犬猫が殺処分されてしまう理由は? 実態や飼い主ができること

ペット関連の話題を追っていると、犬や猫が殺処分されているニュースを目にする機会も多いですよね。

年間の殺処分数は、犬は約4,000頭猫は約19,000頭に上ります。

(出典:環境省 - 統計資料 「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」2020年

数字の大きさに驚きますが、そもそもなぜ犬や猫が殺処分されてしまうのかが気になる方も多いのではないでしょうか。

実は、飼い主の身勝手によって保健所に預けられたり、野良犬・野良猫が繁殖したりするのを防ぐために殺処分が行われているのです。

本記事では、

「犬や猫が殺処分される原因は何?」

「どれくらいの犬や猫が処分されているの?」

「個人でなにかできることはある?」

このように思っている方に向けて、犬や猫の殺処分に関する情報を集めました。

事情があって犬や猫と暮らせない方でも、殺処分ゼロをめざしてできることを紹介しているので、ぜひ最後まで読んでくださいね。

そもそもなぜ? 犬や猫が殺処分されてしまう原因

2020年に行われた環境省の調査によると、犬は4,059頭、猫は19,705頭が殺処分され、合計で23,764頭もの命が奪われています。

(出典:環境省 - 統計資料 「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」

このうち、子犬や子猫の殺処分の頭数は13,836頭にも及びます。

新たな家族を迎えようと、保健所や保護団体などから犬や猫を引き取る方も増えてきましたが、現在も殺処分される犬や猫が多いのが事実です。

そもそも、なぜ犬や猫が殺処分されてしまうのでしょうか。

殺処分がなくならない理由

犬や猫が殺処分されてしまう理由は以下の2つです。

  1. 去勢・避妊されていない野良犬・野良猫が繁殖してしまう
  2. 飼い主の身勝手で保健所に預けられる

野良犬や野良猫の繁殖力はすさまじく、親子や兄弟の間でも子どもを作ってしまいます。

たとえば猫の場合、去勢・避妊手術をしなければ1年後には20頭以上、2年後には80頭以上に増加します。3年後には2,000頭以上になるという試算です。

(出典:環境省作成パンフレット「もっと飼いたい?」

大量に繁殖した犬や猫が自治体に保護され、引き取り手がいない場合は殺処分されてしまうという状態です。

そして、飼い主のさまざまな身勝手を理由に保健所に預けられた犬や猫も、引き取り手がいなければ殺処分されてしまいます。

このような理由により、殺処分される犬や猫の数は現在も減っていません。

特に多いのが猫の殺処分

猫の殺処分数は特に多く、犬の約5倍にも上ります。

保護される個体数が圧倒的に多く、さらに野良猫の譲渡は困難を極めるのが理由です。

日本では、狂犬病予防法によって野良犬は必ず保護されることになっています。そのため、街中で野良犬を見かけることはありません。

一方、野良猫は数が多く、野良猫同士が出会えば繁殖が始まり、さらに子猫が増えてしまいます。そうした野良猫が多数保護されるものの、人に対して恐怖心を抱いていることが多く、一般家庭への譲渡は難しいのが実情です。

ペット業界の闇と殺処分

過去には、悪質なペット業者が売れ残った犬や猫を保健所に持ち込んでいました。

動物愛護法の法改正により、悪質業者の持ち込みは減少しましたが、今でもペット業者が個人を装って保健所に犬や猫を持ち込むケースがあります。

そのため、現在もペット業界の闇にのまれる犬や猫はゼロではありません。

また、現在では、売れ残りや繁殖の終わった犬や猫を有料で引き取る「引き取り業者」も存在します。

引き取り自体は違法ではありませんが、悪質な業者は餌や水を与えず狭い檻に押し込み、そのまま衰弱死させることもあるのです。

このような悪質業者の存在は、決して許されるものではありません。

殺処分ゼロをめざして個人ができること

ここからは、犬や猫の殺処分ゼロをめざして個人ができることをご紹介します。

飼い主さんだけではなく、犬や猫を飼えない方でも取り組める活動をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

犬や猫の飼い主ができること

殺処分ゼロをめざすために、犬や猫の飼い主さんができることは以下の2つです。

  • ペットが迷子にならないように注意する
  • 去勢・避妊手術を受けさせる

ペットが迷子になってしまうと、犬の場合は狂犬病予防のために保護されます。そして、万が一保護期間中に飼い主に返還されない、もしくは引き取り手が見つからない場合は殺処分されてしまうのです。

最悪の事態を防ぐためにも、家から脱走できないようにして、散歩中もリードやハーネスを離さないように注意しましょう。

猫の場合も、保護されてしまうか、野良猫と無闇に繁殖して子猫を増やしてしまう恐れがあります。猫が不用意に外出しないように、しっかりと戸締りをしておくことをおすすめします。

また、ペットに去勢・避妊手術を受けさせることも大切です。

望まない妊娠をしてしまった場合、飼い主が飼育できなければ譲渡先を探すか、見つからない時は保健所に預けることになるでしょう。保健所に預けることは、最終的に殺処分につながる恐れがあります。

