
犬が耳をかゆがったり、においが強くなったりすると「耳の病気では?」と不安になる飼い主の方は多いようです。犬の耳の病気は悪化すると痛みや難聴、ふらつきなど全身のトラブルにつながる一方で、早めに気づいて適切に対処すれば重症化を防ぎやすい病気でもあります。本記事では、犬の耳の病気サイン12種類と考えられる原因、動物病院を受診すべきタイミング、自宅でできるケアや予防法までを分かりやすく解説します。愛犬の耳の異変が「様子見でよいのか」「すぐ受診すべきか」の判断材料としてご活用ください。
犬の耳の構造と耳の病気が起こりやすい理由

犬の耳は、音を聞く役割だけでなく、体のバランスを保つ重要な器官でもあります。一方で、構造的な理由から人よりも耳の病気が起こりやすい部位でもあります。
犬の外から見える三角形の「耳介」と、その奥に続く「外耳道」は、細くて長く、途中で曲がる「L字型」をしています。この形により、湿気や汚れ、耳垢がこもりやすく、一度炎症や感染が起こると治りにくい傾向があります。また、犬は人よりも耳垢の分泌が多く、たれ耳や毛の多い犬種では通気性が悪くなるため、細菌やマラセチア(カビの一種)が増えやすい環境になりやすい点も問題です。
さらに、耳の奥には平衡感覚をつかさどる内耳があり、ここまで炎症が広がると、ふらつきやまっすぐ歩けないなどの深刻な症状につながります。「少し汚れているだけ」と放置すると、中耳炎・内耳炎に進行し、長引く通院や後遺症の原因になるおそれがあります。 犬の耳の構造を理解し、早期に異常サインに気づくことが、愛犬を重い耳の病気から守る第一歩になります。
犬の耳のしくみと人との違い
犬の耳は、音を聞くだけではなく、体のバランスを保つ働きも担っています。構造自体は人と同じく「外耳・中耳・内耳」に分かれますが、形や長さが大きく異なるため、病気の起こり方にも違いがあります。
主な違いを表にまとめます。
| 部位・特徴 | 犬 | 人 |
|---|---|---|
| 外耳道の形 | L字型に深く曲がっている | ほぼまっすぐ |
| 耳道の長さ | 比較的長く、通気性が悪い | 短く通気性が良い |
| 耳介(耳たぶ) | 大きく動かせる・立ち耳やたれ耳など多様 | 固定され動きは少ない |
犬の外耳道はL字型のため、一度たまった耳あかや湿気が抜けにくく、炎症や感染が起こりやすい構造です。また、耳介を大きく動かせることで音には敏感ですが、その分、外耳道の皮膚に負担がかかり、かゆみや炎症が慢性化しやすい傾向があります。人よりも「汚れがたまりやすく、蒸れやすい構造」であることを理解しておくと、日常のケアや早期発見に役立ちます。
耳の形や犬種で変わるリスクの違い
犬の耳の病気は、耳の形や犬種によってかかりやすさが大きく変わります。たれ耳・長い耳・耳道が狭い犬は、耳の中がムレやすく、外耳炎などのリスクが特に高いことが重要なポイントです。
代表的な傾向を表にまとめます。
| 耳の特徴・犬種の例 | 起こりやすいトラブルの例 |
|---|---|
| たれ耳(プードル、コッカースパニエル、ダックスなど) | 外耳炎、マラセチア性外耳炎、耳血腫 |
| 長毛・耳の中にも毛が多い犬 | 耳あか・湿気がこもりやすく、慢性外耳炎 |
| 短頭種(フレンチブルドッグ、パグなど) | 耳道が変形・狭窄しやすく、中耳炎・慢性の耳トラブル |
| 立ち耳(柴犬、ジャーマンシェパードなど) | 風通しは良いが、草の種・砂など異物混入リスク |
さらに、コッカースパニエルやレトリーバーなど皮脂分泌が多い犬種は、耳の中も汚れやすくなります。たれ耳や短頭種の愛犬の場合は、日常的なチェックと早めの受診を意識することが耳の病気予防につながります。
危険信号かも?耳の病気サイン12種類

犬の耳のトラブルは、初期段階で気づけるかどうかが悪化防止の大きな分かれ道になります。そこで、「病院へ行った方がよいか」を判断する目安になるサインを12種類に整理して解説します。
これから紹介するサインは、1つだけ軽く見られる場合もあれば、複数が同時に出て重い病気が隠れている場合もあります。特に、痛がる・ふらつく・耳から強いにおいがする・耳たぶが急に腫れるといった症状は、早めの受診が必要な危険信号です。
各サインの見分け方や受診の目安は、次の小見出しからひとつずつ詳しく説明しますので、自分の愛犬に当てはまるものがないか、チェックしながら読み進めてみてください。
1:耳をしきりにかく・こするしぐさ
耳を前足で何度もかいたり、床やソファに耳をこすりつける様子は、代表的な耳のトラブルサインです。数日続く・片側だけ激しくかく・耳からにおいや汚れが出ている場合は、外耳炎や耳ダニなどの病気が疑われます。
かゆみが強いと、皮膚が赤くただれたり、かき壊しによる出血、耳血腫(耳介の内出血)につながることもあります。反対に、痛みが強い中耳炎・内耳炎では、ほとんどかかない場合もあるため、「かいていない=問題なし」とは言えません。
以下のようなポイントも一緒に確認すると、受診時の情報として役立ちます。
- いつ頃から、どのくらいの頻度でかいているか
- 片耳か両耳か
- におい・耳垢の色・量の変化
耳をしきりにかく様子が見られたら、自己流の耳掃除や市販薬の使用は避け、早めに動物病院で原因を確認することが重要です。
2:頭を頻繁に振る・首を傾けている
頭を左右にぶるぶると頻繁に振ったり、片側に首を傾けたままにしている場合は、耳の中に強い違和感や痛みがあるサインです。特に何もしていないのに急に頭を振り続ける・一定方向にばかり首を傾ける場合は、耳の病気を疑って早めに受診する必要があります。
よくみられる原因としては、外耳炎によるかゆみや痛み、耳ダニ、耳道の奥に入った草のノギ(植物の種など)、中耳炎・内耳炎などがあります。耳を振る動作が続くと、耳介内に出血して耳血腫を起こすこともあります。
頭を振ったあとに鳴く、頭を振るたびに耳を気にする、ふらつきがある、嘔吐を伴うといった症状が一緒に見られるときは、より重い耳の炎症や神経のトラブルの可能性があるため、早急な診察が望まれます。無理に耳を触ったり洗浄したりせず、動物病院で原因を確認してもらうことが重要です。
3:耳から強いにおいがする
耳から強いにおいがする場合、多くは外耳炎などの炎症や耳の中で細菌・マラセチア(カビの一種)が増えているサインです。すっぱいような発酵臭、湿ったような生臭さ、腐ったようなにおいなど、普段の体臭とは明らかに違う臭気が感じられます。
特に、においと同時に「ベタベタした耳あか」「頭を振る・耳をかくしぐさ」「耳の赤み」が見られる場合は、病気の可能性が高くなります。耳の入り口から強いにおいがしても、無理に綿棒で奥をこすったり、アルコールで拭いたりすると悪化させることがあります。数日以内に動物病院で耳の中を確認してもらうことが望ましい状態と考え、早めの受診を検討してください。
4:茶色・黒色・黄緑色の耳あかや分泌物
耳あかの色は耳の状態を知る大きな手がかりになります。茶色や黒色、黄緑色の耳あかやドロッとした分泌物が続く場合は、耳の病気を疑って早めの受診が必要です。
代表的な目安は次の通りです。
| 耳あか・分泌物の色 | 考えられる状態の例 |
|---|---|
| 濃い茶色~黒色でベタベタ | マラセチア性外耳炎、耳ダニ感染など |
