犬も人間と同様に様々な病気にかかる可能性があります。
その中でも今回は特に犬にとって危険な骨肉腫という病気について紹介していきます。
骨肉腫とは?
骨肉腫とは骨のガン(悪性腫瘍)のひとつです。骨のガンは他の場所にできたガンから転移したものと骨自体から発生するガンに分ける事ができます。
骨自体から発生するガンのほとんどを骨肉腫が占めています。
骨肉腫になる原因
残念ながら骨肉腫になってしまう原因ははっきりとは分かっていません。
犬の場合、骨肉腫は75%が前と後ろの足の骨に、25%が胴体の骨にみられます。前足に発症しやすく、前足の発生率は後ろ足の2倍です。
前足では肘から遠い部分(上腕骨の肩に近い方や前足の手首に近い方)に起こりやすく、後ろ足では膝に近い部分(大腿骨やすねの骨の膝寄りの部分)で多く発症します。
理由はまだ分かってはいないのですが、犬種によって特性があります。体重40kg以上の大型犬で特に発症のリスクが高いと言われています。
犬種により発生しやすさが異なる事から、遺伝的な要因があるのではないかと考えられているようです。
発症の平均年齢は7歳といわれていますが、発症しやすさには若いときと老齢のときの2回ピークが見られ、2歳前後の若い犬でも発症することがあります。
骨肉腫の症状
特に足の長い骨に腫瘍ができやすく、激しい痛みを伴うことが多いため、足に腫れができたり、歩き方がおかしかったり、足を引きずったりなどの症状がみられます。
背骨に病変ができた場合は麻痺が出ることもあります。
骨肉腫は進行が速く、早期の段階で転移しやすい悪性の腫瘍です。
特に肺への転移が多くみられ、その場合呼吸困難などの症状があらわれます。
〇こんな症状がでたら注意!
腫瘍のできている部分は骨自体が弱くなっている為、負荷に弱くなっています。
その為、ケガをしてから検査をする事で骨肉腫が発見されるパターンもあります。
症状はケガの初期と似ていますが、長引く場合は注意が必要です。
- 触ると痛がる
- 骨の部分に腫れやしこりがある
- 歩き方がおかしい
- 麻痺がある(脊椎に発症時)
- 咳をする、息が苦しそう(肺転移時)
〇検査でわかること
レントゲン検査で痛みやしこりのある部分の骨に異常が見られることが多いです。
肺転移時は、胸部レントゲンで肺に白い影が見つかることもあります。
〇骨肉腫になってしまった後
発生部位や年齢、見つけた段階や治療内容などによってその後は変わっていきます。
治療を行わない場合の標準的な余命は約110日です。
足を切断する治療を行った場合でも、それだけでは2か月ほどの延命効果しか得られません。
このため、足を切断する治療に化学療法を併用することがあり、10〜18ヶ月ほど生存期間を延長できます。
積極的な治療を行ったとしても、最終的には肺にガンが移転してしまい死亡してしまうケースも少なくはありません。
骨肉腫の治療方法
四肢の骨肉腫の場合、ほとんどのケースで足の切断を行います。
骨肉腫は転移しやすいので、手術を行っても完治が難しいケースもあります。
生存期間を延長し、痛みを和らげるため、抗がん剤による化学療法、放射線治療や緩和ケアを組み合わせます。
〇動物病院での治療法
1.外科手術(足を切断する)
生存期間の延長と痛みからの解放を目的に、病変のある足を切り離します。
肩関節、または股関節などの足のつけ根から切除する方法が一般的です。
超大型品種などの体重の重い犬や、関節疾患のある犬では術後に補助が必要なこともありますが三本足でも歩行可能な犬は多くいます。
2.抗がん剤治療
体調を確認しながら、中長期的に投薬を行います。
足を切断した後に抗がん剤を使用すると、生存期間の延長効果が期待できます。
薬剤には、シスプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシンなどがあり、1種類だけを使用する場合と複数の薬剤を組み合わせる方法があります。
食欲不振や消化器症状、骨髄抑制(白血球数の低下)などの副作用が出た場合は、対症療法もあわせて行います。
3.放射線治療
放射線を照射し、がん細胞を減らします。
手術が困難な部位の腫瘍の治療や、疼痛緩和目的で行われます。
4.緩和ケア
骨肉腫は痛みの強い病気なので、鎮痛剤を積極的に使用します。
抗炎症剤のほか、麻薬に分類される強めの痛み止め(フェンタニルのテープ剤など)を使用することもあります。
使用時は獣医師の指示をよく聞いてください。
5.代替・補助医療
光線温熱療法やサプリメントなどが、生活の質をあげる補助となることがあります。
〇家庭内での治療とケア
家庭内で投薬可能な内服薬には、痛み止めや、抗がん剤の副作用を緩和する薬などがあります。
断脚後は運動が難しい場合もある為、おやつを使ったコミュニケーションなどでストレスを発散させてあげるなどしてあげましょう。
骨肉腫の予防
発症の原因がはっきりわからないので、予防することは難しい病気です。
しかし、早期発見による早期治療によって痛みを緩和し、生存期間を延長できます。
定期的に検診を受け、日頃から犬の歩く様子を観察しましょう。
その他にも日頃からマッサージを行う事で急に痛がるようになったなど早期発見につながる事があります。
また、ケガにも注意が必要です。
骨の骨折が原因で骨肉腫が発症してしまうという説もありますので、できる限りケガをしないように安全なスペース作りをしてあげましょう。
しこりや歩き方の異常、さわると痛がる、ケガの痛みが長く続いているなど症状がある場合には、早めに動物病院にご相談することをオススメします。
まとめ
骨肉腫という病気は犬にとってとても重い病気です。
診断されてから治療をしても1年以上生きられるのは1割ほどだと言われています。
もし飼い犬が骨肉腫になってしまった場合は、飼い主にとってだけではなく犬にとってどのような選択が望ましいか判断をしなければいけなくなります。
苦しいかもしれないが、治療をできる限り行うのかそれとも安楽死を選ぶのか、、、とても苦しい判断となります。
そうならない為にもできる限りの早期発見が大切になります。
日頃からよく観察してあげたり、マッサージをしてあげるなどで犬の異変にすぐに気づけるように心がけていきたいですね。