無計画な繁殖をしないためにも、繁殖を望まないのであれば必ず去勢・避妊手術を受けさせてあげてください。

去勢・避妊手術を受けた犬や猫は、発情期のストレスからも解放されます。

犬や猫を飼えなくてもできること

事情があり犬や猫を飼えない方でも、以下のような活動に参加することで殺処分ゼロに貢献できます。

  • TNR活動に参加する
  • 保護犬や保護猫のお世話をする

TNR活動とは、野良猫を捕獲して去勢・避妊手術を受けさせることで安全に暮らせるようにする活動のことです。手術後の野良猫は、元いた場所に帰されます。

TNR活動は多くのボランティアによって支えられているため、活動への参加を検討してみてください。

近隣のTNR活動については「地域名+TNR活動」で検索することで確認できます。

また、保護犬や保護猫のお世話をするシェルターを運営している保護団体もあります。

人手不足のシェルターは、常にボランティアを募集している状態です。

保護犬や保護猫の食事の準備、散歩などの日頃のお世話に興味がある方は、ぜひボランティア参加を検討してください。

保護施設でのボランティア活動の参加については、以下の記事も参考にしてくださいね。

犬猫の保護施設を支援! ボランティアと5つのサポート方法をご紹介

保護された犬や猫を救うには? 知っておきたい知識

ここからは、保護犬・保護猫を引き取る場合の注意点や、知っておきたい知識をご紹介します。

  • 保健所から引き取る場合
  • 成犬・成猫を引き取る場合
  • 先住犬・先住猫がいる家で引き取る場合

スムーズに引き取れるように、まずは引き取り条件や費用などを確認しておきましょう。

保健所から引き取る場合について

保健所から保護犬・保護猫を引き取る場合は主に以下のような条件をクリアし、費用を支払う必要があります。

引き取り条件・犬や猫を譲渡してもらえる保健所がある地域に住んでいる犬や猫を
 養えるだけの経済力がある
・引き取り手側の責任者が成人である
・60歳または65歳以上の場合、犬や猫の飼育が難しくなった時の
 引き取り先がしっかりと確保できる
・家族全員の同意が得られている
・去勢・不妊手術などの確実な繁殖制限措置ができる
・犬や猫を問題なく飼育できる住居に住んでいる
・譲渡前後の訪問調査や指導などを受けられる
費用約10,000円以内(地域によって異なる)

引き取り条件は多いように見えますが、犬や猫を飼育するうえで必要な最低限の条件です。

条件をクリアすることも大切ですが、必ず譲渡前に引き取り予定の犬や猫に会い、相性を確かめましょう。相性が良ければ、不要なストレスがなく一緒に生活していけます。

譲渡費用は基本的に無料ですが、事務手数料が発生するところが多いです。大抵は10,000円以内で済みますが、事前に確認しておくことをおすすめします。

保健所から保護犬・保護猫を引き取る際の条件や費用などの詳細は、こちらの記事で詳しく解説しています。

犬や猫を保健所から引き取りたい! 費用や条件などを解説!

成犬・成猫を引き取る場合

保健所にいる成犬・成猫は、社会化期を過ぎても人に慣れておらず、警戒心が強いことがあります。初めは警戒心をあらわにされても、根気よく仲良くなる努力を続けてください

また、人に飛びついたり噛みついたりすることがないように、しっかりとしつけも行いましょう。犬の場合は特にトイレトレーニングを根気よく行う必要があります。

成犬のトイレトレーニングの方法は、以下の記事をご覧ください。

成犬にトイレトレーニングはできる? 成功する3つのポイントをご紹介

成犬・成猫の場合は、去勢・避妊手術が義務付けられている場合もあります。

ただし、去勢・避妊手術は全身麻酔を行うため、高齢になるほど副作用などのリスクが高まります。どれだけのリスクが生じるかを事前に獣医師に確認しましょう。

成犬の去勢手術のリスクやメリット・デメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。

【犬の去勢時期】成犬では遅い? リスクやメリット・デメリット

先住犬・先住猫がいる家で引き取る場合

先住犬・先住猫がいる場合は、先にどちらがいるのかで対応が異なります。

先住犬がいる場合は、比較的スムーズに保護犬・保護猫を迎え入れてくれるケースが多いです。犬は群れて生活するため、後から入ってきた犬や猫を新たな家族として迎えて、世話をしてくれることもあります。

先住猫がいる場合は、しばらくはお互いに距離をとらせるようにしましょう。猫は環境の変化に弱いため、新たな家族が増えると強いストレスを感じることもあります。

初めのうちは別々の場所で生活できるように工夫してください。離れた場所からでもお互いの存在を認識できるようになったら、少しずつ顔を合わせるなどして距離を縮めていきましょう。

飼い主さんが無理に仲良くさせようとすると喧嘩になる恐れがあるので、自然と仲良くなれるように手助けをしてあげてくださいね。

先住犬・先住猫がいる場合の飼育方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

【どっちも好き!】犬と猫は一緒に飼えるの? 方法や注意点を紹介

まとめ(犬猫が殺処分されてしまう理由)

犬や猫の殺処分がゼロにならないのは、野良犬や野良猫の繁殖や飼い主の身勝手が主な理由です。

行政が発表した数には入っていませんが、悪質なペット業者と引き取り業者によって不幸な末路をたどる犬や猫もいます。

私たち人間と同じく犬や猫も生きていて、命の重みは変わりません。

悲しい運命をたどる犬や猫を減らすため、飼い主さんにできることは「迷子の防止」「去勢・不妊手術」です。

事情があってペットを飼えなくてもできることは「TNR活動への参加」「保護された動物のお世話」です。

ペットのボランティアは常に人手不足なので、犬や猫のお世話などに興味がある方はぜひ検討してみてください。

保護された犬や猫を引き取る場合は、引き取り条件や費用など、事前にチェックすることがたくさんあります。犬や猫は家族として10年以上一緒に暮らすことになるので、しっかりと準備をして迎えてあげてくださいね。

私たち一人ひとりが少しでもアクションを起こすことで、犬や猫の殺処分数を減らす効果が期待できます。悲しい運命をたどる犬や猫を減らせるように、できることから始めていきましょう。

おすすめの記事