| 黄緑色~黄褐色でネバネバ | 細菌性外耳炎、中耳炎など炎症が強い状態 |
| 血が混じったような色 | 外耳炎の悪化、耳血腫、腫瘍など |
量が急に増えた場合、においの悪化、かゆみや痛みを伴う場合も要注意です。綿棒で奥までこすったり、自己判断で洗浄を繰り返すと悪化することが多いため、色や量に異常を感じた段階で動物病院での検査を受けることが大切です。
5:耳の赤み・腫れ・熱っぽさ
耳の内側や付け根が赤く腫れていたり、触れると熱を感じる場合、ほとんどが炎症や感染のサインです。代表的なのは外耳炎ですが、中耳炎・内耳炎、耳ダニ、耳血腫の初期などでも見られます。
一時的な充血は、散歩後の暑さや一時的な興奮で起こる場合もありますが、
- 赤みが数時間~1日以上続く
- 片方だけ極端に赤い
- 腫れて耳の形が変わっている
- 触ると嫌がる、かゆがる、頭を振る
といった様子が見られる場合は、自宅様子見ではなく早めの受診が必要です。特に、耳介全体がぷっくり腫れて熱を持っているときは耳血腫の可能性があるため、数日以内の受診を目安にしてください。
6:耳をさわると痛がる・怒る
耳の付け根や耳介をそっと触っただけで身をよじる、鳴く、歯をむくなどの反応がある場合は、強い痛みを伴う耳の炎症や耳血腫、中耳炎などの可能性が高いサインです。普段穏やかな性格の犬が耳を触られると急に怒る場合も、痛みから防御反応を示していると考えられます。
家庭では、無理に押さえつけて耳を確認したり、痛がるのに耳掃除を続けたりすることは避けてください。耳の中で炎症や出血が悪化したり、噛みつき事故につながるおそれがあります。「耳を触ると怒るようになった」「急に耳を触らせなくなった」場合は、できるだけ早く動物病院を受診することが重要です。
7:耳介(耳たぶ)がふくらむ・しこりがある
耳介(耳たぶ)が急にふくらんできたり、触れるとプヨプヨした袋状のしこりがある場合、耳血腫(じけっしゅ)の可能性が高くなります。耳血腫は耳介の内側で血液がたまる病気で、強く頭を振ったり、耳をかき続けた刺激で血管が破れて起こります。放置すると耳介がしわしわに変形し、見た目だけでなく通気性も悪くなり、耳の病気を繰り返しやすくなります。
耳介のしこりは、脂肪のかたまりや腫瘍(良性・悪性)のこともあります。「片方の耳だけが急に腫れた」「数日で大きさが変わってきた」場合は、早めの受診が必要なサインです。自宅で揉んだり潰そうとすると悪化や感染の原因になるため、触りすぎないようにして動物病院で診断を受けてください。
8:耳の周りの脱毛・かさぶた・湿疹
耳の付け根や耳のまわりの毛が抜けて地肌が見える、かさぶたや赤いブツブツがある場合、多くは外耳炎・アレルギー性皮膚炎・耳ダニなど皮膚トラブルが耳周囲まで広がっているサインです。耳をしつこくかくことで摩擦が加わり、脱毛や傷、二次感染(細菌やマラセチア)が起こりやすくなります。
よく見られる原因と特徴は、次のようなものがあります。
| 主な原因 | 見られやすい状態の例 |
|---|---|
| 外耳炎によるかゆみ・炎症 | 耳の入口〜周囲が赤い、ジクジクしてフケやかさぶたが増える |
| アトピー・食物アレルギーなど | 耳だけでなく顔や足先などにもかゆみ・発疹がある |
| 耳ダニ・疥癬などの寄生虫 | 強いかゆみ、黒い耳あか、耳周りの激しい脱毛 |
数日で治るだろうと様子を見続けると、炎症が広がり慢性化しやすくなります。耳周りの脱毛やかさぶた、湿疹に気づいたら、早めに動物病院で原因を調べ、耳と皮膚の両方をセットで治療してもらうことが重要です。
9:ふらつき・まっすぐ歩けない・ぐるぐる回る
耳の病気が進行し、中耳や内耳まで炎症や感染が広がると、平衡感覚をつかさどる神経が障害されます。その結果、ふらつき・まっすぐ歩けない・同じ方向にぐるぐる回るといった「前庭障害」の症状が目立つようになります。特に急に発症した場合や、転びそうになるほどひどい場合は、緊急で動物病院を受診すべき状態です。
めまいが強い犬は、じっと動けなくなったり、吐き気を伴うこともあります。症状が落ち着くまでは無理に歩かせず、段差や家具にぶつかってけがをしないよう、クレートやサークルで安静にさせてください。自宅での様子を動画に撮影しておくと、診察時に診断の助けになります。
10:片側だけを向く・顔がゆがむ
顔を片側だけに向け続けたり、左右どちらかにだけ首をかしげている場合、耳の中耳炎・内耳炎や耳の腫瘍などで、片側の耳に強い異常があるサインの可能性があります。痛みや違和感を避けるために、無意識に楽な方向に顔を向け続ける行動がよく見られます。
片側の耳周辺をさわると嫌がる、同じ側の目の瞬きが少ない・鼻水が出る、顔の片側だけが下がって見える場合は、顔面神経まひなど神経のトラブルを伴う重い病気が疑われます。時間がたつほど後遺症が残りやすくなるため、半日~1日以内を目安に動物病院を受診することが重要です。耳だけでなく、目や口の動き、よだれの量、食べにくさなども一緒に観察し、受診時に獣医師へ伝えましょう。
11:呼んでも反応しにくい・聞こえづらそう
呼んだときの反応の弱さや遅さも、耳の病気や難聴のサインになることがあります。以前はすぐ振り向いていたのに、最近は近くで名前を呼んでも首をかしげるだけ、反応まで数秒かかるなどの変化が見られる場合は注意が必要です。
代表的な様子としては、
- 名前を呼んでも振り向かないことが増えた
- インターホンや来客に気づきにくくなった
- おもちゃの音やフードの袋を開ける音への反応が弱くなった
- 後ろから近づくとびっくりして飛び上がる
などがあります。急に聞こえづらそうになった場合は、中耳炎・内耳炎・耳血腫など痛みを伴う病気や、腫瘍などが隠れている可能性があるため、早めの受診が重要です。
一方、高齢になるにつれて少しずつ聞こえが悪くなることもあります。加齢性の難聴か、治療が必要な耳の病気かを見分けるには、動物病院での耳の検査が欠かせません。気になる変化が続く場合は、動画などで反応の様子を記録し、診察時に獣医師へ伝えると原因の特定に役立ちます。
12:食欲不振や元気がないなど全身症状
耳の不調が進行すると、耳だけでなく全身の状態にも影響が出ます。「最近なんとなく元気がない」「ごはんを残す」が耳の病気のサインになっていることも少なくありません。
代表的な全身症状には、
- 食欲が落ちる、まったく食べない
- 元気がなく、遊びに誘っても反応が乏しい
- じっとして動きたがらない、寝ている時間が急に増えた
- 触ろうとすると嫌がる、隠れたがる
- 熱っぽい、呼吸が早い
などがあります。耳の激しい痛みや強い炎症、内耳炎によるめまい・吐き気、ストレスなどで、全身の不調として表れるためです。
「耳の症状+食欲不振や元気低下」が同時に見られる場合は、自己判断で様子を見るのではなく、早めの動物病院受診が推奨されます。 特に子犬やシニア犬では脱水や体力低下につながりやすいため、受診を急いでください。
よくある犬の耳の病気と特徴

犬の耳にはさまざまな病気があり、症状や治療法が少しずつ異なります。代表的な病気の特徴を知っておくことで、早期発見と適切な受診につながります。
