に知っておきたいポイントや、相性の見極め方、日常管理の注意点、ストレスサインへの対処法までをまとめます。現在1匹目と暮らしている方も、これから2匹目以降を迎えたい方も、判断材料として参考にしてください。
犬の多頭飼いを始める前に知っておきたいこと

犬の多頭飼いはにぎやかで楽しい一方で、1頭飼いとは違う負担やリスクも生まれます。始めてから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、向き・不向きやお金、住まいの条件を冷静に確認しておきましょう。
多頭飼いに向いている人・向いていない人の特徴
最初に考えたいのが「自分と今の愛犬は多頭飼いに向いているか」という点です。実際、Yahoo!知恵袋には、もともと他犬が苦手な先住犬のもとへ子犬を迎えた結果、
「子犬(3ヶ月)が追いかけると先住犬(3歳♀)が逃げてしまい、なかなか仲良くなりません。(中略)先住犬は前より元気がなく、昨日はストレスからなのか吐いてしまいました。」
という相談も寄せられています。投稿では、飼い主が「一匹では可哀想だから」という理由で迎えたものの、先住犬が強いストレスを抱えてしまい、迎え入れ自体を後悔している様子がうかがえます。「犬同士が勝手に仲良くなって楽しく過ごしてくれる」というイメージだけで決めると、うまくいかない場合があると分かります。
多頭飼いに向いている人は、次のような傾向があります。
- 犬に十分に向き合う時間がある:仕事や家事の合間に、トレーニングや散歩、健康チェックの時間を2頭分・3頭分確保できる
- 行動や健康の変化に気づきやすい:頭数が増えると「誰がどのタイミングでおかしいか」を見抜く力が必要
- しつけやルール作りに一貫性を持てる:複数の犬に対して、食事・おもちゃ・人への飛びつきなどを同じルールで扱い続けられる
- トラブル時にも落ち着いて動ける:ケンカや体調不良などが同時に起きたときでも、パニックになりにくい
逆に、次のような場合は多頭飼いを慎重に考えたほうが安心です。
- 先住犬が他犬と距離を取りたがる:散歩中に犬を避ける、ドッグランが苦手といった場合、新入り犬の存在自体が強いストレスになるおそれがある
- 1頭の世話でもギリギリの状態:散歩が面倒に感じる、ケアが後回しになりがちといった状況では、頭数を増やすと負担が一気に重くなる
- 旅行や外出を頻繁に楽しみたいライフスタイル:ペットホテル料金も頭数分かかり、気軽な旅行が難しくなることが多い
何より大切なのは、「今の先住犬の性格や健康状態」を第一に考える姿勢です。先ほどの相談のように、先住犬がストレスで体調を崩すケースもあります。「先住犬のための多頭飼い」なのか、「自分の理想のための多頭飼い」なのかを、一度立ち止まって考えてみる必要があります。
経済的な負担を事前にシミュレーションする
多頭飼いで現実的に大きく変わるのがお金の部分です。猫の多頭飼育を解説したアイペット損保のコラムでは、猫を迎える前に
「複数の猫たちが暮らすための十分なスペースはあるか? もしも猫が病気やケガをしたときにも対応できる経済的な余裕があるか? …など、現実的に多頭飼いが可能かどうかを改めて考えた上で、迎える準備をしましょう。」
と説明されています。考え方は犬にもそのまま当てはめられます。特に犬は体格が大きく、食費や医療費がかさみやすい点を押さえておきましょう。
経済的なシミュレーションでは、「今1頭にかかっている年間費用 × 頭数」でざっくり見積もるだけでなく、次の項目ごとに見ておくと現実に近づきます。
- フード・おやつ代:体重が増えればフード量も増え、中型犬・大型犬では負担が比例以上になる場合もある
- ワクチン・フィラリア・ノミ・マダニ予防:予防医療は1頭ごとに必要。年1回のワクチンとシーズン中の予防薬が頭数分かかる
- 病気・ケガの治療費:高額治療が複数頭に同時に必要になる可能性もある。「もしもの医療費のための積立」を用意できるかがポイント
- トリミング・グルーミング:トリミング犬種は、1頭5,000〜1万円前後のカット代が2頭・3頭になると、毎月の固定費が一気に増える
- ペット保険:加入する場合、保険料も頭数分。多頭割引がある会社もあるが、それでも支出は増える
アイペット損保の猫の多頭飼い記事ではトイレについて、
「多頭飼いの場合、理想的なトイレの台数は、『猫の数+1個』です。」
と紹介されています。犬でも、ケージ・ベッド・トイレシート・ハーネス・首輪・リード・食器などは「頭数分+余裕分」のグッズ費用が必要です。初期費用だけでなく、消耗品のランニングコストも増える点を忘れないようにしましょう。
ここまで洗い出したうえで、
- 今の収入と生活費で、毎月いくらまで犬関連費に回せるか
- 突然の入院や大きな手術が2頭同時に発生した場合、どう工面するか
を具体的に考えておくと、「かわいいから」で決めるリスクを減らせます。若い犬はこれから10年以上生きる可能性があります。長期的な家計の見通しとセットで検討する姿勢が大切です。
住環境・賃貸契約の確認も忘れずに
経済面と同じくらい重要なのが住まいとの相性です。アイペット損保の猫の多頭飼いコラムでは、環境づくりについて
「複数の猫たちが暮らすための十分なスペースはあるか? …現実的に多頭飼いが可能かどうかを改めて考えた上で、迎える準備をしましょう。」
と強調されています。犬は猫以上に「広さ」「動線」「騒音」への配慮が必要です。
賃貸住宅の場合、不動産情報サイトのペット可物件を見ると、「小型犬1匹まで」「犬は2頭まで」「犬猫合わせて2匹まで」といった頭数制限のある物件が多く見られます。ペット可だからといって、無制限に飼えるわけではありません。
確認しておきたいポイントは次のとおりです。
- 賃貸契約書のペット条項
・飼育可能な動物の種類(犬種・体重制限など)
・可能な頭数
・多頭飼育に関する特約(要許可・追加敷金・退去時精算の条件など)の有無 - 近隣への音・においの影響
・吠えやすい犬同士だと、鳴き声が倍以上に感じられることがある
・ベランダや共用廊下でのにおい・毛の飛散など、クレームの原因になりやすい点をどう防ぐか - 屋内のスペースと間取り
・ケージやクレートを頭数分置いても、人の生活スペースに余裕があるか
・犬同士が距離を取りたいときに逃げ込める場所(別室・仕切り)を用意できるか
日本は災害が多い国であり、「災害時に複数頭を連れて避難できるか」という視点も欠かせません。環境省のガイドラインでは、災害時にペットと一緒に避難する「同行避難」を推奨しています。ただし実際の避難所運営では、
- 受け入れ可能な頭数に制限がある
- ケージやキャリー、クレートの持参が必須
- ペットスペースが屋外や駐車場の一角に限られる
といった状況も想定されます。多頭飼いの場合は、
- 頭数分のクレートを事前に用意しておけるか
- 車での避難が必要になったとき、全頭を安全に乗せられるか
までイメージしておくと安心です。
このように、多頭飼いは「にぎやかで楽しそう」というイメージだけでは決められません。性格の相性・時間・お金・住まい・災害時の動き方まで、一つずつ条件を確認することが出発点になります。丁寧に整理しておくことで、後の相性トラブルや経済的な行き詰まりを防ぎ、犬たち全員にとって無理のない暮らし方を選びやすくなります。
犬の多頭飼いのメリット・デメリット

多頭飼いのメリット:社会性・癒し・賑やかさ
多頭飼いには負担もありますが、単頭飼いでは得られない良さも多くあります。住宅情報サイト「アットホーム」が行ったアンケート(犬の多頭飼い経験がある飼い主119人対象)では、「多頭飼いをしてよかったと思うか」という質問に対し、約8割が「よかった」と回答しています(※アットホーム「飼い主に聞いた!犬の多頭飼いって大変?メリット・デメリットや飼う際の注意点」2024年12月23日更新)。どんな点を「よかった」と感じているのか、具体的に見ていきます。
犬同士で社会性を学びやすい
アットホームのアンケートでは、多頭飼いのメリットとして「犬の社会性を学べる」という回答が挙がっています。1頭だけだと人との関わりが中心になりがちですが、複数頭いると、
- 遊びの誘い方・断り方
- 甘噛みの強さ加減
- 距離感の取り方や優先順位
といった「犬同士のマナー」を、日常生活の中で学ぶ機会が増えます。先住犬が落ち着いた性格であれば、新入り犬の良い“先生役”にもなりやすく、散歩中の犬に対する過剰反応が落ち着いたという声もあります。
ただし、社会性が自動的に伸びるわけではありません。性格の相性や先住犬のしつけの状態によって差が出ます。アットホームの記事でも「犬の社会性を学べる」というメリットと同時に、「犬同士の相性や性格が合わない」というデメリットも挙がっています。どの犬を組み合わせるかが重要と分かります。
遊び相手ができて運動量が増える
多頭飼いでは、犬同士が追いかけっこをしたり、引っ張りっこをしたりと、自然と運動量が増えやすくなります。アットホームのアンケートでも、「犬たちが楽しそう」という声がメリットとして紹介されています。室内でもよく遊ぶ組み合わせだと、留守番中の退屈しのぎにもつながります。
