「犬の耳が普段よりも赤くなっている」
「普段は見ることがない色の耳垢がついている」
愛犬の耳をチェックしていて、普段とは様子が異なることはありませんか?
もし犬の耳が赤くなっていたり、見慣れない色の耳垢が多くついている場合は、外耳炎が考えられます。外耳炎は、犬がかかりやすい病気の一つです。
その中でもマラセチア外耳炎という耳の病気は、犬が発症しやすい病気です。一体どんな病気なのか、ご存知ではない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事ではマラセチア外耳炎とは何か、犬がなぜマラセチア外耳炎にかかりやすいのかについて解説します。「愛犬の耳の状態がいつもと違うから気になっている」という飼い主さんは、ぜひ参考にしてください。
そして、必要に応じて動物病院を受診するようにしましょう。
犬のマラセチア外耳炎って何?どんな症状?
マラセチアはカビの一種
マラセチアとは、酵母菌という真菌です。
カビの一種で、何も問題の起きていない正常な犬の皮膚にも存在する常在菌です。
よく知られているカビとは違い、普段は悪さをすることはありません。
そのため、マラセチアは善玉カビといわれています。
しかし、犬の耳の中が不衛生な状態になると、マラセチアが異常に増殖します。
異常な増殖をしたマラセチアによってこげ茶色〜黒色の耳垢が大量に発生し、それによって外耳炎を発症するのです。
耳の中はマラセチアの栄養源となる皮脂が分泌されているので、耳を清潔な状態に保たないとマラセチアが繁殖しやすい環境になります。
そのため、犬の耳の中は定期的にチェックして綺麗な状態を保ってあげましょう。
見受けられる症状
犬がマラセチア外耳炎になると、以下の症状が見受けられます。
- こげ茶色〜黒色の耳垢が大量に発生する
- 耳の中に炎症が起こる
- 強いかゆみがある
- 耳の脱毛
- 耳から悪臭がする
- 音への反応が鈍くなる
- 犬が耳をよくかくようになる
犬にこのような症状が出ると、マラセチア外耳炎を発症している可能性があります。
いち早く症状に気づくためにも、普段から愛犬の耳の様子はチェックするようにしましょう。
普段の耳の状態を把握して、異変にすぐ気づける状態が理想的です。
なぜ犬はマラセチア外耳炎になりやすいのか
犬がマラセチア外耳炎になりやすい理由は、以下の3つが考えられます。
- 皮膚の免疫力の低下
- 湿気を好む
- 脂質を好む
皮膚の免疫力・状態が下がっているときにかかる
マラセチアは、皮膚の免疫力が低下している時に問題を起こす場合がほとんどです。
耳がかゆくてよくかいている犬は、耳をかくことによって皮膚の状態が悪くなりがちなので、マラセチア外耳炎を発症しやすいです。
アレルギーやアトピーがある犬も、皮膚の免疫力は低下しているので発症しやすいでしょう。
また甲状腺低下症などの内分泌疾患がある犬は、皮膚表面だけではなく体の免疫力が落ちやすいので、マラセチア外耳炎を発症しやすいです。
皮膚や体の免疫力が低下している犬は、体質に問題がない犬と比べてマラセチア外耳炎にかかりやすいといえます。
湿気を好む
犬の耳の中に湿気がたまりやすいということも、発症の原因の一つです。
マラセチアは、湿度を帯びた状態が続くと増殖します。
そのため、マラセチア外耳炎はジメジメした梅雨の時期や、夏に発症しやすいといわれています。
しかし、近年は犬の室内飼いも増え、部屋の中で暖房を使用している冬でも発症しやすいといわれているのです。
トリミングでシャンプーをした際に、耳をよく乾かさず湿ったままにしておくことも、マルセチア外耳炎になりやすい要因の一つです。
ほかにも、耳の構造的にほかの犬種よりも湿気がたまりやすい犬種も存在します。
それが、垂れ耳の犬種です。
垂れ耳の犬種には、以下のような犬がいます。
- トイ・プードル
- パグ
- ビーグル
- マルチーズ
- ボーダー・コリー
- ノーフォーク・テリア
垂れ耳の犬種は、耳が蓋のように外耳道を塞いでいるので、湿気が逃げにくく蒸れやすい状態です。
そのため、ほかの犬種に比べてマラセチア外耳炎になりやすいといえるでしょう。
垂れ耳の犬種を飼っている飼い主さんは、愛犬の耳を守るために定期的に耳の状態をチェックしてあげるようにしましょう。
脂質を好む
マラセチアは、脂質を好みます。
そのため、犬の皮脂の分泌が増えると、皮脂を栄養源にしてマラセチアは増殖します。
特に脂漏体質の犬は、皮脂の分泌が多い傾向があるので注意が必要です。
- シーズー
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- ホワイト・テリア
これらの犬種は遺伝的に脂線の数が多いとされ、マラセチアが増殖しやすい傾向にあります。
皮脂が耳の中にたまりすぎないように、耳の汚れを発見したら柔らかいコットンなどで拭いてあげるとよいでしょう。
犬のマラセチア外耳炎は治るのか
マラセチア外耳炎は、耳洗浄や薬物療法で治療することができます。
耳洗浄は薬用のイヤークリーナーで、定期的に耳の中を洗浄します。
もしマラセチアの数が異常に多ければ、抗真菌点耳薬を使ってマラセチアの数を減らさなければいけません。
抗真菌点耳薬を2〜4週間ほど使用することで、マラセチアは減少します。
そして抗真菌点耳薬とあわせて、内服薬を服用することも多いです。
獣医師と相談しながら治療を進めていきますが、犬にアレルギーなどの基礎疾患がある場合は、基礎疾患が改善しなければマラセチア外耳炎が再発する可能性があります。
そのため、基礎疾患があれば先に基礎疾患の治療が必要です。
マラセチア外耳炎は、一度は治ったとしても再発することがある病気です。
治ったからといって耳のケアは怠らずに、定期的に耳の状態をチェックしてあげましょう。
まとめ
マラセチア外耳炎の症状や治療法、かかりやすい原因について解説しました。
マラセチア外耳炎は、犬にとって辛い症状が続く病気です。
犬の耳は優れた聴覚や自分の気持ちを表現するという役割を持ち、少しでも耳が不調になると、犬の生活に支障が出てしまいます。
そのため、愛犬がマラセチア外耳炎にならないためにも、発症を未然に防ぐ必要があります。
定期的に犬の耳の健康状態をチェックして、少しでも不調があればすぐに気づけるようにしましょう。
マラセチア外耳炎の重症化を防ぐためにも、異変の早期発見が大切です。
特に垂れ耳や脂漏体質の犬種は、ほかの犬種よりもこまめに耳の状態をチェックしてあげましょう。
犬の体質をふまえて、皮膚環境をコントロールできるとよいですね。