主な耳の病気には、外耳炎・中耳炎・内耳炎、耳ダニ(耳疥癬)、耳血腫、耳の腫瘍やポリープ、加齢や病気による難聴などがあります。多くの病気は、かゆみや痛み、におい、耳あかの変化から始まり、進行するとふらつきや顔の麻痺、聞こえづらさなど全身に関わる症状へと広がる点が共通しています。
「よくある症状=すべて同じ病気」とは限らず、見た目が似ていても原因はさまざまです。 次の小見出しから、それぞれの病気ごとに特徴や注意したいポイントを解説します。
外耳炎:最も多い耳のトラブル
外耳炎は、犬の耳の病気の中で最も発生頻度が高いトラブルです。多くは耳の入口から鼓膜までの「外耳道」に炎症が起きる病気で、かゆみや痛み、においなどのサインとして現れます。
主な症状は、耳をかゆがって前足でかく・床にこすりつける、頭をよく振る、耳から嫌なにおいがする、赤みや腫れ、ベタベタした耳あかが増えるなどです。悪化すると、耳を触ると強く痛がる、黒いカスのような分泌物が大量に出る、耳血腫や中耳炎へ進行するといったリスクもあります。
原因は、マラセチアや細菌の増殖、アレルギー体質、耳ダニ、耳道の形やたれ耳、過剰な耳掃除などさまざまです。耳のにおい・かゆみ・赤みなどが数日以上続く場合は、自宅ケアで様子を見るのではなく、早めに動物病院で診察を受けることが重要です。
中耳炎・内耳炎:放置で重症化しやすい病気
中耳炎と内耳炎は、外耳炎が進行して起こることが多く、放置すると平衡感覚の異常や顔面麻痺、永久的な難聴につながる危険な病気です。耳の奥(鼓膜の内側)に炎症が及ぶため、強い痛みや違和感が出やすく、頭を傾けたままにする、ぐるぐる回る、ふらつく、まっすぐ歩けないといった神経症状が見られる場合があります。
主な原因は、慢性的な外耳炎の悪化、細菌やマラセチアの感染、耳ダニ、腫瘍、ポリープ、先天的な耳の構造異常などです。耳を触ると強く嫌がる、耳のにおいがひどい、目の動きが異常(眼振)といったサインがある場合も中耳炎・内耳炎が疑われます。
治療には、原因に合わせた抗生物質や消炎鎮痛薬、ステロイド薬などの内服、耳道洗浄、鼓膜の処置が必要になり、重症の場合は入院や外科手術が必要になることもあります。耳の奥の炎症は自然治癒を期待できないため、「ふらつき」「顔のゆがみ」「急な難聴」のいずれかが見られたら、すぐに動物病院で検査を受けることが重要です。
耳ダニ(耳疥癬):子犬や多頭飼育で注意
耳ダニ(耳疥癬)は、とくに子犬や多頭飼育の環境でうつりやすい寄生虫性の耳の病気です。ミミヒゼンダニというダニが外耳道にすみつき、強いかゆみと炎症を起こします。
代表的な症状は次のようなものです。
- 強いかゆみで耳を激しくかく・頭を振る
- コーヒーかすのような黒く乾いた耳垢が大量に出る
- 耳の中が赤くただれている
- 他の犬や猫にも同じ症状が広がる
耳ダニは肉眼では見えにくく、動物病院で耳垢を顕微鏡検査して診断する必要があります。治療はダニを駆除する点耳薬や内服薬、注射などを数週間続け、同居動物もまとめて治療することが基本です。放置すると二次感染の外耳炎や耳血腫を起こしやすくなるため、上記のような黒い耳垢とかゆみが見られた場合は、早めの受診が重要です。
耳血腫:耳介がパンパンに腫れる病気
耳血腫は、耳介(耳たぶ)の内側で出血が起こり、皮膚と軟骨の間に血液がたまる病気です。多くの場合、外耳炎や耳ダニなどで強いかゆみや痛みがあり、犬が耳を激しく振ったりかいたりすることで血管が破れて発生します。たれ耳の犬種でよく見られます。
典型的な症状は、耳介が風船のように急にぷっくり腫れあがり、触るとブヨブヨして熱を持つことです。痛みのため、耳を触られるのを嫌がったり、首をかしげていることもあります。耳血腫は自然にしぼむ場合もありますが、変形や再発の原因になるため、基本的には治療が必要です。
治療は、注射針で血を抜く方法や、切開して中を洗浄し、圧迫固定する方法などが行われます。放置すると耳がしわしわに変形してしまうことが多いため、耳介の急な腫れに気づいたら、できるだけ早く動物病院を受診することが重要です。
耳の腫瘍・ポリープ:高齢犬で増えるトラブル
耳の腫瘍やポリープは、特に中高齢〜高齢犬で見つかりやすい耳のトラブルです。耳の入り口付近や耳の穴の奥に、いぼ状のしこりや、表面がデコボコしたできものとして現れることが多く、良性のこともあれば、悪性腫瘍(がん)のこともあります。
主な症状は、耳の中にできものが見える、耳が狭くなって通気性が悪くなる、耳垢や分泌物が増える、悪臭、繰り返す外耳炎などです。腫瘍やポリープが耳道をふさぐと、治療しても外耳炎がすぐ再発する、耳掃除や点耳薬が奥まで届かないといった状態になりやすくなります。
診断には、視診や耳鏡検査に加え、細胞診や生検で良性・悪性の判定を行うことがあります。治療は、良性の小さなポリープであれば切除や焼灼のみで済む場合もありますが、悪性腫瘍や広範囲に広がった病変では、耳道ごと切除する外科手術(全耳道切除術など)が必要になることもある重い病気です。耳の中のしこりや、治りにくい外耳炎がある場合は、早めに動物病院で相談しましょう。
難聴・加齢性の聞こえづらさ
犬の難聴は、加齢による聴力低下(老齢性難聴)と、耳の病気が原因の難聴に大きく分けられます。加齢性難聴は高齢になるほど増え、ゆっくり進行するため気づきにくいことが特徴です。
老齢性難聴では、名前を呼んでも反応が遅い、近くまで行かないと気づかない、インターホンや物音に驚かなくなるなどの変化が見られます。一方、外耳炎・中耳炎・内耳炎や耳の腫瘍が原因の場合は、片側だけ聞こえない、ふらつきや顔のまひを伴う、急に聞こえづらくなるといったサインが出ることがあります。
加齢性難聴そのものを元通りにすることは難しいため、早めに動物病院で原因を確認し、聞こえにくくなった犬とのコミュニケーション方法(アイコンタクトやジェスチャー、足音で合図するなど)を整えていくことが大切です。
耳の病気にかかりやすい犬種と体質

犬の耳の病気には、かかりやすい犬種や体質があります。「ケアが悪いから病気になる」のではなく、「もともと耳の構造や体質が弱い」場合が多いことを理解しておくことが重要です。
代表的なリスク要因は、耳の形(垂れ耳・立ち耳)、耳道の太さや長さ、皮膚の弱さ、アレルギー体質、脂漏体質(皮脂が多い)、短頭種特有の頭蓋骨の形などです。特に、湿気がこもりやすい耳や、皮脂や耳垢がたまりやすい耳は、細菌やマラセチアが増えやすく、外耳炎を繰り返しやすくなります。
また、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーを持つ犬は、皮膚だけでなく耳の中にも炎症が起こりやすく、慢性的な耳トラブルにつながります。耳の病気にかかりやすい体質の犬は、「早めの受診」と「こまめな観察・予防ケア」が特に重要です。 次の見出しから、耳の形や犬種ごとの特徴を詳しく解説します。
たれ耳・耳道が狭い犬種で多いトラブル
たれ耳のコッカー・プードル・ダックス、耳の毛が多いシュナウザーなどは、耳道が湿りやすく通気性が悪いため、外耳炎やマラセチア感染が非常に起こりやすい体質といえます。耳道が生まれつき細い犬や、耳の入口が狭い犬も、少しの耳あかや炎症でもすぐに通り道がふさがり、慢性的な耳トラブルにつながりやすくなります。
代表的な傾向をまとめると次のようになります。
| 特徴 | なりやすいトラブル例 |
|---|---|