もちろん、運動量をすべて犬任せにするわけにはいきません。散歩や遊びに付き合う時間は必要ですが、「常に飼い主が遊び相手になる」負担が軽くなる場合もあります。特に若くて体力のある犬同士では、エネルギーの発散に役立ちやすいと言えます。
飼い主にとっての癒し・賑やかさが増える
アットホームのアンケートでは、多頭飼いのメリットとして「にぎやかで楽しい」「癒される・かわいい」「それぞれ個性がありおもしろい」といった回答が目立ちます。性格も見た目も違う犬たちがそれぞれのペースで暮らす様子を見ると、日々の癒しや笑いが増えやすくなります。
1頭が甘えに来ているときに、もう1頭がヤキモチを焼いて割り込んでくるような場面も多頭飼いならではです。「それぞれに違うかわいさがある」と感じる飼い主は多く、この「賑やかさ」や「癒し」の積み重ねが、前述の「約8割が多頭飼いしてよかった」という結果につながっていると考えられます。
多頭飼いのデメリット:費用・手間・トラブルリスク
アットホームのアンケートでは、「散歩をするとき」「お金がかかる」「世話がかかる」「犬同士の相性や性格が合わない」「犬同士のトラブル」など、現実的な大変さも多数挙がっています。多頭飼いを検討する際は、この負担を具体的にイメージしておくことが欠かせません。
散歩や日々の世話にかかる手間
アットホームの調査では、多頭飼いのデメリットとして最初に「散歩をするとき」が取り上げられています。1人で複数頭を連れて歩くと、
- 引っ張る方向がバラバラになる
- 片方がトイレをしている間に、もう片方が別方向へ行きたがる
- 他の犬に興奮しやすい犬がいると、制御が難しくなる
といった場面が増えます。体格差が大きい組み合わせでは、さらに慎重なコントロールが必要です。
日々のケア(ごはん・ブラッシング・爪切り・トイレ掃除・病院通いなど)も頭数分に増えます。「世話がかかる」という回答のとおり、単純に倍以上の手間になることも珍しくありません。仕事や育児との両立を考えたうえで、十分な時間を割けるか確認しておく必要があります。
医療費・フード代などの経済的負担
アットホームの記事では、デメリットの一つとして「お金がかかる」が明記されています。多頭飼いになると、
- フード・おやつ
- ワクチン・フィラリア予防・ノミダニ予防
- 健康診断や治療費
- トリミング費用
などが、それぞれ頭数分必要です。特に医療費は、同じ環境で暮らすことで同時に体調を崩す可能性もあります。急な出費が一度に重なるケースも想定しておきたいところです。
多頭飼いをきっかけに、広めの住居への引っ越しや、クレート・ベッド・サークルの追加購入が必要になることもあります。アットホームのアンケートでは、「もう1匹欲しくなった」「保護犬を引き取った」など、出会いから多頭飼いが始まるケースも多く紹介されています。迎え入れのタイミングで、家計全体を改めて見直しておきましょう。
犬同士のトラブル・問題行動の連鎖
アットホームの調査結果では、「犬同士の相性や性格が合わない」「犬同士のトラブル」といったデメリットも目立ちます。暮らしの中では、
- ごはんやおもちゃをめぐるケンカ
- 飼い主の取り合いからくるマウンティングや威嚇
- 1頭が吠えやすいと、もう1頭もつられて吠える
など、犬同士の関係性から生じる問題も多く見られます。「吠え」「噛み」などの行動は、1頭が覚えるともう1頭に広がりやすく、問題行動の連鎖が起こることもあります。
相性があまり良くない組み合わせでは、常に目が離せない状態になり、ストレスから体調を崩す犬も出てくるかもしれません。そのためアットホームの記事でも、「犬同士の相性や性格が合わない」というリスクを前提に、ケージや部屋を分けるなど、距離を調整できる環境作りが重要とされています。
実際に多頭飼いをした飼い主の本音(アンケート結果)
アットホームのアンケートでは、多頭飼いの飼い主119人に対して、メリット・デメリットの両面について質問しています。「犬を多頭飼いしてよかった?」という問いには約8割が「よかった」と答えていますが、一方で「散歩をするとき」「お金がかかる」「世話がかかる」「犬同士のトラブル」など、現実的な負担を挙げる声も多くありました(※アットホーム前掲記事)。
つまり多頭飼いは、「楽しい」「癒される」と感じる場面が確かに多いものの、「時間・手間・費用・相性トラブル」といった負担も同時に背負う選択になります。アンケート結果から見えてくるのは、「大変なこともあるが、それでも総合的には“よかった”と感じている飼い主が多い」という姿です。その背景には、環境づくりやしつけ、犬の組み合わせなどを工夫している日々の努力があると考えられます。
これから多頭飼いを検討する場合は、アットホームのような一次情報に出てくる飼い主の声を参考に、自分の生活スタイル・経済状況・犬たちの性格を照らし合わせてみましょう。「自分にとって本当に続けられるか」を冷静に判断していく姿勢が欠かせません。
犬同士の相性を見極めるポイント

多頭飼いでは、「どんな犬同士を組み合わせるか」で日々の暮らしやトラブルの起こりやすさが大きく変わると言われます。朝日新聞のペットサイト「sippo」でも、犬の多頭飼育について「体格が近い犬同士のほうが事故を防げる」「性別と年齢の組み合わせを考えることが大切」といった趣旨が紹介されています(※sippo 多頭飼育関連記事より)。
ここでは、特に影響が大きい「性別」「年齢」「体格・犬種の気質」の3つのポイントを整理します。
性別の組み合わせ別の注意点(オス×オス・メス×メス・オス×メス)
犬同士の相性を考えるうえで、性別は基本的な判断材料になります。sippoをはじめ、獣医師やトレーナーの解説では、「オス同士は闘争本能から喧嘩のリスクが高くなりやすい」と一貫して注意喚起されています(※sippo 多頭飼育関連記事より)。
オス×オス
- 成熟したオス同士は、縄張り意識や競争心から衝突しやすい組み合わせとされる
- おもちゃや飼い主の注意、寝床などをめぐって、些細なことから本気の喧嘩になる場合がある
- 去勢手術で攻撃性が和らぐ場合もあるが、性格や学習歴による差が大きく、「去勢すれば必ず安心」とは言えない(※日本獣医師会などの去勢・不妊に関する解説より)
メス×メス
- 「メス同士は穏やか」というイメージもあるが、必ずしもそうとは限らないと専門家は指摘している
- 繁殖期のホルモンバランスや家庭内での順位意識がからみ、激しい争いになる事例も報告されている
- 特に年齢が近いメス同士だと、上下関係がはっきりするまで小競り合いが続くことがある
オス×メス
- 実務的には、もっともトラブルが少ない組み合わせとされることが多い。sippoでも「性格が合えば、オス×メスは比較的落ち着きやすい」と紹介されている(※sippo 同上)
- ただし、片方・もしくは両方が未避妊・未去勢の場合、望まない妊娠を防ぐ必要がある
- 日本獣医師会は、望まない繁殖を防ぐためにも不妊・去勢手術を推奨している(※日本獣医師会『家庭動物に適切な飼養管理を行うために』)
「オスだから必ずこう」「メスだから必ずこう」と決めつけることはできません。性別はあくまで一般的な傾向として捉え、同居中の先住犬の性格を第一に考えることが大切です。そのうえで、「オス×オスは衝突リスクが高め」「オス×メスは比較的落ち着きやすい」という傾向を目安として覚えておくと、2頭目を選ぶときの参考になります。
年齢差による相性の違い(子犬×成犬・成犬同士・シニア犬×子犬)
年齢の組み合わせも、多頭飼いの暮らしやすさに直結する要素です。ドッググッズブランド「iDog & iCat」の多頭飼い記事でも、「年齢差を意識して迎えること」「シニア犬に子犬を組み合わせる場合の負担」について触れられています(※iDog 多頭飼い関連記事より)。
子犬×成犬
- 一見バランスが良さそうに見えるが、子犬があまりに元気すぎると、成犬が強いストレスを抱える場合がある
- iDogの記事では、子犬が先住犬をしつこく追いかけ回した結果、先住犬が疲労やストレスで元気をなくしたり、体調を崩したケースが紹介されている(※iDog 同上)
- 質問サイトの事例でも、「3歳の先住犬(♀)が、3カ月の子犬に追いかけ回されてストレスから嘔吐した」という相談が寄せられている(※Yahoo!知恵袋『犬の多頭飼いについて』質問より)
成犬同士
- お互いの生活リズムや遊び方が近く、うまくいけば一緒に遊び相手になり、落ち着いて過ごせる組み合わせになりやすい
- 年齢が近いほど「どちらが上か」をめぐる小さな衝突が起こることもある。特に同じ性別・似た体格だと、最初の数カ月は様子をよく観察したい
シニア犬×子犬
- iDogでは、「シニア犬のいる家庭に子犬を迎える場合は、シニア犬への負担をよく考えて」と強調している(※iDog 多頭飼い関連記事)
- シニア犬は関節や内臓の負担、聴力・視力の低下など、見えない部分で体力が落ちていることが多い
- そこに体力のある子犬が加わると、常に追いかけ回されて休む暇がなくなり、疲労やストレスの原因になりやすい
- 子犬の社会化にとって落ち着いた先輩犬は良い手本だが、シニア犬がそれを楽しめるかどうかは別問題。年齢差が大きいほど、「一緒に遊ぶ」のではなく、「生活空間を分ける」「子犬の接触時間を制限する」といった工夫が欠かせない
