犬の去勢手術

雄の犬を迎えたら考えておきたい「去勢手術」

去勢手術の目的や、手術するタイミング、手術することで得られるメリットやデメリットなど併せてご紹介します。

去勢手術後のメリット

雄は去勢をしたほうが飼いやすいと、目や耳にしたことがあるのではないでしょうか。

何故そう言われているのか、去勢手術することで、愛犬にとってどんなメリットがあるのでしょうか。

*病気を妨げる*

睾丸を摘出してしまうので、「精巣腫瘍」など、睾丸の病気の心配はなくなります。

特にシニア期に入ると前立腺疾患が起こりやすくなりますが、去勢手術によって精巣を取り除くと前立腺が委縮するので、「前立腺肥大症」や命にも関わる「前立腺腫瘍」にかかりません。

また、「肛門周囲腫瘍」や「会陰ヘルニア」など、男性ホルモンに影響される疾患を予防、または治療することにも役立ちます。てんかんや内分泌異常など、全身性の疾患のコントロールに去勢手術が有効な場合がありますので、手術を行う際は、現状の症状について獣医師と相談するようにしましょう。

*穏やかになる*

見知らぬ人への攻撃的な態度をとっていたような犬が手術後は、手術前よりも穏やかになると言われることが多いです。

性ホルモン分泌の変化で、発情から開放され、縄張り意識が弱まるためと言われています。

*問題行動が少なくなる*

具体的には、縄張りをめぐるケンカ、マーキング、発情期のメスを追いかけて脱走する、などの問題行動が減る傾向にあります。

オスの場合、片足をあげて排尿をさせたくないという考えから、足を上げるスタイルが定着してしまう前に去勢手術を施す場合もあります。ただし、マーキング行動が癖になってしまっている場合、去勢をしても行動改善が見られない場合もあります。

*ストレスが減る*

万病のもとであるストレスを減らしてあげられます。未去勢の場合、交尾欲や他の犬に対する攻撃性、縄張り本能など様々なストレスを感じやすくなります。去勢手術をすることで、これらのストレスを予防することができます。

*望まない繁殖を防げる*

飼い主の望まない繁殖を防ぐことができます。万が一、散歩中やドッグランなどで誤って雌と交尾してしまう、という事故を防ぐことができます。また、他頭飼いの場合でも安心して過ごせます。

去勢手術後のデメリット

去勢手術をして、飼い主が以下のデメリットを感じて後悔していることもあるようです。

*太りやすくなる*

去勢をすると、性ホルモンの分泌バランスが崩れるために太りやすくなるというデメリットがあります。去勢後は、適切な食事管理と、筋肉がつけられるような運動を積極的に行うようにしましょう。

*毛づやが悪くなる*

個体差がありますが、ホルモンバランスの乱れによって毛づやが悪くなる犬もいます。毛質や毛色が変化するケースも、まれにあります。

*性格が消極的に*

もともと臆病な性格の犬が、もっと臆病になってしまったり、去勢後に自信を無くしてしまう例もあるそうです。

去勢手術と寿命の関係性

去勢や避妊手術が犬の寿命にどう影響するかという研究が、多くされています。研究結果は様々で、去勢によって長生きするとする説、寿命が短くなるとする説、ほとんど有意差が見られないとする説があります。現段階では、去勢と寿命の関係性は明言はできないと考えられます。

犬の去勢時期はいつから可能?

犬の性成熟期は、だいたい生後5~7ヵ月に始まり、マーキングしたり、自分より弱い個体に乗ったりなどの行動が出始めます。他にも、この頃になると、乳歯が抜けて永久歯に生え変わり、身体も成熟し始める為、この時期に手術を行うことが推奨されています。

物理的には、生後2~3ヵ月から去勢手術は可能です。欧米では保護犬を譲渡する前に、子犬でもほとんどが去勢を済ませているそうです。ただ、幼齢すぎるうちに去勢をしてしまうと、肥満傾向が高まる可能性があるといった研究結果もあるので、一般の家庭犬であればそれほど急いで手術する必要はないでしょう。かかりつけの獣医さんとよく相談をしながら、愛犬にベストな去勢の時期を決めてください。

手術はのような流れ?

*手術前*

まず、手術を行う前に、動物病院に去勢の相談に行きましょう。仔犬であれば、成長具合で睾丸が下りてきているかなどを診てもらった上で、手術する日を決めます。

病気の治療以外で去勢手術を行う場合、健康な状態で行うことが基本ですので、手術前の体調管理には気をつけましょう。下痢や嘔吐、ご飯を食べる量がいつもより少ないなど、普段と違うサインがあるようであれば、手術当日であってもすぐに獣医さんに相談して、手術を延期しましょう。

また、手術後は抜糸も含めて1週間から10日ほどは、全身のシャンプーやカットを行う事はできません。なので、トリミングが必須の犬種(トイプードルなど)の場合は、事前にカットなどを済ませておくと良いでしょう。ただ、トリミングも犬にとってストレスだったり、負担になって、体調を崩すこともあります。なるべく手術直前の予約は避けましょう。

*手術当日*

手術の流れは病院によって多少異なりますが、全身麻酔や手術を行えるか術前検査を行い、異常がないことを確認したうえで手術を行うのが一般的です。

絶食、絶水を指示されることが多いです。これは、全身麻酔時に嘔吐により誤嚥を防ぐ目的があります。病院から、絶食、絶水がどのくらい前から必要なのか等の指示があるので、きちんと確認して実行しましょう。

*手術後*

病院の方針によりますが、退院は当日もしくは数日の入院後になります。手術後は、1週間から10日後を目安に抜糸が行われます。その間、過激な運動は避けましょう。

また、犬は痛みや違和感に対してなめようとする本能があります。退院直後はまだ手術部位に痛みが残っていることが多く、傷口をなめようとする犬がほとんどです。手術後の傷口をなめてしまうと、傷が治りにくくなり、最悪の場合、傷口が開いてしまうこともあります。愛犬が傷口を気にするようであれば、抜糸まではエリザベスカラーや手術後用の服を着用するなどして、傷口をなめさせないようにさせましょう。

まとめ

当然のことながら、犬の去勢手術にはメリットもあればデメリットもあります。

生殖器の病気の予防やストレス軽減や行動面の改善につながるのがメリット、太りやすくなるのがデメリットと言えます。

メリットとデメリット、さらには性格やほかの病気との兼ね合いで、去勢手術を行うのであればその時期を獣医師と相談のうえで決めましょう。

去勢手術は、雄の犬が、家族としてより快適に暮らすために有益なことです。一般家庭で未去勢の雄や未避妊の雌などの多頭飼育をしている場合は、とくに前向きに去勢や避妊を検討したいものです。

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