| たれ耳(コッカー等) | 外耳炎、マラセチア性皮膚炎 |
| 耳の毛が多い(プードル等) | 耳あかの滞留、慢性外耳炎 |
| 耳道が細い・曲がりが強い | 汚れの蓄積、中耳炎への進行 |
このような犬種では、こまめな耳チェックと、動物病院で状態に合った耳掃除方法を確認しておくことが、耳の病気を繰り返さないための重要なポイントになります。
短頭種に多い中耳炎や耳の閉塞
短頭種(フレンチブルドッグ、パグ、シーズー、キャバリアなど)は、頭蓋骨の形や鼻先の短さにより、耳の奥の構造も独特です。耳の奥の中耳腔が狭く、耳管(耳と喉をつなぐ管)の換気が悪くなりやすいため、中耳に液体がたまりやすく、慢性的な中耳炎や耳の閉塞が起こりやすいとされています。
特にキャバリアでは「中耳腔に粘稠な液がたまる病気(OM with effusion)」が知られており、無症状から、首をかしげる、痛み、ふらつき、顔面神経まひまでさまざまな症状が出ることがあります。外耳炎の症状が目立たなくても、中耳に炎症があるケースも多いため、短頭種が以下の様子を見せる場合は早めの受診が重要です。
- 首をよく振る・傾ける
- 片側ばかりかく
- 触ると痛がる、キャンと鳴く
- ふらつきやバランスの悪さがある
短頭種では、軽い外耳炎と見えても中耳炎が隠れている可能性が高いため、画像検査(レントゲンやCT)を含めて診断することが推奨されます。 早期に発見できれば、長期的な痛みや難聴などの後遺症を減らすことにつながります。
アレルギー体質や皮膚病との関係
アレルギー体質や皮膚炎のある犬は、耳の病気にもかかりやすい傾向があります。アトピー性皮膚炎や食物アレルギーがある犬では、耳の中の皮膚も同じように炎症を起こしやすく、慢性的な外耳炎に発展しやすいことが大きな特徴です。
アレルギーがあると耳の中がかゆくなり、掻く・こする行動が増えます。その刺激によって耳の皮膚が傷つき、細菌やマラセチア(酵母菌)が増えやすくなり、炎症が悪化します。特に、体のかゆみや赤みと耳のトラブルが同時に起きている場合は、単純な耳だけの病気ではなく「全身のアレルギー疾患の一部」と考える必要があります。
アレルギー体質が疑われる場合は、耳の治療だけでなく、皮膚のケア、シャンプーの見直し、食事内容や生活環境の調整も重要になります。耳の病気を繰り返す犬では、耳だけでなく皮膚全体を診てもらい、アレルギー検査や長期的なコントロールを獣医師に相談することが再発予防につながります。
耳の病気の主な原因と悪化させる要因

犬の耳の病気は、ひとつの原因だけで起こることは少なく、いくつかの要因が重なって発症・悪化することが多いです。主な原因と悪化させる要因を整理すると、次のようになります。
| 区分 | 主な原因・要因 | 耳への影響 |
|---|---|---|
| 原因 | 細菌・マラセチア・カビなどの感染 | 外耳炎・中耳炎などを起こす |
| 原因 | 耳ダニ・ノミなどの寄生虫 | 強いかゆみ・炎症を引き起こす |
| 原因 | アトピー・食物アレルギー | 慢性的な赤み・ただれの原因になる |
| 悪化要因 | 過度な耳掃除・誤ったケア | 耳道を傷つけ、炎症や感染を悪化させる |
| 悪化要因 | 湿気・蒸れ・水が入ったまま | 細菌やカビが増えやすくなる |
| 悪化要因 | 体質・基礎疾患(ホルモン病など) | 再発をくり返しやすくなる |
「感染+アレルギー体質+蒸れ+過度な耳掃除」など、複数の要因がそろうと重症化しやすくなります。 原因を1つに決めつけず、生活環境やケア方法も含めて総合的に見直すことが、耳の病気を治すための第一歩になります。
細菌・マラセチア・カビなどの感染
耳の中には常に少量の細菌やマラセチア(酵母様真菌)、カビが存在しており、通常は問題を起こしません。しかし、湿気や汚れ、アレルギーなどで耳の環境が悪化すると、これらの微生物が一気に増えて炎症(外耳炎など)を起こします。
代表的な原因と特徴は次のとおりです。
| 原因微生物 | よくある症状の特徴 |
|---|---|
| マラセチア | 茶色〜黒色のベタベタした耳あか、強いにおい、かゆみ |
| 細菌(ブドウ球菌など) | 黄〜緑っぽい膿状の分泌物、強いにおい、痛み、腫れ |
| カビ | 慢性的な外耳炎の一部で関与、かゆみや分泌物 |
感染の種類によって必要な薬(点耳薬・内服薬)が異なるため、動物病院で耳垢検査を行い、原因菌を特定してから治療することが重要です。自己判断で人用の薬や余っている薬を使うと、悪化や耐性菌の原因になるため避けましょう。
アトピー・食物アレルギーによる炎症
アトピー性皮膚炎や食物アレルギーがある犬では、耳の内側が慢性的に赤くなり、かゆみが強く、外耳炎を何度も繰り返すことが大きな特徴です。細菌やマラセチアは「結果」として増えますが、根本には「アレルギーによる炎症体質」があるケースが多く見られます。
代表的なサインは、耳だけでなく口の周り、足先、脇、股のかゆみや赤みを同時に伴うことです。季節によって悪化したり、新しいフードやおやつを与えてから症状が強くなる場合も、アレルギーの関与が疑われます。
何度治療しても外耳炎を繰り返す場合は、耳だけでなく皮膚全体を含めたアレルギー検査や食事管理を含む治療計画が重要です。耳の洗浄や点耳薬だけでは限界があるため、動物病院で長期的なコントロール方法の相談をおすすめします。
耳ダニや異物の侵入・水が入ること
耳ダニ(耳疥癬)は、ダニ自体が耳の中に住みつき、耳垢や分泌物をエサに増える寄生虫疾患です。強いかゆみと、コーヒーかす状の黒い耳垢が大量に出るのが典型的なサインで、子犬や多頭飼育の家庭、外に出る機会が多い犬で発生しやすくなります。放置すると外耳炎や中耳炎に進行し、家族の別のペットへも広がるおそれがあります。
草むら遊びやシャンプー時などに、植物の種・砂・小さな虫などが耳道に入ることもあります。異物が入ると、急に片耳だけを強くかいたり、頭を振り続けたり、痛がって触らせなくなることが多いです。また、プールやシャンプーの際に耳に水が入ると、湿った環境が長く続き、細菌やマラセチアが増えやすくなります。異物や水が入った疑いがある場合は、家庭で無理にかき出したり洗い流したりせず、早めに動物病院で処置を受けることが重要です。
誤った耳掃除やシャンプーでの悪化
耳の皮膚はとてもデリケートなため、間違った耳掃除やシャンプーは耳の病気を悪化させる原因になります。赤み・におい・かゆみがある耳を、自己判断で強く掃除したり薬液を入れる行為は特に危険です。
誤ったケアの代表例は次のようなものです。
| NGなケア例 | 問題点 |
|---|---|
| 綿棒で奥までゴシゴシこする | 皮膚を傷つけ、炎症や感染を悪化させる |
| 人間用の綿棒・消毒液・アルコールを使う | 刺激が強く、かゆみや痛みを増やす |
| シャンプーや水が耳の中に入ったまま放置する | 湿気で細菌やマラセチアが増え、外耳炎の原因になる |
| 獣医師の指示なしに市販の洗浄液を大量に使う | 症状に合わず、耳ダレや鼓膜破損時に危険 |
シャンプー時は耳の入口に水や泡が入らないように配慮し、入ってしまった場合は早めに獣医師に相談することが安全です。耳に異常があると感じた段階では、「自宅で治そうとしない」ことが、重症化を防ぐ最大のポイントになります。