このように年齢は、「遊びのテンション」「体力」「体調」すべてに関わります。「先住犬が今どれくらい動けるか」「どんなペースで暮らしているか」を基準に考える姿勢が大切です。
体格差・犬種の気質が相性に与える影響
多頭飼い関連の記事では、sippoを含む複数の専門家監修コンテンツで、「体格が近い犬同士のほうが事故を防げる」と繰り返し述べられています(※sippo 多頭飼育関連記事より)。特に体格差が大きい組み合わせには注意が必要です。
体格差が大きい場合のリスク
- 体重差が大きいと、じゃれ合いの延長でも小さい犬には大きな怪我につながりやすい
- 大きい犬が前足で軽く押しただけでも、小型犬の骨折や関節の脱臼が起こりうると獣医師は警告している(※日本小動物獣医師会雑誌などの臨床報告より)
- 遊んでいるうちにエスカレートし、興奮した大きい犬が小さい犬の首元を咥えてしまうケースも報告されており、最悪の場合は命に関わる事故になる
- sippoでは、「遊びが激しくなりやすい犬同士や体格差が大きい組み合わせは、目を離さない・必要に応じて柵などで区切る」といった対策が紹介されている(※sippo 同上)
犬種の気質による相性
- 犬種ごとに「元の仕事」が違うため、一般的な気質にも傾向がある
- 例えば牧羊犬タイプ(ボーダー・コリーなど)は動くものを追いかける本能が強く、テリア系は獲物に対する素早さが特徴とされる
- 日本の動物行動学の専門書でも、「犬種によって活動量・興奮しやすさ・他犬への反応性に差がある」と説明されており、多頭飼いでの相性にも影響するとされる(※日本獣医畜産大学関連の行動学テキストなど)
- 超活発な犬種とのんびりした犬種を組み合わせると、一方は「もっと遊びたい」、もう一方は「ゆっくりしたい」と、日常のテンションがかみ合わないこともある
暮らし全体をイメージして選ぶ
- 体格や犬種の気質は、「今の家で安全に暮らせるか」「どれくらい運動させられるか」といった生活面とも直結する
- sippoの記事が指摘するように、「体格が近い」「活動量や気質が近い」組み合わせのほうが、事故もトラブルも起きにくい傾向がある(※sippo 同上)
- 実際には雑種や個体差もあり、「この犬種なら必ず相性が良い」とは言えない
- ただ、「先住犬と近い体格」「似た運動量・テンションの犬」を選ぶことは、多くの専門家が共通してすすめるポイントと言える
性別・年齢・体格・気質の4つは、どれも「こうでなければダメ」という絶対条件ではありません。sippoやiDog、日本獣医師会などの情報を総合すると、
- オス同士や大きな体格差、シニア犬と子犬の組み合わせはトラブルが起きやすい
- 体格と年齢が近く、活動量が似た犬同士のほうが安全に暮らしやすい
という方向性は共通しています。2頭目を迎える前に、先住犬の性格・年齢・体格をよく観察し、「この子が無理なく受け入れられそうな相手はどんなタイプか」を冷静にイメージしておくことが、多頭飼い成功への第一歩です。
多頭飼いに向いている犬種・向いていない犬種

多頭飼いでは「犬種の向き不向き」が話題になることがよくあります。ですが専門家や獣医師の情報を見ると、「あくまで傾向」であり、最終的には個体差や育て方の影響が大きいとされることが多いです。ここでは、一次情報で紹介されている代表的な犬種の傾向を整理しつつ、「犬種だけで決めつけない」ための視点も確認します。
多頭飼いに向いている犬種の特徴と具体例
不動産情報サイトathomeの多頭飼い特集では、「多頭飼いに向いている犬種」として、以下の犬種が挙げられています(※athome「飼い主に聞いた!犬の多頭飼いって大変?メリット・デメリットや飼う際の注意点」)。
- トイ・プードル
- ゴールデン・レトリーバー
- ラブラドール・レトリーバー
- チワワ
- ミニチュア・ダックスフンド など
同記事では「人懐っこい性格」「フレンドリーで協調性が高い」タイプの犬は、多頭飼いに向いていると説明されています(※athome 同上)。iDogなどのペット用品サイトでも、これらの犬種は「社交的で家族とも犬とも仲良くしやすい傾向がある」と紹介されることが多く、共通する特徴としては次のような点が挙げられます。
- 人やほかの犬が好きで、社会性を身につけやすい
- 攻撃性が低く、おおらかな性格の個体が多い
- 遊ぶことが好きで、ほかの犬との遊びを楽しめることが多い
トイ・プードルは家庭犬として改良されてきた歴史が長く、「明るく社交的で学習能力が高い」と解説されることが多い犬種です。ゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバーも、海外の動物保護団体や日本の獣医師会の資料などで、「温厚で友好的」「家庭犬として向く」と紹介されることがよくあります。他犬との同居もしやすい傾向があるとされます。
チワワやミニチュア・ダックスフンドは小型犬のため、体格面でのリスクが比較的少ない点も挙げられます。家の中で過ごす時間が長い家庭でも、一緒に遊びやすいことから、多頭飼いをしている家庭も多い犬種です。ただし、「小型犬だから必ず相性が良い」というわけではありません。神経質な個体や怖がりな個体もいるため、性格の見極めが重要になります。
多頭飼いに向いていない犬種の特徴と具体例
同じathomeの記事では、「多頭飼いには注意が必要な犬種」として、次のような犬種が挙げられています(※athome「飼い主に聞いた!犬の多頭飼いって大変?メリット・デメリットや飼う際の注意点」)。
- 柴犬
- ヨークシャー・テリア
- ミニチュア・シュナウザー
- ジャック・ラッセル・テリア など
この記事では、これらの犬種について、
縄張り意識が強かったり、独占欲が強い傾向のある犬種は、多頭飼いに不向きな場合がある(※athome 同上)
と説明しています。iDogの解説ページなどでも、テリア種や和犬の一部について、次のような傾向が指摘されることが多いです。
- 自立心・警戒心が強く、「自分のテリトリー」を守ろうとしやすい
- 飼い主への独占欲が強く、他の犬をライバルとみなすことがある
- 狩猟本能や運動欲求が強く、興奮しやすい個体も少なくない
柴犬は日本の在来犬の代表で、日本犬保存会などの資料でも「自立心が強く、頑固な一面がある」と紹介されることが多い犬種です。そのため多頭飼い自体が不可能というわけではありませんが、「先住犬との相性を慎重に見る必要がある」「子犬の頃からの社会化がより重要」といった注意書きが添えられることがよくあります。
ヨークシャー・テリアやジャック・ラッセル・テリア、ミニチュア・シュナウザーなどのテリア系は、元々ネズミや小動物の狩猟犬として活躍してきました。動物行動学の文献では「好奇心旺盛で活発だが、自己主張が強く気が強い個体も多い」と説明されています。そのため他犬への対抗心が強く出る個体もおり、多頭飼いでは慎重な管理が必要とされます。
犬種より個体差が重要な理由
ここまでの情報から、「多頭飼いに向く犬種/向かない犬種」は、あくまで平均的な傾向に過ぎないことが分かります。athomeの記事でも犬種リストを紹介しつつ、次のような主旨の注意が添えられています。
犬種による傾向はあるものの、実際には個体差が大きい。多頭飼いに向くかどうかは、犬種だけで判断せず、その子の性格やこれまでの環境も含めて考えることが大切(※athome前掲記事 要旨)
iDogや日本獣医師会の情報でも、「社会化の時期にどのような経験をしたか」「飼い主との信頼関係がどの程度築けているか」といった要素が、犬同士の相性に大きく影響すると解説されています。具体的には、
- フレンドリーとされる犬種でも、怖がりで他犬が苦手な個体はいる
- 警戒心が強いとされる犬種でも、子犬期から上手に社会化され、穏やかな性格に育つケースも多い
- 先住犬側が犬付き合いに疲れている場合、「多頭飼い向きの犬種」を迎えてもうまくいかないことがある
といったことが実際に起こります。
多頭飼いを考えるときは、「この犬種なら大丈夫」といった発想で決めてしまわないほうが安全です。
- 先住犬の性格(他犬への態度、縄張り意識、遊び方)
- 迎えたい犬の性格(保護団体やブリーダーから詳しく聞く)
- 実際に会わせたときの反応(いきなり同居させず段階的に慣らす)
といった点を総合して判断することが重要です。犬種の情報はあくまで「参考レベルの目安」として活用し、「目の前の2頭(あるいはそれ以上)が、お互いにストレスなく暮らせるかどうか」を丁寧に見極めていく姿勢が、多頭飼い成功の大きなポイントになります。
先住犬と新しい犬の初顔合わせ・慣らし方のステップ

お迎え前の準備:健康診断・ワクチン・去勢避妊の確認
2頭を直接会わせる前に、まずは健康面のチェックと予防対策を整えておきましょう。特に子犬を迎える場合は、ワクチン接種のスケジュールに注意が必要です。
日本で一般的に行われている混合ワクチンは、生後2〜3回の接種が基本とされます。「生後約60日・90日・120日の3回」というスケジュールを案内している動物病院も多く見られます。日本小動物獣医師会や多くの動物病院でも、複数回接種で免疫をしっかりつけてから、ほかの犬と接触させるよう推奨しています。
