去勢手術は、犬にとってストレスの多い経験です。
去勢にメリットが多いことは分かっていても、手術後に性格が変わってしまうといった話を聞くと、飼い主さんも不安になってしまいますよね。
では、去勢することで、いったいどのような変化が現れるのでしょうか。この記事では、去勢後の犬たちの様子や性格の変化がイメージできるよう、さまざまな疑問点についての情報をご紹介します。
去勢手術後のケアのポイントも解説しますので、是非参考になさってください。
去勢で犬の性格は変わるのか?
去勢すると、性格が穏やかになったり、飼いやすくなったりする、という話を聞いたことはありませんか?
そもそも、去勢手術によって、愛犬の性格が変わることがあるのはなぜでしょうか。
ここでは、なぜ、去勢手術で性格が変わるのか、具体的にどのような変化が考えられるのか、について解説します。
問題行動が抑えられる
オス犬の男性ホルモンが影響する問題行動として、次のようなことが挙げられます。
- 発情期のメスを追って脱走する
- 縄張り意識が高まることでケンカが増える
- 片足を上げておしっこをしてマーキングする
そして、去勢手術により、男性ホルモン「テストステロン」の分泌が抑えられることで、問題とされる男性ホルモンが影響する行動が軽減されます。
気弱になる
もともとオスは活発でやんちゃタイプが多く、飼い主さんに忠実でもしものことがあったときに立ち向かってくれるような勇敢な子も少なくありません。そんな活発な部分がありながら、実は甘えん坊で寂しがり屋な一面もあるというところが、オス犬のかわいいところです。
しかし去勢後は、その活発さに影響する男性ホルモンの分泌が抑えられることで、自信を無くしたようになってしまったり、気弱になってしまったりすることがあるといいます。
もしも愛犬がもともと臆病な性格だという場合は、事前のしつけやトレーニングであらかじめ自信をつけさせてあげてから、去勢を検討するとよいでしょう。
一時的な変化の場合もある
去勢手術をした犬は、病院そのものや手術に必要な処置などで怯えていたり、病院に一人置いて行かれたショックがあったりと、直後は強いストレスを感じている場合があります。そのため去勢後の性格の変化が、直後のストレスからくる一時的なものである可能性も否定できません。実際に性格の変化を感じなかったとか、感じても一瞬だったという先輩飼い主さんの話も聞きます。
このように、手術後、ショックから愛犬の性格や行動にも変化があるかもしれません。そのようなときは、しばらく様子を見ていてあげてください。
愛犬によって性格にもそれぞれ個性があるように、術後の変化にもそれぞれ違いがあります。万が一、心配なことがあるようであれば、獣医師やトレーナーなどに相談するとよいでしょう。
去勢で犬の『困った』が治るのか?
去勢によって起こる行動や性格の変化は、主に、男性ホルモンが抑制されることによるものです。
そのため、『困った』行動が、男性ホルモン以外の要因からくるものである場合は、その行動が抑えられる可能性は低いといえます。
では、現在困っている愛犬の行動は、去勢手術によって治る可能性はあるのでしょうか?
ここでは、去勢手術によって治る可能性がある問題行動、治すことが難しい問題行動について解説します。
マウンティングや片足おしっこを治すのは難しい?