動物病院で行う耳の検査と診断の流れ

耳の異常が疑われる場合、動物病院では次のような流れで原因を特定していきます。自己判断で耳掃除や市販薬を使う前に、一度検査を受けて原因をはっきりさせることが重要です。
| 検査の段階 | おもな内容 | 目的 |
|---|---|---|
| ① 問診 | 症状が出た時期・頻度、かゆみの有無、過去の耳トラブル、普段の耳掃除の方法などを確認 | 症状の背景や悪化要因を探る |
| ② 視診・触診 | 耳の入口や耳介の赤み・腫れ・ニオイ、痛みの有無をチェック | 外から分かる炎症や耳血腫などを見つける |
| ③ 耳鏡検査 | 耳の奥の状態や鼓膜の様子を専用スコープで観察 | 外耳炎・中耳炎の有無、異物や腫瘍の確認 |
| ④ 耳垢検査 | 採取した耳垢を顕微鏡で確認 | 細菌・マラセチア・耳ダニなどの原因を特定 |
| ⑤ 追加検査 | レントゲン、CT、MRI、血液検査など(必要な場合) | 中耳炎・内耳炎や全身疾患との関連を調べる |
検査内容は症状の重さや犬の状態によって変わります。痛みが強い場合や怖がりな犬では、保定や鎮静をかけて行うこともあるため、事前に心配な点は獣医師に伝えると安心です。
視診・耳鏡検査で耳の奥をチェックする
視診では、まず獣医師が耳の外側から耳介、耳の入口、顔つきや頭の傾きなどを確認し、赤み・腫れ・傷・腫瘤・耳垢の量や色、においなどをチェックします。視診だけで「どのあたりまで炎症が広がっているか」「痛みの強さ」「外から見える異物や腫瘍の有無」などの大まかな状態が分かります。
耳鏡検査では、「耳鏡」という細長い器具を使い、耳道の奥から鼓膜までを直接観察します。耳鏡を入れる前に、必要に応じて鎮静や局所麻酔を行い、痛みやストレスを減らします。耳鏡を使うことで、外耳炎の広がり具合、鼓膜の破れ・厚み・変形、ポリープや腫瘍、草のノギなどの異物の有無を詳しく確認できます。耳のトラブルの多くは、この視診と耳鏡検査が診断の第一歩となります。
耳垢検査で原因菌や耳ダニを調べる
耳垢検査(耳垢の顕微鏡検査)は、耳の病気の原因を特定するうえで非常に重要な検査です。動物病院では、綿棒や専用のスワブで少量の耳垢を採取し、スライドガラスに塗って染色し、顕微鏡で観察します。
この検査で分かる主なものは、マラセチア(酵母様真菌)・細菌・耳ダニ(ミミヒゼンダニ)などです。どの種類の微生物がどのくらい増えているかによって、使用する点耳薬や内服薬の種類が変わります。特に耳ダニは肉眼で確認しづらく、顕微鏡での確認が不可欠です。
耳垢検査を行うことで、「なんとなくの外耳炎治療」ではなく、原因に合わせた的確な治療が可能になります。再発を繰り返している場合や、治療しても良くならない場合ほど、きちんと耳垢検査をしてもらうことが大切です。
必要に応じて画像検査や全身検査も行う
耳鏡検査や耳垢検査だけでは原因がはっきりしない場合や、症状が重い場合には、レントゲン・CT・MRIなどの画像検査や血液検査などの全身検査が追加されることがあります。
代表的な検査と目的は次のとおりです。
| 検査の種類 | 目的・わかること |
|---|---|
| レントゲン | 中耳の骨の変化、腫れ、膿がたまっていないか |
| CT検査 | 中耳〜内耳の炎症の広がり、腫瘍・ポリープの有無 |
| MRI検査 | 神経症状がある場合の脳や内耳の状態 |
| 血液検査 | 炎症の強さ、全身状態、麻酔に耐えられるかの確認 |
特に、ふらつき・顔のまひ・強い痛みがある場合や、慢性的に治りにくい耳の病気では、耳だけでなく全身の状態を総合的に確認したうえで、治療方針が決められます。
耳の病気の治療方法と通院のイメージ

犬の耳の治療では、「原因に合わせた薬」と「耳の洗浄(クリーニング)」を組み合わせて行うことが一般的です。まず診察と検査で原因菌や炎症の程度を確認し、その結果をもとに点耳薬や内服薬、必要に応じて注射などが処方されます。軽い外耳炎であれば、数日に1回の通院で2〜3週間ほどで落ち着くことが多いです。
通院時には、動物病院で専用の洗浄液を使った耳の洗浄や、耳の中の状態チェックが行われます。慢性化していたり中耳炎・内耳炎まで進行している場合は、通院期間が数か月に及ぶこともあり、治療を途中でやめると再発しやすくなります。
「どのくらい通えばよいか」「自宅では何をすればよいか」は病気や重症度で大きく変わるため、初診時に獣医師に治療の目安期間や通院頻度を確認しておくと安心です。
点耳薬・内服薬など薬物治療の種類
耳の病気の治療では、症状や原因に合わせて点耳薬(耳に入れる薬)と内服薬(飲み薬)を組み合わせることが一般的です。
代表的な薬の種類と役割は次のとおりです。
| 薬の種類 | 目的・役割の例 |
|---|---|
| 抗生物質(点耳・内服) | 細菌感染による外耳炎・中耳炎の治療 |
| 抗真菌薬(点耳) | マラセチアなどカビが原因の外耳炎に使用 |
| ステロイド(点耳・内服) | 強いかゆみや炎症、腫れを抑える |
| 耳ダニ用駆虫薬(点耳・滴下) | 耳ダニ(耳疥癬)の駆除 |
| 消炎鎮痛薬(内服) | 痛みや炎症の軽減、発熱時のケア |
| アレルギー薬(内服) | アトピー・食物アレルギーが関わる耳の炎症を抑える |
点耳薬は正しい量と入れ方を守ることが重要で、自己判断で市販薬を追加したり中断したりすると、悪化や慢性化につながります。内服薬は獣医師の指示どおりの期間きちんと飲ませることが、再発防止と早期回復につながります。
耳の洗浄治療と通院回数の目安
耳の洗浄は、主に外耳炎などで汚れや炎症物質を取り除き、薬が効きやすい環境を整えるための治療です。動物病院では、専用の洗浄液を使い、耳の奥まで安全に洗います。状態によっては麻酔や鎮静が必要になることもあります。
通院回数は病気の種類や重さで変わりますが、目安としては以下のようなケースが多くみられます。
| 症状の程度 | 通院の目安 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 軽度〜中等度の外耳炎 | 週1回を数回(2〜4週程度) | 耳洗浄+薬の効果確認 |
| 慢性外耳炎・再発を繰り返す場合 | 最初は週1回、その後は2〜4週ごとに継続チェック | 悪化防止・ケア方法の調整 |
| 中耳炎が疑われる場合 | 治療初期は短い間隔で複数回 | 洗浄と薬物治療の反応確認 |
「見た目が少し良くなった段階で受診をやめてしまうと再発や悪化につながりやすい」ため、獣医師が指示した通院スケジュールを守ることが重要です。自宅ケアと病院での洗浄治療を組み合わせて行うことで、耳の環境を安定させやすくなります。
慢性化・重症例で必要になる外科手術
耳の病気が慢性化したり重症化した場合、内科治療だけでは改善が難しく、外科手術が選択されることがあります。 主に対象となるのは、難治性の外耳炎・中耳炎、耳血腫、耳道の腫瘍やポリープなどです。
代表的な手術には、耳道を部分的に開いて通気性を確保する手術(耳道外側壁切除術)、耳道を根こそぎ取り除く手術(全耳道切除術)、耳血腫の血液を抜き、耳介を縫合して形を保つ手術などがあります。全耳道切除術では、多くのケースで聴力は失われますが、強い痛みやかゆみから解放され、生活の質が大きく改善することが期待できます。