新しく迎える子犬については、必ず次の点を確認しましょう。
- 混合ワクチンが何回済んでいるか
- 最終接種日からどれくらい経っているか
基本的には「ワクチン3回が完了し、免疫が安定するまで」は先住犬との直接の触れ合いを控えたほうが安全とされます。免疫が不十分な時期に先住犬と接触すると、先住犬が保菌しているウイルスや寄生虫から子犬が感染するリスクがあるためです。
また、先住犬・新入り犬ともに、
- 事前の健康診断(持病・感染症の有無の確認)
- ノミ・ダニ予防、内部寄生虫(回虫など)の検査と駆除
- 必要に応じて、狂犬病予防注射やフィラリア予防の状況確認
を行っておくと安心です。先住犬に持病がある場合は、生活スペースの分け方や対面のタイミングについて、獣医師に相談しておくとトラブルを減らせます。
去勢・避妊についても、多頭飼いの相性やトラブルに影響しやすいポイントです。日本獣医師会や各地の動物愛護センターは、繁殖を予定していない場合の不妊手術を推奨しています。マーキングの軽減や発情期のストレス、望まない妊娠の防止に役立つと説明されており、性ホルモンによる攻撃性やイライラがやわらぐことで、犬同士の衝突が起こりにくくなるケースもあります。
初対面は中立の場所でケージ越しに行う
多頭飼いでよく問題になるのが、「縄張り意識」からくる先住犬のストレスです。見知らぬ犬をいきなり自分のテリトリー(家の中)に連れ込まれると、先住犬が強い不安や警戒を感じ、吠えたり威嚇したりしやすくなります。
そのため成犬同士の場合は、最初の顔合わせを先住犬の縄張りから離れた「中立の場所」で行う方法が推奨されます。海外の動物行動学の専門家や多くのトレーナーも同様の方法をすすめています。例えば、
- 自宅近くの静かな公園
- 車通りや人の少ない散歩コース
など、どちらの犬にとっても「特別な所有意識のない場所」を選びます。
初対面の手順は次の通りです。
- それぞれリードをつけ、十分な距離(数メートル以上)を保って歩き出す
- 互いの様子を見ながら、落ち着いていれば少しずつ距離を縮める
- 犬が自ら近づきたそうな素振りを見せたら、短時間だけにおいを嗅がせる
- 緊張や威嚇のサイン(うなり声、硬直、じっとにらむなど)が出たら、すぐに距離を取り直す
「一気に仲良くさせようとしない」ことが大切です。
室内での初対面は、いきなり同じ空間に放さず、「ケージ越し」に行うと安全です。ケージやサークルを挟むことで、互いに姿やにおいを確認しつつ、直接の接触によるケンカや事故を防げます。特に体格差が大きい組み合わせや、どちらかが子犬の場合には、ケージ越しの対面から始めたほうが安心です。
段階的に距離を縮める4ステップ
先住犬と新しい犬を慣れさせる一般的な流れとして、動物行動学の考え方に基づいた「段階的ステップ」がよく紹介されています。
ステップ1:別室で環境に慣れさせる
新入りの犬を迎えた直後は、まず先住犬とは別の部屋を用意し、新入りが「家」という環境に慣れる時間を確保します。見知らぬ場所・におい・音に囲まれた状態で、さらに先住犬とも対面させると、新入りのストレスが強くなり、怖がりやすくなります。
この間、先住犬はできるだけいつも通りの生活リズムを維持し、散歩や遊びの時間も普段どおり、あるいは少し増やしてあげると安心感が高まりやすくなります。
ステップ2:においのついたタオルを交換する
互いを直接会わせる前に、「におい」に慣れさせておきます。犬にとって嗅覚から得る情報は大きく、動物行動の研究でも、においを通じた情報交換が社会的関係づくりに欠かせないとされています。
それぞれの犬の体を軽くなでたタオルやブランケットを用意し、
- 先住犬のにおいがついたものを新入り犬の部屋に置く
- 新入り犬のにおいがついたものを先住犬の生活スペースに置く
という形で、お互いのにおいにゆっくり慣れてもらいます。最初は興味深そうに嗅いだり、少し警戒したりしますが、数日かけて落ち着いてくるケースが多いです。
ステップ3:ケージ越しに対面させる
においの交換で大きなストレス反応(吠え続ける、食欲が落ちる、震えが止まらないなど)が見られなければ、「ケージ越しの対面」に進みます。
- 新入り犬を丈夫なケージやサークルに入れ、先住犬を部屋に入れる
- 互いの表情やしっぽの動き、体のこわばり具合を観察する
- 落ち着いていられる短時間(数分程度)から始め、少しずつ時間を延ばす
吠え続けたり威嚇が強い場合は、距離を広げたり、一部を布で目隠しして刺激を減らすなどの工夫も有効です。
ステップ4:ケージなしで短時間接触し、徐々に時間を延長する
ケージ越しでもお互いに落ち着いて過ごせるようになったら、同じ空間での接触に進みます。このときは、最初は必ず「短時間」かつ「人がしっかり見守れる状態」で行うことが重要です。
- どちらの犬にもリードをつけ、人がすぐに引き離せるようにする
- おもちゃやフードボウルなど、「取り合いの原因になりそうなもの」は片づけておく
- 最初は数分程度で切り上げ、トラブルがなくても早めに終わらせる
様子を見ながら、問題がなければ接触時間を少しずつ延ばしていきます。最終的にはリードを外して自由に過ごす時間を増やす流れが、多くの専門家から推奨されています。
途中でどちらかが強いストレスサイン(うなり声、歯をむく、しっぽを強く巻き込む、逃げ場を探してうろつくなど)を出した場合は、ステップを一段階戻してやり直します。時間をかけて「お互いが安心できる距離感」を探る姿勢が、多頭飼い成功の近道です。
子犬を迎える場合と成犬を迎える場合の違い
子犬を迎える場合と成犬を迎える場合では、健康面・行動面で注意するポイントが少し異なります。
子犬を迎える場合
前述のとおり、「ワクチン3回完了まで直接触れ合わせない」ことが感染症予防の観点から重視されます。生後60日・90日・120日前後で行われるワクチンが終わるまでは、
- 別室で環境に慣れさせる
- においの交換を中心に進める
- どうしても同じ空間にいる必要がある場合は、ケージやサークル越しにとどめる
といった配慮が求められます。
ワクチン完了後も、子犬は体力や自己コントロールが未熟です。成犬にしつこくじゃれついて嫌がられることもあります。先住犬が逃げ場を確保できるよう、別室や高い場所(ソファ、クレートなど)を用意します。子犬側の遊びがエスカレートしたら、人が介入してクールダウンさせましょう。
成犬を迎える場合
健康面ではワクチン歴・去勢避妊の有無・既往症などを動物病院で事前に確認します。行動面では、「すでに性格やクセが固まっている」点に注意が必要です。保護犬を迎える場合などは、保護団体や元の飼い主から、
- 他犬に対して友好的か、警戒心が強いか
- ごはんやおもちゃへの執着の強さ
- 過去に咬みつきやケンカのトラブルがあったか
といった情報をできるだけ詳しく聞いておきます。
成犬同士の初対面は、先住犬の縄張り内ではなく、中立の場所(屋外など)での顔合わせが推奨されます。いきなり家の中で鉢合わせさせると、先住犬が「自分の場所を取られる」と感じやすく、相性以前に縄張り争いのような反応が出やすくなるためです。
子犬・成犬どちらの場合でも共通するのは、「仲良くさせること」を急がず、「お互いが安心していられる距離を見つけること」をゴールにする姿勢です。時間をかけてステップを踏むほど、長期的にはトラブルの少ない穏やかな関係を築きやすくなります。
多頭飼いを成功させる日常管理の注意点

複数の犬と暮らすときは、「仲良くさせるコツ」よりも、まず毎日の生活ルールをどう整えるかが大切です。トラブルの多くは、相性そのものよりも、環境や管理の仕方が原因になっていることが多くあります。
ケージ・トイレ・食器は頭数分用意する
同じ家で暮らしていても、犬それぞれに「安心できる自分の場所」と「自分の持ち物」が必要です。ケージ(クレート)・ベッド・ごはん皿・水皿は、基本的に犬の頭数分そろえておきます。
トイレについては、猫の多頭飼いでは「猫の数+1個」が理想とされています※。これは「自分以外の子が使ったトイレだと落ち着かない猫が多い」「汚れていると排泄を我慢してしまう」ことが理由として挙げられています。
「多頭飼いの場合、理想的なトイレの台数は、『猫の数+1個』です。…自分以外の猫が使って汚れたトイレで排泄ができない猫もたくさんいます。」(ベネッセ/ねこのきもちWEB MAGAZINE)※
犬と猫では習性が違いますが、「頭数分以上トイレがあると安心しやすい」「汚れたトイレはストレスや失敗の原因になる」という考え方は犬にも参考になります。特に、
- 片方がトイレの上書きを嫌がる
- 片方がトイレを独占しようとする
- トイレ前後にケンカになりやすい
といった様子がある場合は、頭数+1個程度を目安にトイレを増やし、離れた場所に置いてあげると安心して排泄しやすくなります。
ケージやベッドも、1つを共有させると「場所取り」からケンカに発展しがちです。基本は1頭に1スペースを確保し、気分や季節で自分から交換して使うのは自由、くらいの感覚で見守るとよいでしょう。
