犬・猫の殺処分の現状、そして課題

皆さんは、犬や猫の「殺処分」について考えたことはありますか?実際に日本では毎年多くの犬や猫が保健所で殺処分されています。

ペットに関する深刻な社会問題である、殺処分。最近ではニュースなどでも見かけるようになったこの話題ですが、苦しみながら処分される犬や猫を減らすにはどうしたら良いのでしょうか。

この記事では、殺処分の現状、そして日本が動物の殺処分について抱えている課題をお伝えします。

殺処分数の現状

【殺処分数の現状】2019年は32,743匹

まずは、殺処分がどのくらいの数行われているのかをみてみましょう。

環境省の「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況(動物愛護管理行政事務提要より作成)」によると、2019年度に殺処分された犬と猫の合計数は32,743件です。内訳は犬が5,635件、猫が27,108件です。

単純計算で、1日に約90件も、犬や猫が殺処分されていることになります。かなり多くの犬や猫が処分されていると感じた方も多いのではないでしょうか。しかしながら、殺処分の件数はここ十数年で大幅に減少しているのです。

過去の殺処分件数をみてみましょう。例えば十年前の平成21年度の殺処分合計数は229,832件。内訳は犬が64,061件、猫が165,771件です。比較してみると、合計数は約7分の1に、犬の殺処分件数は10分の1以下に、猫の殺処分件数は5分の1以下に減っていることがわかります。

【殺処分数の現状】なぜ殺処分数は減少したか?

では、なぜ殺処分数が減少しているのでしょうか。まず、動物愛護団体やNPO法人など、民間の団体が保健所に代わりペットを引き取るようになり、その数が増加したことが考えられます。その分、保健所で引き取るペットの数が減少し、殺処分数の減少にも繋がったといえます。

その上で、2012年には動物愛護法の改正が行われました。「ペットを最後まで育てる責任」にも触れているこの法律のおかげで、「可愛いと思えなくなった」「引っ越しで手放さなければならない」など勝手で安易な引き取りの申し出を保健所側が断れるようになりました。

殺処分数は大きく減少していますが、それでも年間に3万件もの殺処分が行われていることを考えると、まだまだ課題があると感じられます。

殺処分の対象

殺処分の対象となる、引き取り動物についてみてみましょう。

先述したように、家庭から引き取る場合もありますが、多くの引き取られる犬や猫は所有者不明です。

例えば、2019年度に引き取られた犬のうち、飼い主から引き取られたのは約10パーセント、所有者不明は89パーセントと、圧倒的に誰に飼われていたのか不明の犬が多いのです。猫も、飼い主から引き取られたのは20パーセント、所有者不明は80パーセントと、圧倒的な差があります。飼い主が保健所に持ち込む割合はそう多くはないのです。

所有者不明の犬や猫は、迷子犬・猫や捨て犬・猫などを指します。ではこれらの犬や猫が殺処分という悲しい最後を迎えないようにするにはどうしたら良いのでしょうか。

【殺処分の対象】所有者不明の犬・猫を減らそう

所有者不明、つまり飼い主のいない野良犬・猫が増えてしまう原因はいくつかあります。

一つ目はエサの問題です。野良犬・猫に餌をやる行為は、その後のことを考えると良い行いとはいえません。エサをもらうと、またもらえると思うようになりその場所に集まるようになります。その結果、繁殖し、数が増えてしまいます。エサをあげるという行為は、かえって不幸な思いをする野良犬・猫を増やしてしまうのです。

野良犬・猫の増殖は、さまざまな被害も生みます。ペットが襲われたり、畑や敷地内を荒らされたり、死体の処理を行わなければならない、などがあり、こういった被害行為の積み重ねにより、野良犬・猫の保健所への引き取りもやむなく行われることになるのです。

野良犬・猫へのエサやりは絶対にやめましょう。

二つ目は妊娠の問題です。飼い犬・猫でも不妊去勢手術は必須と言えるでしょう。オスの犬・猫は妊娠しないため、手術は不要と思われるかもしれませんが、発情期に相手を求めて家の外で繁殖を繰り返すことがあります。誰かに育ててもらえない仔犬・仔猫はいずれ保健所に引き取られることとなります。

オスでもメスでも、不妊去勢手術はしておくべきでしょう。

三つ目は、捨て犬・猫の問題です。何らかの原因で買えなくなり捨てられた犬・猫は、野良犬・猫として地域に被害をもたらし、さらには繁殖を繰り返し数を増やす原因になってしまいます。地域に住む人に迷惑をかけてしまう存在になってしまうのです。

責任をもって最後まで飼えないのならば、ペットを飼育することはあきらめましょう。

【殺処分の対象】なぜ猫の殺処分は多いのか

さて、殺処分数をみていて気づいた方も多いかもしれませんが、猫の殺処分数は犬の殺処分数に比べ、倍以上多いです。

猫の殺処分数が多い原因として、野良猫が多いことがあげられます。日本では、野良犬は狂犬病予防法のために必ず捕獲されます。猫は違い、地域に野良猫がいる光景は当たり前のようになっている場所もあるでしょう。エサをもらい、さらに繁殖しネズミ算式に数を増やしていきます。猫は妊娠しやすく、さらに一度に5頭前後は出産するため繁殖のスピードも早いのです。

悲しく、辛い思いをする猫を減らすには不妊去勢手術の徹底、エサやりをしないことなど、基本的なことから守らなくてはなりません。

殺処分に対するこれからの日本の課題

根深く、深刻な殺処分問題。年々減少しているとはいえ、これからさらに殺処分数を減らすためにはどうしたら良いのでしょうか。

殺処分数を減らすには、引き取られてくる犬・猫を減らす取り組みと、引き取られてきた犬・猫に新たな生きていく場所を見つける取り組みの二つを機能させる必要があります。

引き取られてくる犬・猫を減らすための取り組み

○家庭で犬や猫を飼っている、買おうとしている人
・必ず最後までお世話をしましょう
・迷子犬・猫にならないように気をつけましょう
・不妊去勢手術を行いましょう

○野良犬・猫に対してできること
・エサやりは絶対にしてはいけません

〇引き取られてきた犬・猫に新たな場所を見つけるための取り組み
・民間団体などと行政が連携し、譲渡会などの活動を活発化させる
・犬や猫を飼うことを希望する人は、ペットショップでの購入のほか、譲渡会での引き取りも検討する

殺処分は、犬や猫を手放す人たちだけの問題ではありません。これらか犬・猫を飼おうとしている人や、犬や猫を飼育していない人にとっても、関係のある問題です。

不幸な思いをする犬や猫が減るように、そして保健所に引き取られたとしても、新たな家族と巡り会える犬や猫が少しでも多くなるように、日本全体で考えるべき問題です。きっとこれからさらに世間の関心を集めることとなるでしょう。良い方向に進むように、私たち一人一人もできることを行なっていきたいですね。

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