外科手術を行うかどうかは、症状の重さ、再発頻度、年齢や全身状態、費用面などを総合的に判断して決めます。手術後もしばらくは通院やケアが必要になるため、事前に獣医師から手術方法・リスク・予後について十分に説明を受け、不安点を解消してから検討することが大切です。
自宅ケアと病院治療の違いと役割分担

自宅ケアと病院での治療には、明確な「できること」の違いがあります。自宅ケアの役割は、耳の状態を日常的に観察し、清潔な環境を保つことで悪化を防ぐことです。一方で、耳の病気そのものを治したり、原因を特定して適切な薬を選ぶことは動物病院の役割になります。
自宅では、耳のにおい・色・耳あかの量・かゆがり方などをチェックし、異常に早く気づくことが大切です。気になる症状があれば、自己判断で薬や強い耳掃除を行わず、受診までの間は耳をいじりすぎないようにします。
動物病院では、耳鏡や顕微鏡検査で原因菌や耳ダニを調べ、必要に応じて内服薬、点耳薬、洗浄処置、外科手術まで行います。「自宅=観察とケア」「病院=診断と治療」と役割を分けて考えると、愛犬の耳トラブルをより早く、安全に対処しやすくなります。
自宅でできるのは「悪化させないケア」まで
自宅でのケアでできるのは、あくまで「悪化させない」「再発を減らす」ためのサポートまでです。赤み・におい・痛み・ふらつきなどの症状がある場合は、原因を特定して治療方針を決めるのは動物病院の役割と考えてください。
家庭でできる主なケアは、次のような内容に限られます。
- 獣医師の指示どおりに点耳薬・内服薬を続ける
- シャンプーや水遊びの際に耳に水が入らないように注意する
- 定期的な耳のにおい・色・かゆみのチェック
- 指示があった場合のみ、専用クリーナーでのやさしい耳掃除
逆に、自己判断での頻繁な耳掃除、市販薬の使用、綿棒で奥までこする行為は、症状の悪化や慢性化につながります。「治す」のは病院、「守る・維持する」のが自宅ケアと分けて考えると、判断しやすくなります。
市販薬や自己判断での治療が危険な理由
市販の点耳薬や人用の薬での自己判断治療は、症状を隠してしまい原因の特定を遅らせる点が最大の危険性です。特にステロイド入りの薬は、一時的にかゆみや赤みが引いても、細菌やマラセチア、耳ダニなどの増殖を助長し、重い中耳炎・内耳炎へ進行させることがあります。
また、鼓膜に穴が開いている場合に誤った薬液を入れると、難聴や平衡感覚の異常など取り返しのつかない障害を起こすこともあります。犬種や体質によって適切な薬や濃度も異なるため、インターネットの体験談や過去に処方された薬を真似る対応も危険です。耳の異常に気づいた場合は、市販薬に頼るよりも、早期に動物病院で原因を調べたうえで、指示された治療とケアを行うことが安全です。
耳の異常に気づいたときの対処ステップ

耳の異常に気づいたときは、「どの程度緊急か」をまず見極め、自己流の処置を始める前に受診の段取りを考えることが大切です。
基本的な流れは次のようになります。
-
症状の程度を確認する
痛みが強い、ふらつきがある、耳がパンパンに腫れている、大量出血がある場合は緊急性が高くなります。 -
愛犬の様子を落ち着いて観察・記録する
いつから症状が出ているか、どちらの耳か、かゆみ・におい・分泌物の色などをメモや写真、動画で残しておくと診察がスムーズになります。 -
自己判断で耳を洗ったり、薬を入れたりしない
原因によっては耳洗浄や市販薬で悪化するため、診断前の処置は控えます。 -
動物病院に連絡し、受診のタイミングを相談する
症状を具体的に伝え、当日受診か翌日以降でもよいか、指示を仰ぎます。 -
受診まで安静を心がける
耳をさわり過ぎないようにし、かき壊し防止のためにエリザベスカラーを利用することも検討します。
※詳細な「自宅でのチェックポイント」や「受診までの注意点」は、次の見出しで具体的に解説します。
まず自宅で確認したいチェックポイント
耳に異常を感じたときは、まず次のポイントを落ち着いて確認します。ただし強い痛み・ふらつき・大量出血などがある場合は、観察より受診を優先します。
| チェックポイント | 見る・嗅ぐ・触るポイント |
|---|---|
| におい | 酸っぱい・腐ったような強いにおいがないか |
| 耳あか・分泌物 | 茶色・黒色・黄緑色など、いつもと違う色や量か |
| 赤み・腫れ | 耳の入り口や耳たぶが赤く熱を持っていないか |
| しぐさ | 耳をかく、こする、頭を振る、首を傾けるなどが増えていないか |
| 触ったときの反応 | 軽く触れただけで嫌がる、痛がる様子がないか |
| 全身状態 | 元気・食欲・歩き方・呼びかけへの反応に変化がないか |
いつもと少しでも違うと感じた場合は、スマホで耳の写真や動画を撮影し、早めの受診で獣医師に見せると診断の助けになります。
すぐに耳を洗わないほうがよいケース
耳に異常を見つけると、すぐに耳掃除をしたくなりますが、自己判断で耳を洗うと症状を悪化させることがあります。次のような場合は、耳を洗わずに動物病院を受診することが推奨されます。
| 耳を洗わないほうがよいケース | 理由 |
|---|---|
| 強い痛みがある、触ると怒る | 洗浄による刺激で激痛になり、診察が困難になるため |
| 耳から血や黄緑色の膿が出ている | 中耳炎や外傷の可能性があり、洗浄で悪化するリスクがあるため |
| 激しい赤み・腫れ・熱感がある | 炎症が強い状態で洗うと、さらに炎症が広がるため |
| ふらつき・斜頸・ぐるぐる回るなど神経症状がある | 内耳や中耳の障害が疑われ、水が入ると危険なため |
| 鼓膜の状態がわからない、破れている疑いがある | 鼓膜穿孔時の洗浄は内耳障害や難聴の原因になるため |
「いつもと違う」「かなりひどそう」と感じる耳の異常がある場合は、自宅で耳掃除や点耳を行わず、動物病院での診断を優先することが重要です。
受診までの過ごし方と注意点
受診までのあいだは、耳をいじり過ぎず、悪化させないことが最優先です。自己流の処置は避け、動物病院での診察までできるだけ耳の状態を保ちましょう。
主なポイントは以下の通りです。
- 耳の中に綿棒や指を入れない:奥の汚れを押し込んだり、鼓膜を傷つけるおそれがあります。
- 点耳薬・市販薬・人間用の薬を使わない:症状を隠して診断を難しくしたり、悪化させる危険があります。
- シャンプーや水遊びは中止する:耳の中に水が入ると炎症や感染が強くなります。
- 耳をかきむしらないように工夫する:エリザベスカラーや服を活用し、耳をこすれないようにします。
- 散歩や運動は軽めにする:痛みやふらつきがある場合は無理をさせないようにします。
また、受診時のために、症状が出始めた時期・きっかけ・食事内容・使用中の薬やサプリなどをメモしておくと、診断と治療方針がスムーズに決まりやすくなります。
こんな症状は今すぐ受診が必要なサイン

※以下のような症状は、自己判断で様子を見るのではなく、できるだけ早く動物病院を受診することが重要です。
| 今すぐ受診が必要な主なサイン | 具体例 |
|---|---|
| 強い痛みがありそう | 耳や頭を触ると激しく嫌がる・鳴く、落ち着かずうろうろする |
| 神経症状がある | ふらつき、まっすぐ歩けない、ぐるぐる回る、目が揺れる、顔のマヒ |