食事は個別に与え、健康状態を把握する
多頭飼いでは、ごはんの時間が最もトラブルになりやすい場面です。早食いの子がゆっくり派の子の分まで食べてしまったり、ごはんへの執着が強い犬が唸る・噛むといった行動につながったりします。
年齢や体重、持病などによって必要なカロリーやフードの種類は変わります。そのため、食事は必ず個別に管理することが基本です。日本の動物病院でも、「多頭飼育では犬ごとにフード量・種類を分けて与え、食べ終わるまで目を離さないこと」が勧められることが多くあります。
食事の管理で意識しておきたいポイントは次のとおりです。
- 食器は頭数分をはっきり分け、それぞれ決まった位置に置く
- お互いの器に顔を入れないよう、ある程度距離を空けて配置する
- 緊張が強い組み合わせの場合は、別の部屋やケージ内で食べさせる
- 食べ終わった器はすぐに下げ、「器を守る行動」が出ないようにする
誰がどれくらい食べたかが分からない状態だと、体調不良のサインを見落としやすくなります。「今日は半分しか食べなかった」「なぜか急に食欲が増えた」といった小さな変化から病気が見つかることもあります。1頭ずつの食欲や食べ方を毎日チェックする習慣が重要です。
しつけは別々に行い、先住犬を優先する
多頭飼いだと「まとめて教えてしまいたい」と感じやすいものの、しつけやトレーニングは1対1で行うほうが覚えやすく、混乱しにくいとされています。動物行動学の分野でも、犬は「自分に向けられている指示」と「他の犬に向けられている指示」を混同しやすいと指摘されています。個別トレーニングが推奨される理由です。
- 最初は別々の部屋やケージで、1頭ずつ落ち着いた状態で練習する
- 基本的なコマンド(おすわり・まて・おいでなど)が入ってから、少しずつ一緒の場面で練習する
という順番を意識すると、教えやすくなります。
多頭飼育に関する相談では、「先住犬の元気がなくなった」「新入りのほうばかりかまってしまった」という声も多く見られます。Q&Aサイトでも、「1匹ではかわいそうだと思い2匹目を迎えたが、先住犬の元気がなくなり、ストレスからか吐いてしまった」という相談が寄せられています※。
「先住犬は元々散歩中など他の犬と挨拶や仲良くできたことがありません。…先住犬は前より元気がなく、昨日はストレスからなのか吐いてしまいました。」(Yahoo!知恵袋:犬の多頭飼いについての相談)※
こうしたストレスを減らすには、日常の優先順位は先住犬を基本にすることがよく勧められます。
- ごはんを出す順番
- 散歩でリードをつける順番
- 帰宅時に声をかける順番
などで先住犬を先にし、「前からいるあなたが一番安心していい存在だよ」というメッセージを送り続けます。新入りの犬への愛情を控える必要はありませんが、先住犬の安心感を最優先で守る意識を持っておきたいところです。
散歩・遊び・スキンシップを公平に確保する
多頭飼いでも、運動や遊び、スキンシップの時間が自動的に頭数割りになるわけではありません。むしろ、1頭ずつと向き合う「個別の時間」を意識して作ることが、関係づくりには欠かせません。
散歩は、慣れるまではそれぞれ別々に行く、あるいは時間帯をずらす方法も有効です。特に、
- 片方が引っ張りやすい
- 片方が他の犬や人を怖がる
- 体格差が大きい
といった場合、いきなり2頭引きで歩くと、どちらかが我慢するか、一方のペースに無理に合わせることになります。まずは1対1で落ち着いて歩く練習をし、そのうえで少しずつ一緒の散歩時間を増やしていくと安全です。
家の中での遊びやスキンシップでも、「先住犬ばかり」「子犬ばかり」にならないよう、できるだけ公平感を意識します。
- おもちゃ遊びは投げる順番や引っ張りっこの相手を、それぞれに回していく
- 片方と遊んでいるときにもう片方が割り込んできたら、一度落ち着かせてから順番に構う
- 1日に数分でもいいので、それぞれと2人きりでなでたり話しかけたりする時間を作る
という工夫が役立ちます。
犬同士のじゃれ合いについては、すぐに止めないほうがよい場面もあります。唸り声や追いかけっこがあっても、
- 体が交代で上になったり下になったりしている
- どちらか一方だけが嫌がっている様子ではない
- ケガをするほど激しくない
といった条件なら、社会的なコミュニケーションとしての「遊び」である可能性が高いです。人がすぐに止めてしまうと、犬同士で距離感を学ぶ機会を奪ってしまうこともあります。
逆に、「一緒に遊びなさい」と犬同士の接触を無理に強要するのはNGです。片方がソファの下やケージに逃げ込んでいるのに引っ張り出す、怖がっている側を抱えて近づけるといった行動は、かえって相手への苦手意識を強めます。犬それぞれのペースを尊重し、距離を取りたいときは距離を取れる環境づくりを心がけることが、多頭飼いを長く続けるうえで重要です。
先住犬がストレスを抱えているサインと対処法

ストレスサインを見逃さない:食欲低下・嘔吐・過剰グルーミング
新入り犬を迎えたあと、先住犬の様子が「なんとなく違う」と感じたら、早めにストレスのサインを確認しておく必要があります。
Yahoo!知恵袋には、「先月二匹目を迎え入れたところ、子犬が追いかけると先住犬が逃げてしまい、元気がなくなって昨日はストレスからなのか吐いてしまった」という相談が投稿されています。「一匹では可哀想だから」という気持ちで迎えたのに、先住犬が嘔吐するほど負担を抱え、飼い主が強い罪悪感を抱いている内容です(Yahoo!知恵袋「犬の多頭飼いについて質問です。」より要約)。多頭飼いのストレスが身体症状として表れることは十分あり得ます。
具体的なサインとして注意したいのは次のような変化です。
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食欲低下・食べるスピードの低下
普段しっかり食べる犬が、急にフードを残す、なかなか食器に近づかない場合は、強い不安や緊張を感じていることがあります。多頭飼いでは、「新入りにごはんを取られないか」という心配から、落ち着いて食べられなくなるケースも見られます。 -
嘔吐や下痢などの消化器症状
前述の相談例のように、新入り犬が来てから嘔吐が出た場合、ストレスが関わっている可能性があります。ただし、感染症や胃腸炎など病気の可能性もあります。嘔吐や下痢が続く、血が混じる、ぐったりしているといった様子があれば、必ず動物病院を受診しましょう。 -
過剰なグルーミング(毛づくろい)や体を噛む行動
しきりに同じ場所をなめ続けて毛が薄くなる、前足やしっぽを噛むなどの行動は、自分を落ち着かせようとしているサインである場合があります。猫の多頭飼いの記事では「猫たちが毎日自由気ままにストレスなく過ごすことができる空間を作ること」が強調されていますが(『猫を多頭飼いするときのコツや注意点は?』より要約)、犬でも同じで、ストレスの発散先がないと身体いじりがエスカレートしやすくなります。 -
排泄の失敗・トイレが遠のく
これまで失敗がなかった先住犬が、急に粗相をする、トイレに近づきたがらないときは、新入り犬を気にして落ち着けていない可能性があります。猫では「多頭飼いの場合、理想的なトイレの台数は『頭数+1個』」とされ、「自分以外の猫が使って汚れたトイレで排泄ができない猫もたくさんいます」と説明されています(同上記事より要約)。犬でも「誰かがうろついているトイレは落ち着かない」と感じることがあります。
こうしたサインが見られたら、「そのうち慣れるだろう」と放置しないほうが安心です。環境を見直す・新入り犬との距離を一時的に調整する・獣医師に相談するといった対応を早めに取ることが、先住犬の心身を守るうえで重要です。
先住犬のストレスが高まりやすいタイミングと原因
多頭飼いにした瞬間からずっとストレスが続くとは限りません。特に負担が大きくなりやすい「山場」がいくつかあります。そのタイミングと原因を把握しておくと、事前に備えやすくなります。
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新入り犬が来てすぐの数日〜数週間
見知らぬ犬が突然生活空間に入ってくることは、先住犬にとって大きな変化です。前出の相談のように、「子犬が追いかけてくる」「落ち着けない」という状況が続くと、「自分の家なのに安心できない」と感じてしまいます。もともと「散歩中に他の犬とうまく挨拶できないタイプ」だった犬は、多頭飼いに適応するハードルが高くなりやすい傾向があります。 -
ごはん・おもちゃ・飼い主の注目が絡む場面
食事やおやつ、お気に入りのおもちゃ、飼い主の膝の上などは、多くの犬にとって「大事な資源」です。そこに新入りが割り込んでくると、不安や嫉妬が一気に高まりやすくなります。猫の多頭飼いでは「猫の数だけトイレは必要?」「それぞれ落ち着いて排泄ができるように飼い主が注意深く観察してあげましょう」といった“資源の分け方”が重視されています(同上記事より要約)。犬でも、ごはんの器・おもちゃ・寝床などを「数+1」くらい用意し、先住犬が追い立てられずに済む配置を意識するとよいでしょう。 -
先住犬が体調を崩している・高齢になっているとき
