愛犬の去勢後の心配事。睾丸や陰嚢(玉袋)はどうなるの?

男の子を家族に迎えると、去勢手術を検討される飼い主さんも多いでしょう。

去勢手術前には、獣医師から十分な説明も受けられます。発情を抑えられるだけでなく、病気の予防にもなるとわかってはいても、ベストな選択なのかどうか悩んだり、術後の傷口を見て「大丈夫?」と不安になったりするかもしれません。

ここでは、愛犬にはじめて去勢手術を受けさせる飼い主さんに向けて、実際に去勢手術後に起こるかもしれないこと、去勢手術後の様子や身体のことについて、詳しくご紹介します。

去勢手術のメリット・デメリット

繁殖を考えていない場合、去勢手術を検討されるのは、ごく自然なことで、かかりつけの獣医師さんからすすめられることもあります。しかし、手術となれば、飼い主さんが悩むのも当然のことです。

では、去勢手術には、どのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。

去勢手術のメリット

まず、去勢手術を受けるメリットとして、次のような点が挙げられます。

  • 発情期の問題行動の防止

繁殖させないのであれば、去勢手術を受けさせてあげましょう。

発情しているにもかかわらず交尾ができない状態にすることは、愛犬にとって強いストレスです。去勢手術を受けることで、性ホルモン(男性ホルモン)が減少し、性的興奮が起こりにくくなるため、発情からくるストレスを回避させたり、攻撃性を改善させたりする効果が期待できます。

  • 病気の予防

もう一つのメリットは、病気にかかる可能性を減らすことができることです。去勢手術を受けることで、精巣腫瘍や前立腺肥大、停留睾丸といった、生殖器や性ホルモンに係わる病気が予防できます。

去勢手術のデメリット

反対に、去勢手術を受けることにより、次のようなデメリットも考えられます。

  • 全身麻酔のリスク

去勢手術は、全身麻酔です。

全身麻酔が原因で起こるリスクには、内蔵機能の低下、肝機能の低下、血圧の低下、心不全、呼吸困難が挙げられ、死に至るケースは、約0.1~0.5%といわれています。犬種としては短頭種や小型犬、また呼吸器や心臓に疾患を持つ子は上記のリスクが高くなります。

手術を行うかどうかはかかりつけの先生と十分相談して決めましょう。

  • 肥満のリスク

ホルモンバランスが変化するため、去勢後は太りやすくなるというデメリットがあります。

そのため、去勢手術以降は、専用のフードを与えるなどの食事管理、肥満を防止するための十分な運動が必要です。またホルモンバランスの乱れにより、毛質や毛色の変化や、毛づやが悪くなったりすることもあります。

去勢手術で行われることは?

去勢手術は、全身麻酔で行われ、陰嚢と陰茎の間を数センチほど切開し、精巣を摘出します。

手術にかかる時間は、30~40分くらいです。

なお、去勢手術の内容については、次の記事でご紹介しています。

犬の去勢手術って何?手術の内容と目的【初めての飼い主さん向け】

是非、ご覧になってみてください。

去勢後よくみられる陰嚢(玉袋)の様子

去勢手術は、多くの場合が日帰りです。

なお、術後の流れについては、次の記事でご紹介しています。

愛犬の去勢後の流れと回復の様子。これだけ気をつければ安心!

是非、ご覧になってみてください。

無事に手術が終了すると、獣医師、看護師による数時間の経過観察の後、問題がなければ帰宅し、以降は飼い主さんが愛犬の術後管理を行います

ここからは、帰宅後の術後管理で、傷口にみられる様子や気にしてあげるべきことについて、ご紹介します。

傷が残る

当日は、傷口に赤みがあったり、出血がみられたりします。

特に赤みが引くまでは、傷口をなめたり、濡らしたりしないようにし、傷口に負担をかけないよう、運動は控えることも大切です。

また、精巣が取り出せるぐらいの大きさで切開しているため、術後は陰嚢に傷が残ります。心配される飼い主さんもいらっしゃるでしょうが、抜糸してかさぶたが取れた後は、時間の経過とともに傷は目立たなくなります

陰嚢(玉袋)の色が変化する

術後、陰嚢内で出血したり炎症を起こしたりすると、陰嚢の色が変化したり腫れたりすることがあります。陰嚢の様子を確認し、腫れや変色が見られたり愛犬が痛がっていたりしている場合は、速やかに獣医師に相談しましょう。

陰嚢(玉袋)の縫い糸がない

唾液の中には、多くの雑菌が含まれています。

傷口を舐めてしまうと、菌が入り、傷口が化膿してしまうこともあるため、エリザベスカラーを使うなど、傷口を舐めないように気を付けます

また、万が一、縫ったはずの糸がなくなっていたり、傷口がしっかりふさがっていかったりするような場合は、少し力を入れただけで傷口が開いてしまうなど、治りが悪くなってしまいます。そのようなときは、すぐに再受診しましょう。

開腹手術をする症例

生まれたばかりのとき、睾丸(精巣)は腹腔内にあり、通常は生後30日前後、遅くとも生後8ヶ月前後で、自然と陰嚢内に下りてきます。

睾丸が陰嚢まで下りてこず、腹腔内にとどまった状態のことを「停留睾丸(陰睾)」といい、このような症状がある状態で去勢手術を行う場合、睾丸の位置により、開腹手術が必要になることもあります。

ここでは、停留睾丸とその処置についてご紹介します。

睾丸が片方しか確認できない場合

陰嚢内で睾丸をひとつしか確認できない片側のみ停留睾丸を「片睾丸」といいます。

片睾丸の場合、正常な陰嚢内にある睾丸だけを摘出しても、体内に残った睾丸によって妊娠させる可能性があるため、去勢手術の際は両方の睾丸を摘出するのが一般的です。なお、睾丸が腹腔内にとどまっている場合は、開腹手術になります。

停留睾丸の原因は、遺伝によるものだと考えられているため、妊娠させられる可能性があるとしても、繁殖には向かないといえるでしょう。さらに、停留睾丸による腫瘍発生率は、正常な睾丸の約13倍ともいわれています。そのため、獣医師からは、予防的な摘出をすすめられます。

睾丸が確認できない場合

陰嚢内で睾丸が全く確認できない停留睾丸は、去勢、病気の予防の観点から摘出するのが一般的で、睾丸が腹腔内にある場合は開腹手術になります。全く下りていない睾丸は摘出が難しい場合が多く、そのようなときは摘出手術はせず、腫瘍の発生がないかを経過観察することが多いです。

まとめ

災害時、ペット同伴の避難では、愛犬が去勢手術をしていることが避難所の受け入れ条件となる場合があります。

去勢手術は、単に繁殖の問題だけでなく、災害時の対策、病気の予防といった観点からも、検討される飼い主さんも多いのではないでしょうか。とはいえ去勢手術は、飼い主さんにとっても愛犬にとっても初めてのことなので、不安も大きいと思います。

もっとも大切なのは、飼い主さんが信頼できる獣医師がいる病院を選ぶことです。大切な愛犬の手術です。手術に関して不安なことは質問し、飼い主さんが納得できた段階でお願いしましょう。

さらに、去勢後も、心配なことがあったら獣医師に相談し、連絡をとりながら、十分なケアをしてあげてください。

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