| 急な腫れや出血 | 耳介が急にパンパンに腫れる、大量の出血や血の混じった分泌物 |
| 全身状態の悪化 | 急な元気消失、高い発熱、食欲がほとんどない、ぐったりしている |
| 子犬・高齢犬での異常 | 軽い症状に見えても、短時間で悪化する可能性が高い |
「少しおかしいかも」と迷う場合でも、耳の痛みや神経症状がある場合は当日中の受診を目標にしましょう。夜間や休日で不安が強い場合は、夜間救急動物病院への相談も検討してください。
痛み・ふらつき・神経症状がある場合
強い痛みやふらつき、神経症状があるときは、耳の病気がすでに重症化している可能性が高く、すぐに動物病院を受診することが重要です。
代表的な危険サインは次のような症状です。
| 症状のタイプ | 具体的なサインの例 |
|---|---|
| 痛み | 耳や頭周りに触れると激しく嫌がる、キャンと鳴く、頭をかばう |
| ふらつき | まっすぐ歩けない、よろける、片側に倒れそうになる、ぐるぐる回る |
| 神経症状 | 首をかしげたまま戻らない、眼球がピクピク動く(眼振)、意識がぼんやりする |
中耳炎・内耳炎が神経に影響している場合や、脳の病気などが隠れているケースもあります。自宅で耳掃除や薬を使って様子を見ることは危険なため避け、診療時間内で最も早いタイミングで受診してください。移動中は無理に耳を触らず、できるだけ頭を揺らさないよう静かに連れて行くと安心です。
耳介の急な腫れや大量の出血がある場合
耳介(耳たぶ)が急にパンパンに腫れたり、耳から血がにじむ・ポタポタ垂れる場合は、緊急性が高い症状ですぐに動物病院を受診する必要があります。
代表的な原因は、耳血腫(みみけっしゅ)や耳の血管の損傷、腫瘍・外傷などです。特に耳血腫は、強いかゆみや痛みで頭を振ったり耳をかき壊した結果、耳介内で出血して腫れ上がります。放置すると耳介がしわしわに変形し、慢性的な痛みや感染につながるおそれがあります。
大量の出血や、タオルで押さえても血が止まりにくい場合、自宅で様子を見るのは危険です。出血部位を清潔なガーゼやタオルで軽く押さえ、首回りがきつくならないよう注意しながら早急に動物病院へ連れて行ってください。市販薬の塗布や自己流の包帯固定は、かえって悪化させる原因になります。
子犬・高齢犬・持病がある場合の目安
子犬・高齢犬・持病がある犬は、同じ症状でも元気な成犬より短時間で急変しやすいため、軽い耳の異常でも早めの受診が安全です。
目安として、次のような場合は受診を検討してください。
| 犬の状態 | 受診の目安 |
|---|---|
| 子犬(1歳未満) | 耳のかゆみ・におい・赤みが1日以上続く、黒い耳あかが出る、元気や食欲が少しでも落ちたときは受診を推奨 |
| 高齢犬(7~8歳以上) | ふらつき、首を傾ける、呼んでも反応しづらいなどが少しでも出たら当日~翌日中に受診 |
| 持病あり(心臓病・腎臓病・てんかん・アレルギーなど) | 耳の症状に加えて食欲低下・咳・呼吸が荒い・発作が出た場合は、耳のトラブルでも早急な診察が必要 |
特に子犬と高齢犬は痛みや不調を隠しやすく、飼い主が気づいた時点で病状が進んでいることも多いため、「少し様子を見る」より「念のため診てもらう」方が安心です。
自宅でできる正しい耳掃除と頻度の目安

耳掃除は「汚れを取りきること」よりも「耳の環境を乱さないこと」が大切です。健康な犬でも、月1〜2回を目安に、耳の入り口周辺だけを優しくケアする程度にとどめます。
一般的な頻度の目安は次のとおりです。
| 犬のタイプ・生活環境 | 耳掃除の目安頻度 |
|---|---|
| 健康な成犬・室内飼い | 3〜4週に1回程度 |
| たれ耳・耳道が湿りやすい犬種 | 2〜3週に1回程度 |
| 水遊び・プールが多い犬 | 水に入った日〜数日以内に1回 |
| 耳トラブルを繰り返す犬 | 動物病院の指示に従う |
耳掃除は、必ず犬用の耳洗浄液を使い、綿棒を耳道の中に入れない方法が基本です。耳の中が赤い、においが強い、痛がるなどの異常がある場合は、自宅での耳掃除を中止し、まず動物病院で診察を受けることが重要です。
耳掃除が必要な耳と触らないほうがよい耳
耳掃除は「汚れがたまりやすい耳」にだけ行うのが基本です。健康な耳はあまり掃除をしないほうがトラブルが起こりにくいとされています。
| 耳掃除が必要な耳 | 触らないほうがよい耳 |
|---|---|
| 耳の入り口にうっすら耳あかが見える | 耳の奥まできれいで、においがほとんどない |
| うすい黄色〜薄茶色のサラサラ耳あか | ピンク色でしっとりしているが、べたつかない |
| 動物病院で「自宅での耳掃除が必要」と指示されている | 獣医師から「自宅では耳掃除不要」と言われている |
赤み・腫れ・悪臭・ベタベタした分泌物・強いかゆみがある耳は、自宅で掃除を始めず受診が最優先です。炎症がある状態で耳掃除をすると、症状が悪化したり、原因の観察が難しくなったりします。健康な耳は、月に1回程度、入り口を軽く拭き取る程度にとどめると安全です。
安全な耳クリーナーの選び方
耳クリーナーは何でも良いわけではなく、成分や用途を確認して選ぶことが大切です。基本は「犬用」「耳専用」と明記され、アルコールや強い香料が少ない低刺激タイプを選ぶことが重要です。
代表的なタイプと特徴は次の通りです。
| タイプ | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 水剤タイプ | サラッとして乾きやすい | 日常ケア、軽い汚れ |
| オイルタイプ | 皮脂や耳あかを浮かせる | ベタついた耳あかが多い犬 |
| イヤーローション(洗浄液) | 洗浄力が高め | 動物病院で使い方の指示がある場合 |
・アロマオイル入り、メントール強め、ヒリヒリ感のあるものは炎症耳には不向きです。
・アレルギー体質の犬では、防腐剤や香料が少ない製品を選び、初めて使うときは少量で様子を見ると安心です。
・外耳炎など治療中の場合は、動物病院で指定されたクリーナー以外は使わないことが安全です。
綿棒を使わない耳掃除の基本手順
犬の耳掃除は、「耳の入り口だけをやさしく」「綿棒は使わない」ことが基本です。代表的な手順をまとめます。
-
耳の状態を観察する
赤み・強いにおい・ベタつく分泌物・痛がる様子がないか確認します。少しでも異常があれば自宅で耳掃除をせず、動物病院で相談します。 -
道具を準備する
犬用耳クリーナー、コットンまたはガーゼ、タオルを用意し、犬が動きにくい落ち着いた場所で行います。 -
耳クリーナーを耳の中に入れる
ノズルを耳の入り口に軽く当て、耳道の中を直接こすらないようにしながら、適量を注入します。 -
耳の付け根をやさしくマッサージする
耳の付け根を数十秒ほどもみほぐし、汚れとクリーナーをなじませます。その後、犬が頭を振るのを待ちます。 -
出てきた汚れを拭き取る
コットンやガーゼで、耳の入り口から見える範囲だけを拭き取ります。奥まで突っ込んだり、綿棒でかき出したりしないことが重要です。
掃除後もかゆみやにおいが続く場合は、無理に繰り返さず、早めに受診すると安全です。
耳の病気を繰り返さないための予防習慣