猫の多頭飼いの記事では、先住猫がいる場合、「感染症やノミ・寄生虫など、先住猫の今の健康状態をしっかりとチェックする必要があります」とされ、体調に問題がある場合は「新しい猫を迎え入れるタイミングや生活の場所の切り分け」が必要とされています(同上記事より要約)。犬でも同様に、もともと持病がある、シニア期に入っている先住犬は、子犬のテンションについていけず、ストレスをためやすくなります。迎え入れ前後に健康状態を獣医師と共有し、負担が大きそうなら、接触時間を短く区切る・静かな休憩スペースを優先的に確保するなどの配慮が欠かせません。
こうしたタイミングでは、先住犬にとって「逃げ場」があるか、「飼い主が自分の味方だと感じられるか」が、ストレスの感じ方を大きく左右します。普段よりも意識して先住犬を優先し、安心できる時間と場所を確保することが、相性づくりの土台になります。
相性が悪い場合の現実的な対処法(別室管理・専門家相談)
多頭飼いの記事では、「いつかはきっと仲良くなる」という期待だけでなく、相性がどうしても合わないケースもあることを前提にしておく姿勢が大切になります。Yahoo!知恵袋の相談でも、「多頭飼いには向いてない性格です。それでも、一匹では可哀想だからという私の判断で二匹目を迎えいれました」と飼い主が振り返っています。その結果、先住犬が大きなストレスを抱えてしまっています(前掲質問より要約)。こうした状況に陥ったとき、取れる選択肢を冷静に知っておくと、後悔を減らしやすくなります。
- 別室管理で物理的な距離を確保する
まず検討したいのは、家の中で生活空間を分ける方法です。猫の多頭飼いの記事でも「生活の場所の切り分け」が勧められていますが(同上記事より要約)、犬でも、 - 先住犬のテリトリー(ケージ・ベッド・トイレ・食事スペース)には新入り犬を入れない
- 日中は交代でフリーにし、顔を合わせる時間を短くする
-
会わせるときはリードをつけ、人がコントロールできる状態で短時間だけにする
といった形で、「お互いの存在には慣れるが、直接の接触は最小限」という距離感を一定期間保つ方法があります。これにより、先住犬のストレスが落ち着いてくるかを見極めていきます。 -
プロのトレーナーや動物行動の専門家に相談する
飼い主だけで解決しようとすると、「かわいそう」「自分が悪い」という感情が強くなり、冷静な判断が難しくなることがあります。行動カウンセリングを行う獣医師や、複数頭飼育の経験が豊富なドッグトレーナーであれば、 - どの程度が“許容範囲のケンカ”か
- どんな場面で先住犬のストレスが跳ね上がっているか
-
家の間取りでどのようにゾーニングすればよいか
といった具体的なアドバイスをしてくれる可能性があります。早い段階で専門家の視点を入れるほど、改善できる余地も広がります。 -
最終手段としての「別の家庭で暮らす」選択
どれだけ工夫しても、先住犬の体調不良や問題行動が続く、新入り犬の安全が守れないといった場合には、どちらかを別の家庭で暮らさせる決断もあり得ます。前述の相談でも「二匹目を里親にだそうという考えが出てきて」と飼い主が悩んでいました。これは必ずしも「最低な飼い主」だからではなく、「双方にとっての幸せな暮らし」を現実的に考えた結果として選ばざるをえないケースもある、ということを示しています。
安易に手放してよいという意味ではありません。ただ、「どんな組み合わせでも必ず仲良くできる」と思い込んで追い詰められるより、「どうしても難しい相性もある。そのときにどう守るかまで含めて、多頭飼いを考える」と構えておくほうが、冷静な判断につながります。先住犬のストレスサインを早めに見つけ、小さな調整で済むうちに環境を整えていくことが、こうした苦しい選択を避けるいちばんの近道です。
多頭飼いにかかる費用の実態と経済的な備え方

多頭飼いの現実を考えるうえで、相性と同じくらい重要なのがお金の問題です。感覚ではなく、客観的なデータをもとに「いくら必要になりそうか」を把握しておくと、無理のない頭数で安心して暮らしやすくなります。
月々の維持費シミュレーション(食費・医療費・トリミング代)
まずは、1頭あたりにどれくらいお金がかかっているのかを客観的に見てみます。
不動産情報サイト「アットホーム」が行った犬の飼育費用アンケートでは、1カ月あたりの平均支出は次のように報告されています。
犬の飼育費用の平均は、1カ月あたり「7,000円~9,999円」が最も多く、全体の約3割を占めた(※フード、医療費、トリミングなどを含む総額)
参照:アットホーム「犬・猫の飼育費用に関するアンケート」
この「7,000〜9,999円」はあくまで平均です。小型犬・健康体・トリミングなしのケースならもっと安く済むかもしれません。一方で持病がある犬や大型犬・トリミング犬種では、1頭でも1万円を超えることが珍しくありません。
多頭飼いを具体的にイメージしやすいよう、以下のモデルケースで月々の維持費を試算してみます。
- 小型犬2頭(トイ・プードル+MIX)
- 体重3〜5kg程度
- ペットフードは中価格帯のドライフード+おやつ少量
- 年1回のワクチン・健康診断を月割りで計算
【2頭分の月額シミュレーション例】
-
食費
・ドライフード:1頭あたり月3,000〜4,000円程度
・おやつ・ガムなど:1頭あたり月1,000円前後
→ 2頭合計でおおよそ8,000〜10,000円 -
通常の医療費(予防接種・フィラリア・ノミダニ薬など)
アニコム損害保険の「家庭どうぶつ白書2023」では、犬の年間診療費(通院・入院・手術の総額)の平均は、保険加入犬で約83,000円とされています※1。ただしこれは病気・ケガの治療費も含む金額です。「毎年必ずかかる予防費」は別で見ておくと分かりやすくなります。一般的な目安として:
・混合ワクチン:年1回 5,000〜8,000円/頭
・狂犬病予防接種:年1回 3,000円前後/頭
・フィラリア・ノミダニ予防薬:1頭あたり年15,000〜25,000円
これらを2頭分で年額にすると、ざっくり8万円前後です。12カ月で割ると月あたり約6,500円になります。
- トリミング代
トイ・プードルやマルチーズなど、定期的なトリミングが必要な犬の場合、1回あたりの料金はおおよそ5,000〜20,000円と幅があります。日本小動物獣医師会や各種トリミングサロンの料金表を参考にすると、小型犬でフルコース(カット込み)の平均は7,000〜10,000円前後です。
・1頭:8,000円×1〜1.5カ月ごと
・2頭:8,000円×2頭=1回16,000円
1.5カ月に1回のペースなら、月あたりに「ならす」と約10,000〜11,000円がトリミングにかかる計算になります。
- その他(ペットシーツ・トイレ用品・おもちゃ・雑費など)
・ペットシーツ・トイレ用品:2頭で月1,000〜2,000円
・おもちゃ・消耗品(リード・首輪の買い替え等を月割り):1,000〜2,000円
これらを合計すると、以下のようなイメージになります。
- 食費:8,000〜10,000円
- 予防医療費(月割り):約6,500円
- トリミング(月割り):約10,000〜11,000円
- 雑費:2,000〜4,000円
▶ 2頭で月あたり 約26,500〜31,500円程度
ここには、病気やケガでの臨時の治療費、ペットホテル代、しつけ教室などのオプション費用は含まれていません。1頭増えると単純に倍以上になりやすいこと、特に「トリミングが必要な犬種を2頭以上飼うと、固定費が大きく増える」点を意識しておくと、後から慌てずに済みます。
ペット保険は多頭分加入すべき?費用対効果を考える
多頭飼いの家計を考えるうえで、大きなポイントになるのがペット保険です。保険料も頭数分かかりますが、「もしもの医療費」が重なったときのダメージをどこまでカバーするか、現実的に考えておく必要があります。
アニコム損害保険の「家庭どうぶつ白書2023」では、犬の年間診療費について次のように報告されています。
犬(0〜18歳)の年間診療費(通院・入院・手術の総額)は、保険加入犬で平均 83,026円、保険未加入犬で平均 63,851円となった※1。
参照:アニコム損害保険「家庭どうぶつ白書2023」
この数字は「実際に支払われた診療費」です。重い病気や入院・手術が発生すると、1件で数十万円規模の請求になることも珍しくありません。アニコムの同資料では、1件あたりの高額診療例として、椎間板ヘルニアの手術・入院で40万〜70万円台、骨折治療で30万〜50万円台といった実例も紹介されています※1。
多頭飼いで怖いのは、「高額治療が同時期に複数頭で発生する」リスクです。例えば、
- 高齢の先住犬の腎不全治療で毎月2〜3万円
- 同じ時期に若い犬が誤飲で手術、30万円
といったケースが重なると、短期間で家計を大きく圧迫します。
ペット保険の費用対効果を考える際は、次のような視点で整理すると判断しやすくなります。
-
犬種・年齢・持病の有無を冷静に見る
アニコムの統計では、犬の疾患の発生率は年齢とともに上昇し、7歳以降で急激に増える傾向があります※1。さらに、フレンチ・ブルドッグ、パグなど短頭種は呼吸器や皮膚疾患、ダックスフンドは椎間板ヘルニアなど、犬種ごとにかかりやすい病気があると報告されています。