男性ホルモンが影響する行動は、ホルモンの分泌が抑えられると減ったり、なくなったりすることが一般的です。しかし、マウンティングや片足を上げたおしっこなど、男性ホルモンからくる行動であっても、去勢によって治らない場合もあります。
たとえば、すでにマウンティングをしている犬や遊びのつもりでマウンティングしている犬の場合、去勢手術を受けてもマウンティングを治すことは難しいようです。片足を上げたおしっこも同様で、すでにくせがついてしまっている子を治すことは難しいといえます。
そのため、マウンティングや片足を上げておしっこをさせたくないという場合は、そのくせが定着してしまう前に去勢手術をする必要があります。男の子をお迎えしたら、早めに獣医師に相談するとよいでしょう。
人や犬を攻撃してしまう理由
犬の攻撃性は男性ホルモンだけでなく、
- 血統
- 飼い主さんの接し方
- 生活環境
などさまざまな要素が影響します。
男性ホルモンの影響で起こす問題行動については、去勢後に落ち着く場合も少なくありません。たとえば、発情期のメスをめぐって去勢していないオス同士でケンカしてしまったり、突然交配してしまったりといった行動はなくなります。
しかし、問題行動の原因が血統、飼い主さんの接し方や生活環境によるものだった場合、去勢による改善は期待できません。このような場合は、まず、飼い主さんの接し方や生活環境を変えてあげることが大切です。そして、しつけやトレーニングで改善していく必要があります。
心配な行動がある場合は、獣医師や専門のトレーナーさんなどに相談するとよいでしょう。
気を付けたい去勢後ケアの3つのポイント
去勢手術は、術後のストレスを最低限に軽減するため、多くの場合日帰りで行われます。そして問題がなければ帰宅し、自宅での飼い主さんによって術後管理をすることになります。
術後飼い主さんは、手術を終えて疲弊している愛犬のどのようなことに気を付けてあげたらよいのでしょうか。ここでは、気を付けてあげたい去勢後のケアのポイントを3つご紹介します。
体のケア:安静を心がけて
自宅に戻ってから抜糸までの数日間は、安静にする期間です。
特に当日は、散歩も極力控えましましょう。また傷口が開いてしまう可能性もあるため、抜糸までは、激しい運動は避けてください。散歩のときも走らせないようにし、ドッグランに連れていくのもやめておきましょう。
また、麻酔をしているため、当日の食事は無理に食べさせる必要はありません。お水も少しずつ与えてあげてください。
去勢後は、代謝が落ちて太りやすくなるため、愛犬が食べたがってもフードは今まで通りの量を与えるようにしましょう。もしも体重が増えてしまうようであれば、獣医師に相談し専用のフードに切り替えてあげるのもよい方法です。
なお、去勢後の過ごし方とケアについては、次の記事でご紹介しています。
愛犬の去勢後の流れと回復の様子。これだけ気をつければ安心!
心のケア:リラックスを心がける
手術後は、知らない人・知らない場所といった環境や手術に必要な処置などで怯えていたり、病院に置いて行かれたショックがあったりと、愛犬もそれなりに精神的にダメージを受けています。
なかにはダメージが大きく、食べられなくなってしまう子もいます。
特に手術当日は、多めにスキンシップをとってあげたり、好きなおやつを与えてあげたりしながら、少しずつ気持ちを和らげてあげましょう。
なお翌日以降は、術後だからと甘やかす必要はありません。普段と同じ接し方、同じ生活に戻していきましょう。
食事のケア:肥満に注意
去勢すると、ホルモンのバランスが崩れ代謝が低下するため、太りやすくなります。さらに発情からくるストレスもなくなり、手術前より食欲が増すこともあります。
そのため去勢後は、体重が増え過ぎないよう適切に食事管理すること、筋肉がつけられるよう積極的に運動させてあげることが大切です。それでも心配だったり、体重が増えたりするようであれば、獣医師に相談し専用のフードに切り替えることをおすすめします。
犬にとっても、肥満はケガや病気のもとになります。愛犬の健康のため、しっかりと体重管理してあげてください。
まとめ
去勢手術は、愛犬にとってストレスの多い経験です。
たとえメリットをふまえて決断したとしても、飼い主さんの不安は尽きないでしょう。しかし飼い主さんの不安は、愛犬にも伝わってしまいます。どんな手術をするのか、術後はどんなことに気を付けたらよいのか、事前に分かっていれば、飼い主さんも落ち着いて対応することができるでしょう。
術後のケアも不安だったり、大変だったりするかもしれませんが、手術という大仕事をやってのけた愛犬のために、十分にケアしてあげてください。
もしも去勢後に「性格が変わった?」と感じたとしても、今までと変わらず愛情をもって接してあげてくださいね。