耳の病気を繰り返さないためには、「耳をきれいにすること」だけでは不十分です。耳の環境を悪化させる要因を減らし、炎症が起こりにくい生活習慣を続けることが重要です。
予防の基本は、適切な頻度での耳掃除と、清潔な生活環境の維持です。耳垢が少ないタイプの犬に頻繁な耳掃除を行うと、かえって刺激となり炎症の原因になります。獣医師に耳の状態を確認してもらい、「その犬に合った耳掃除の頻度」を決めると安心です。
また、アレルギー体質や皮膚トラブルがある犬では、食事内容やシャンプー、ハウスダスト対策も耳の再発予防に関係します。シャンプーや水遊びの後は耳の入り口を軽く拭き取り、耳の中に水分を残さないようにします。
何度も耳の病気を繰り返す場合は、体質やアレルギーなど根本原因の検査・治療を早めに相談することが、長期的な予防につながります。
日常のチェックとスキンシップでの観察
毎日のスキンシップの時間を使って、耳の状態を「ながらチェック」することが予防の第一歩です。ポイントは、見た目・におい・さわったときの反応の3つを毎回同じように確認することです。
目安として、次のような項目を意識すると異変に気づきやすくなります。
| 確認すること | 正常な状態の目安 | 要注意のサイン |
|---|---|---|
| 見た目 | うすいピンク色で適度な耳あか | 赤い、腫れている、黒い・黄緑の耳あか |
| におい | ほとんど気にならない程度 | 酸っぱい・生臭い・チーズのようなにおい |
| さわった反応 | 触っても嫌がらず落ち着いている | 触ると怒る・逃げる・痛がる |
なでたりマッサージしたりする際に、耳の付け根や耳介をそっと触り、左右差や熱っぽさ、ふくらみが無いかを確認します。いつもの状態を把握しておくと、少しの変化でも早く気づきやすくなり、重症化する前に受診しやすくなります。
シャンプー・水遊び後に気をつけること
シャンプーや水遊びの後は、耳の中が湿った状態になることで外耳炎などのリスクが高まります。濡れたまま放置しないことが最も重要なポイントです。
- シャンプー時は、事前にコットンを軽く耳の入り口に当てるなどして、水が耳道に大量に入らないようにします(奥まで詰め込まない)。
- 洗い終わったら、タオルで耳の外側と耳の付け根をしっかり拭き、耳の入り口にたまった水分もガーゼやコットンでやさしく押さえて吸い取ります。
- ドライヤーは直接耳に当てず、温風を弱くして少し離した位置から全身を乾かしながら耳周りも乾燥させます。
- プールや川遊びなどでたくさん水が入った可能性がある場合は、耳の中を覗き、赤みやにおいがないかを確認します。
水遊び後に「におい」「赤み」「かゆみ」「頭を振る」様子があれば、自宅で耳掃除を繰り返すより、早めの受診が安全です。
アレルギー対策や食事管理でできる予防
アレルギー体質の犬は、耳の皮膚も炎症を起こしやすく、食事や生活環境の見直しが耳の病気予防に直結します。
代表的なポイントは次の通りです。
- アレルギー検査や獣医師の診断に基づいて、原因となるタンパク源(牛・鶏・乳製品など)を避ける
- 獣医師推奨のアレルギー対応フード(加水分解タンパク・限定原材料フードなど)へ切り替える
- おやつ・人間の食べ物も、原材料表示を確認しアレルゲンを徹底的に排除する
- 腸内環境を整える目的で、適切な繊維質やオメガ3脂肪酸(EPA・DHA)を含むフードを選ぶ
- ハウスダスト・花粉対策として、寝床やカーペットをこまめに洗濯し、室内を掃除する
「耳だけ」の問題に見えても、全身のアレルギーコントロールができていないと再発を繰り返します。 一度耳が良くなっても、食事と環境を長期的に整えることが重要です。
治療費の目安とペット保険の活用ポイント

耳のトラブルは軽い外耳炎から手術が必要な中耳炎・腫瘍まで幅があり、治療費も大きく変わります。「どのくらい費用がかかりそうか」「ペット保険でどこまで補償されるか」を事前にイメージしておくと、いざという時に迷わず受診しやすくなります。
ペット保険を選ぶ際は、耳の病気が「補償対象かどうか」「慢性疾患や再発疾患も対象か」「通院・入院・手術のどこまで補償されるか」を必ず確認しましょう。耳の病気は再発や長期化が多いため、通院補償と慢性疾患の継続補償がある商品が安心です。また、加入前から指摘されている外耳炎やアレルギー性皮膚炎などは「既往症」として補償されないケースが多いため、健康なうちからの加入がポイントになります。
外耳炎・耳血腫など主な病気の費用感
外耳炎や耳血腫など、犬の耳の病気の治療費は症状の重さ・必要な検査・通院回数で大きく変わります。おおよその目安は次の通りです。(金額は1回あたり、または1エピソードあたりの概算です)
| 病名・状態 | 主な治療内容 | 費用の目安(税込) |
|---|---|---|
| 軽い外耳炎(初期) | 診察、耳鏡・耳垢検査、洗浄、点耳薬 | 5,000〜10,000円 |
| 慢性外耳炎・再発を繰り返す外耳炎 | 上記+再診複数回、内服薬、培養検査など | 20,000〜50,000円程度 |
| 中耳炎・内耳炎 | 画像検査(レントゲン・CTなど)、内服薬、点滴など | 30,000〜10万円以上 |
| 耳ダニ(耳疥癬) | 診察、耳垢検査、洗浄、駆虫薬 | 5,000〜15,000円 |
| 耳血腫(内科的治療) | 穿刺排液、ステロイド注入、包帯固定など | 10,000〜30,000円 |
| 耳血腫(外科手術) | 全身麻酔下手術、術後通院 | 50,000〜15万円程度 |
同じ病名でも、体重や地域、動物病院の方針によって費用は変動します。 正確な金額を知りたい場合は、受診時に見積もりを確認すると安心です。
慢性耳疾患にペット保険を使うときの注意
慢性の外耳炎や中耳炎など、長期間の治療が必要な耳の病気では、ペット保険の補償条件を事前に細かく確認することが大切です。とくに「慢性疾患の扱い」「同一疾患の支払限度」「更新後も継続補償されるか」の3点は必ずチェックしましょう。
代表的な注意ポイントをまとめると、次のようになります。
| 確認ポイント | 注意したい内容 |
|---|---|
| 慢性疾患の補償可否 | 慢性外耳炎・アレルギー性耳炎などが「対象外」になっていないか |
| 同一疾患の限度 | 1疾患あたりの支払上限額・通院回数制限がないか |
| 更新時の条件変更 | 長期治療で継続すると「部位・疾病不担保(補償外)」にされないか |
| 免責金額・自己負担 | 毎回の診察・耳洗浄に対し、実際にどの程度戻ってくるか |
| 加入前の既往歴 | 加入前から続いている耳トラブルは、補償対象外になることが多い |
耳の病気が出てから慌てて保険を検討すると、既往歴扱いで補償されないケースが多くなります。若い健康な段階から、慢性疾患にも強いタイプの保険を選んでおくと安心です。
犬の耳の病気は、かゆみやにおいなど一見ささいなサインから始まり、放置すると中耳炎・内耳炎や難聴など重症化することがあります。本記事では、早期発見につながる12のサインと代表的な病気、受診の目安や治療内容、自宅ケアと予防のポイントを整理しました。普段から耳の状態を観察し、気になる症状があれば早めに動物病院へ相談することが、愛犬のつらさを減らし、将来の大きなトラブルを防ぐことにつながるといえます。
