愛犬に避妊手術を受けさせようと考えている飼い主さんもいらっしゃると思います。でも、一体いつ受けるのが適切なの?と迷われてはいませんか?特に迎えたばかりの仔犬の場合、予防接種の時などに獣医師から考えを聞かれた、という飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。
この記事では、避妊手術を受けさせるとよい適正時期について解説します。是非、獣医師と相談する際の参考にしてください。
犬の避妊手術は義務?
避妊手術は、望まない妊娠を避けることが目的のため、義務ではありません。
しかし、繁殖を予定していないのであれば、発情期のストレスやシニア期の病気のリスクを軽減できるなどメリットも多く、避妊手術は、獣医学的に推奨されています。避妊手術は、卵巣と子宮を摘出する手術です。そのため、これらの部位で起こるといわれる病気を防ぐことができます。また、女性ホルモンの影響を受けて起こる乳腺炎や乳腺腫瘍についても予防が可能です。
このように、避妊手術は義務ではありませんが、愛犬の健康のため、そして何より、望まない妊娠によって不幸な命を生まないためにも検討が必要なのです。
推奨される避妊手術の適性時期
避妊手術は、全身麻酔で行われます。そのため、月齢の低い仔犬や高齢の犬には負担の大きいものです。しかし、手術を受ける時期によって、病気の予防効果に違いが出てくるともいわれ、時期の見極めは重要です。
ここでは、避妊手術を受ける時期による効果と適正な時期の判断の仕方についてご紹介します。
病気予防のためなら6~9ヶ月齢ごろまでに行う
愛犬を仔犬の時期に迎い入れ、予防接種を受けるために病院に行ったら、獣医師に避妊手術について話を受けた、という飼い主さんも少なくないでしょう。
特に、繁殖を希望していない場合、乳腺腫瘍など病気予防の観点から考えると、避妊手術は、初めての発情が起こる前に受けるのがとよいとされています。一般的に、初めての発情が起こるのは、生後6ヶ月ごろから1歳ぐらいといわれているため、避妊手術は、その前にあたる6~9ヶ月くらいで受けるのが理想的です。ちなみに、大型犬以上の犬種は成熟が遅いため、もう少し遅い時期をすすめられます。
反対に、3ヶ月齢以下の未発達の仔犬や高齢のシニア犬は、麻酔や手術による負担が大きいので避けましょう。
避妊手術を行う時期で病気の発症率が変わる?
避妊手術による病気の予防効果は、すでに発情が起こっているかどうかによって、変わる場合があります。
たとえば、乳腺腫瘍の場合、初めての発情前の手術で約99%、2回発情後で約74%の予防効果があるといわれており、この間で、乳腺腫瘍の発症率が約1%から約26%へと急激に増えることになります。このように、避妊手術を受ける時期もとても重要です。
避妊手術を受けさせると決めている場合は、初めての発情が起こる前の実施を検討しましょう。
発情中は手術ができない?
愛犬の発情が、手術直前に起こることもあります。万が一、発情が起こった場合は、避妊手術の時期をずらした方がよいでしょう。発情中は、子宮が腫れて充血しているため、通常より手術中の出血量が増えるなどリスクが高まります。また、ホルモンバランスの変化により体調が悪くなったりすることもあります。
今は、技術の向上により、発情中も避妊手術を行ってくれる病院も増えています。しかし、愛犬の体調を考慮すると、発情出血後1ヶ月くらいは様子をみてあげることをおすすめします。
時期を過ぎると意味がなくなる?
たとえば、乳腺腫瘍の場合、避妊手術による病気の予防効果は発情のたびに下がっていき、2.5歳を超えると、悪性の乳腺腫瘍に対する予防効果はほぼなくなるといわれています。子宮感染症の場合も、4歳になる前に避妊手術するとリスクが減らせるのです。
このように、避妊手術は若い時期に受けた方が、病気の予防効果が期待できます。
しかし、避妊手術自体には、絶対にこの時期までに受けなければいけないという決まりはありません。実際に、シニア犬に発症しやすい子宮蓄膿症は、シニア期に入る前の5、6歳の手術でも効果があるといわれています。ただし、避妊手術は全身麻酔で行うため、体力のある若いうちの方が術後の回復も早く、飼い主さんも安心でしょう。
まとめ:避妊手術の適正時期は個体差があるので獣医師に相談を!
全身麻酔で行う避妊手術を受けるべきか、悩まれる飼い主さんも少なくないでしょう。また、その時期を決めるのも、なかなか難しいものです。
避妊手術は、望まない妊娠を避けることはもちろん、病気の予防というメリットを考えると、できるだけ若いうちに受けることが推奨されますが、実際には、愛犬の犬種、体質、体調などにより、適切な時期には個体差があります。
ここでご紹介した避妊手術による効果を参考にして頂きながら、信頼できる獣医師とともに、愛犬にとって最適な時期を検討してください。