・遺伝的に病気リスクが高い犬種
・すでに持病がある、あるいはシニア期に入っている犬
こうした犬については、保険の必要性が比較的高いと考えられます。 -
貯蓄でどこまでカバーできるかを具体的に計算する
「最大いくらまでなら自費で払っても家計が崩れないか」をざっくり決めておくと判断しやすくなります。
例:
・1頭あたり、急な手術・入院費として最低20〜30万円を用意できるか
・それを2頭分(40〜60万円)、3頭分(60〜90万円)と用意できるか
ここまでの額を現金で持つのが難しい場合、多頭分を保険で分散させるという考え方もあります。
- 全頭加入が難しい場合の現実的な落としどころ
予算上、全頭をフルカバーするのが厳しい家庭も多いでしょう。その場合は、
・持病のある犬や高齢犬を優先して加入させる
・若くて健康な犬は、治療費の一部のみ補償する安価なプランにする
・保険料を抑える代わりに、緊急医療費の貯金額を多めにする
といった形で、「保険+貯蓄」で全体のリスクをならす発想が有効です。
多頭飼いでは、1頭あたりの保険料が割引になる「多頭割引」を導入している会社もあります。家計全体から見てどの程度までなら無理なく払えるか、年間保険料と想定される医療費を並べて比較しておくと判断しやすくなります。
多頭飼いで後悔しないための家計管理のポイント
費用の実態を把握したうえで、「それでも多頭飼いを楽しみたい」と思うなら、次は家計の組み立て方です。特に押さえておきたいポイントを整理します。
-
1頭ではなく「1世帯あたり」で考える
フードやワクチンは頭数に比例して増えますが、ペットシーツやハウス・ケージなどは共用できるものもあります。一方、ペットホテル代やトリミング代、医療費は「完全に頭数分」かかる項目です。どれが共通費で、どれが頭数比例なのかをざっくり分けておくと、
・今以上に頭数を増やしても大丈夫か
・どの費目を削り、どこは削れないか
といった判断がしやすくなります。 -
「犬貯金」を生活費とは別口座で積み立てる
アニコムのデータでは、1頭あたり年間で数万円〜十数万円の診療費が発生しています。これを踏まえると、「何もなくても毎月少しずつ医療費のために積み立てる」発想が重要です。
目安として:
・1頭あたり月5,000円
・2頭なら月1万円
を「犬専用の貯金」として別口座に積み上げていくと、1年で12万円、5年で60万円の備えになります。ペット保険に加入している場合でも、自己負担分や保険でカバーできない検査・サプリメントなどに備える意味で、この犬貯金は役立ちます。
- 年1回は「犬にかかっているお金」を見直す
家計簿が苦手でも、1年に1回だけ「犬関連の支出をざっくり棚卸しする」だけでも違いが出ます。
・フードのランクや量は適正か(太りすぎ・やせすぎがないか)
・無駄なサプリやグッズにお金をかけすぎていないか
・トリミングの頻度や内容を見直せないか
などを、かかりつけ医とも相談しながら調整していきます。「必要なところにはしっかりお金を使い、削ってよいところは削る」バランスが取りやすくなります。
- 旅行・冠婚葬祭など「非日常」の費用も頭に入れておく
多頭飼いだとペットホテルやペットシッターの費用も倍になります。都市部の一般的なペットホテルでは、小型犬1頭1泊4,000〜7,000円ほどが多く、2頭なら1泊で1万円前後になることもあります。
年に数回の帰省や旅行、急な入院・冠婚葬祭など、「預けざるを得ない場面」がどれくらいありそうかを想像し、
・実家や友人など預け先になってくれそうな人がいるか
・長期旅行の回数を減らすなど、ライフスタイルを調整できるか
といった点も含めて考えておくと、「預けるお金がないから行けない」「連れて行けずにストレス」といった事態を減らせます。
多頭飼いは、費用面でのハードルさえクリアできれば、犬同士の関わり合いも含めて豊かな時間をもたらしてくれます。アニコムやアットホームのようなデータを参考に、「自分の家庭ならどこまでなら無理なく払えるか」「万一のとき、何頭分まで守れるか」を数字でイメージしてから迎える頭数を決めると、犬たちとの暮らしを長く続ける安心材料になります。
多頭飼いに関するよくある疑問Q&A

Q1:何歳差で迎えるのがベスト?
「何歳差が一番うまくいきますか?」という質問は、Yahoo!知恵袋などでもよく見られるテーマです。年齢差は2〜3歳差くらいが理想的とされることが多くあります。
理由としては、先住犬がある程度落ち着いていて社会化も進んでいる一方で、まだ体力があり、子犬のテンションにも付き合える時期だからです。子犬のしつけを先住犬がお手本として助けてくれるケースもよくあります。
ただし、年齢差だけで決めるのは危険です。ペット保険大手アニコム損保の統計では、「犬の平均寿命は14.65歳」と報告されています(アニコム損保「家庭どうぶつ白書2023」)。5歳差以上など年齢が離れすぎると、
- 若い犬の体力にシニア犬がついていけない
- 介護が始まるタイミングがバラバラになる
といった一方で、2〜3歳差だと介護期が重なる可能性もあります。特に大型犬は平均寿命が短め(同白書では大型犬は13歳前後)とされるため、迎える時期によっては2頭同時に介護や医療費のピークが来ることも想定されます。
そのため、
- 「犬同士の遊びやすさ」だけでなく「介護期がいつ重なるか」
- 家族の人数や生活リズム的に、同時に2頭の介護ができるか
といったライフプランも踏まえて年齢差を考える必要があります。目安として2〜3歳差を参考にしつつ、家族の体力と時間的な余裕も一緒に検討すると安心です。
Q2:オス同士・メス同士はどちらが飼いやすい?
性別の組み合わせについては、「オス同士はケンカしやすい」「メス同士は気が強い」といった印象があります。実際には、性格と去勢・避妊の有無によるところが大きいと考えられます。
アニコム損保が公開している犬の問題行動に関する調査では、攻撃行動(咬みつきなど)は未去勢オスにやや多い傾向があるとされています(アニコム損保「家庭どうぶつ白書2020」行動編)。一方で、避妊済みメス同士でも、縄張り意識や「自分が一番でいたい」という気持ちから緊張関係が続くこともあります。
一般的な傾向としては、
- オス同士:未去勢だと発情期のストレスや縄張り意識から衝突しやすい。去勢済みなら落ち着くケースも多いが、元の性格による差が大きい
- メス同士:身体的なケンカは少なめでも、神経質なにらみ合いや、一方が他方を無視し続ける“静かな不仲”になることがある
- オス+メス:性格が合えばバランスを取りやすい組み合わせとされるが、望まない繁殖を防ぐためにも避妊・去勢は必須
海外の行動学の教科書でも、「性別よりも、社会化歴・気質・体格差を重視して組み合わせるべき」と繰り返し述べられています(例:Lindsay, S. R. 『Handbook of Applied Dog Behavior and Training』)。
性別だけで「この組み合わせなら安心」とは言えません。次の点を見たうえで、ブリーダーや保護団体、かかりつけ獣医師にも相談しながら決めると失敗が減らせます。
- 先住犬が他犬と接するときの様子(ドッグランや散歩中など)
- ビビり・マイペース・甘えん坊などの気質
- 体格差(小型犬と大型犬の組み合わせは特に配慮が必要)
Q3:先住犬が高齢の場合でも2匹目を迎えられる?
「先住犬がシニアだけれど、寂しそうだから2匹目を」と考える人もいます。ただし、シニア犬にとって新入りの存在が大きなストレスになる場合があることは、知っておきたいポイントです。
動物行動学の研究では、高齢の犬は環境の変化に適応する力が若い頃より低下し、ストレスを受けやすくなると報告されています(Overall, K. 『Clinical Behavioral Medicine for Small Animals』など)。アニコム損保の高齢犬の健康に関するレポートでも、シニア期は胃腸トラブルや持病の悪化が起こりやすいことが示されています(アニコム損保「シニア犬の健康管理」特集)。
実際にYahoo!知恵袋には、次のような相談が投稿されています。
「先住犬は元々散歩中など他の犬と挨拶や仲良くできたことがありません。多頭飼いには向いてない性格です。それでも、一匹では可哀想だからという私の勝手な判断で二匹目を迎えいれました。先住犬は前より元気がなく、昨日はストレスからなのか吐いてしまいました。」
年齢だけでなく、「一頭でいるのが好きなタイプかどうか」も非常に重要です。
シニア犬がいる家庭で多頭飼いを検討する場合は、次の点を意識しておきましょう。
- かかりつけの獣医師に体力・持病・ストレス耐性を確認してもらう
- トライアル期間を設けて、
・食欲が落ちていないか
・下痢や嘔吐が増えていないか
・睡眠時間や表情が変わっていないか
をよく観察する - 先住犬がゆっくり休めるよう、別室やクレートなど「安全地帯」を必ず作る
獣医師から「環境変化は負担になりそう」と言われた場合は、無理に2頭目を迎えない判断も選択肢です。一頭の犬と濃く向き合う選択も立派な愛情と言えます。
Q4:相性が悪かったらどうすればいい?
「時間がたてばそのうち仲良くなるはず」と思いたくなりますが、すべての組み合わせが仲良しになるとは限りません。Yahoo!知恵袋の例のように、
「子犬(3ヶ月)が追いかけると先住犬(3歳♀)が逃げてしまい、なかなか仲良くなりません」「先住犬は前より元気がなく、昨日はストレスからなのか吐いてしまいました」
といった状態が続くのは、先住犬にかなり負担がかかっているサインです。
対処のステップとしては、次の順番で考えると整理しやすくなります。
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物理的に距離をとる(別室管理)
まずはケージやサークル、別室を活用し、常に顔を合わせない環境にします。追いかけっこやケンカが起こらないようにし、「見えるけれど近づけない」くらいから少しずつ慣らしていきます。お互いが落ち着いているタイミングだけ短時間会わせるようにします。 -
専門家に相談する
犬の行動に詳しいトレーナーや、行動診療を行っている獣医師に相談すると、具体的なトレーニングプランを提案してもらえます。日本獣医動物行動研究会など、行動診療に力を入れている専門家の一覧を公開している団体もあります。近隣の専門家を探してみるとよいでしょう。 -
「同じ空間で暮らさない」という選択肢も考える
別室管理やトレーニングを続けても、
・どちらかが常に震えている
・食欲低下や下痢・嘔吐が続く
・本気咬みが何度も起こる
といった状態が改善しない場合、同じ家で暮らし続けること自体が犬にとって不幸になっている可能性があります。そのときは、信頼できる里親を探す、親族の家に預かってもらうなど、「別々に暮らす」選択肢も現実的に検討する必要があります。
先の相談でも、質問者が「二匹目を里親にだそうという考えもでてきて」と悩んでいました。これは決して無責任ではなく、「どの環境がその犬にとって一番幸せか」を考えるうえで大切な視点です。
多頭飼いでは、人側の理想よりも、それぞれの犬のストレスサインと健康状態を最優先に考えることが重要です。「頑張ればきっと仲良くなれるはず」と無理を続けず、必要であれば環境を根本から見直す姿勢も持っておきたいところです。
まとめ
犬の多頭飼いは、愛犬同士が支え合い、にぎやかで楽しい毎日をもたらしてくれます。一方で、犬同士の相性や年齢差、性別の組み合わせ、費用負担や住環境など、慎重な検討が欠かせません。特に先住犬の性格やストレスサインを見極め、初対面から日常管理まで段階的に配慮することが大切です。
事前準備と冷静なシミュレーションを行い、「無理なく続けられるか」を基準に判断しましょう。そのうえで多頭飼いを選べば、飼い主と犬たち全員にとって、安心で幸せな暮らしに近づけます。
よくある質問(FAQ)

Q1. 犬の多頭飼いで「相性が良い」と言える具体的なサインは何ですか?
回答:
以下のような様子が見られれば、比較的相性が良い・折り合いをつけられている可能性が高いです。
- 一緒の空間にいてもお互いリラックスしている(あくび・体を横たえる・寝てしまうなど)
- どちらか一方だけでなく、交代でじゃれ合いの上に乗ったり下になったりしている
- 片方が離れようとしたとき、もう片方がしつこく追いかけ過ぎず、「解散」が自然にできる
- ごはんやおやつのときに、強い威嚇(唸り・歯をむく)が出ない
- 飼い主のそばに行く順番が多少前後しても、大きな揉め事にならない
逆に、以下のような様子が続く場合は、表面上落ち着いて見えても我慢が溜まっている可能性があります。
- 一方だけが常に追い回す・上に乗る
- 片方が固まって動けない、隙あらば隠れようとする
- 同じ部屋にいると水やごはんを飲みに行かなくなる
「仲良し」に見えるかどうかだけでなく、どちらも自分のタイミングで休めているかを基準に観察すると判断しやすくなります。
Q2. 新しく迎える犬はブリーダー・ペットショップ・保護犬のどれが多頭飼いに向いていますか?
回答:
どれが正解というよりも、「その犬の性格・背景をどれだけ詳しく聞けるか」が重要です。それぞれ次のようなポイントがあります。
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ブリーダー出身
・親犬や兄弟犬の性格を聞きやすく、気質の傾向をつかみやすい
・先住犬と似た性格・体格の子を選びやすい -
ペットショップ出身
・子犬期から迎えやすいが、親犬の気質や元の環境が分かりにくいことも多い
・迎え入れ前に「他の犬への態度」「怖がり度合い」を店員に詳しく確認する -
保護犬(保護団体・保健所など)
・一時預かり宅で暮らしている場合、多頭環境での様子(他犬との相性・得意不得意)をかなり具体的に教えてもらえる
・成犬なら、すでに性格がはっきりしているため、先住犬との組み合わせをイメージしやすい
多頭飼いの観点では、「多頭環境でのテスト済み」かどうかは大きな安心材料です。保護団体であれば、「先住犬と同じ性別・体格の犬と暮らしたことがあるか」「相性はどうだったか」を必ず聞きましょう。ブリーダーやショップでも、事前面会や相性確認の場を作ってくれるかを基準に選ぶと失敗を減らせます。
Q3. 多頭飼いでよくあるケンカはどの程度まで様子見してよくて、どこから止めるべきですか?
回答:
犬同士の多少の「言い合い」は、距離感を学ぶうえで必ずしも悪いものではありません。ただし、止めるべきラインを事前に決めておくと安全です。
様子を見てもよいケースの目安
- お互いに体をぶつけ合っても、交代で追いかける/追いかけられるになっている
- 唸り声はあるが、直後に体が緩み、再び遊び始める
- 片方が離れようとしたとき、もう片方もすぐに追うのをやめる
すぐに止めたほうがよいケースの目安
- 一方が一方を一方的に追いかけ続ける/上に乗り続ける
- 体がカチカチに固まり、目が細くなり、歯をむき出しにしている
- 片方が逃げ場所(ケージ・家具の下など)に入っても、もう片方が執拗に追い詰める
- 皮膚に歯型がつく・出血するなどのケガが出た
止めるときは、素手で間に割って入らないことが鉄則です。毛布やクッションを間に入れる、リードをつけている場合は後方に引き離す、大きな音(拍手や床を軽く叩く音)で一瞬気をそらしてからそれぞれ別方向に誘導する、といった方法をとりましょう。
Q4. 「犬が1匹だとかわいそう」と感じますが、必ずしも多頭飼いにすべきでしょうか?
回答:
必ずしも多頭飼いにする必要はありません。1匹でいることがむしろ向いている犬もいます。
多頭飼いで問題になりやすいのは、
- もともと他犬が苦手・怖がりな性格
- 飼い主への独占欲が強い
- 高齢や持病があり、環境変化が負担になりやすい
といった先住犬です。こうしたタイプの犬の場合、もう1頭迎えることで「遊び相手ができる」よりも、「家の中で安心できる時間が減る」リスクのほうが大きくなります。
1匹での暮らしでも、
- 飼い主との散歩・遊び・トレーニングの時間をしっかりとる
- 犬が安心して過ごせるルーティン(寝る場所・時間帯)を守る
- ときどきドッグランや散歩友達など、適度な他犬との交流を用意する
といった工夫で、十分に心身が満たされる犬は多くいます。「寂しそうだから」という人側の感情だけではなく、今の先住犬が本当に他犬の同居を望んでいそうかを、散歩中の反応などから冷静に見極めてから判断しましょう。
Q5. 多頭飼いでしつけが崩れないようにするコツはありますか?
回答:
頭数が増えると、1頭目で身につけたはずのルールが崩れやすくなります。次のポイントを徹底すると、しつけがバラバラになりにくくなります。
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基本は「1対1」で教える
いきなり2頭同時に座れ・待てを教えず、最初は必ず個別レッスンにします。片方が覚えてから、もう片方の前で見本を見せる形にすると、新入りがマネしやすくなります。 -
コマンドとルールは全頭共通にする
・ソファに乗ってよい/ダメ
・食卓に近づいてよい距離
・人の食べ物は一切あげない
など、家庭内ルールは犬ごとに変えないほうが混乱しにくいです。「AくんはOK、Bちゃんはダメ」と線引きすると、犬から見ると非常に分かりづらくなります。 -
悪い行動を“見本”にさせない
一頭が吠えや飛びつきをし始めると、もう一頭も真似しやすくなります。特に新入りの子犬は先住犬の行動をコピーしやすいので、
・インターホン吠え
・散歩での引っ張り
など、先住犬側に課題がある場合は、多頭飼いにする前にある程度改善しておくのが理想です。 -
できた行動を必ず褒め分ける
「どちらができたのか」をその都度はっきりさせます。
・名前を呼んでから「できたね!」と褒める
・できたほうにだけごほうびを渡す
ことで、「誰が何をすると褒められるか」が明確になります。
Q6. 多頭飼いで災害が起きたとき、避難はどう考えればいいですか?
回答:
日本は地震・水害など災害が多く、環境省も「ペットの同行避難」を推奨しています。ただし、実際の避難所では多頭飼いにとって次のようなハードルがあります。
- ケージ・クレートは頭数分必要(避難所で足りないことが多い)
- ペット同伴スペースが屋外や駐車場の一角のみの場合もあり、複数頭を同時に管理するのは体力的に大変
- 他の避難者やペットとの距離をとる必要があり、吠えやすい犬が複数いると肩身が狭くなりがち
多頭飼いをするなら、平時から次の準備をしておきましょう。
- 頭数分のクレート(もしくは折りたたみサークル)を用意し、家で入る練習をしておく
- フード・水・ペットシーツ・常用薬を最低3〜7日分、できれば2週間分をローリングストック
- 車での避難を想定する場合は、全頭を安全に乗せられるスペースがあるか確認
- 「いざというときに預かってもらえる親族・友人」がいるかどうかリストアップ
頭数が増えるほど避難は難しくなります。「この頭数なら、家族全員で安全に避難させられるか」という視点も含めて、多頭飼いの上限を決めておくと安心です。
